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よっしぃ

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騒動

第104話 セルファースの苦悩

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「アルテュール様!お怪我はございませんか?」

 お付きの騎士にそう聞かれ、アルテュールは自身を確認していく。
 先程はスライムに何かを掛けられたが・・・・顔に掛かっただけだ。
 セルファースも同様。
 因みにお付きである騎士の名はセルファースと言う。
 出自は公爵の息子。
 公爵にはまだ2人の息子がおり、こうして世継ぎを王子のお付きにしているのだ。

「セルファースよ、さっきのは何だったのだ?余は特に何もない。それにもうすっかり乾いてしまっている。しかし万が一という事を考えると困る。湯浴みを。」
「私もご一緒いたします。万が一に備え、私が全て確認いたしましょう。」
「女にさせよ!」

 アルテュールは何故野郎に湯浴みの世話をさせねばならん!と怒り心頭なのだが・・・・
「お怒りはご尤も。しかしながら今回の出来事を誰かに知られる訳にはまいりません!それにこの・・・・固まってしまった・・・・どういたしましょう。」
 セルファースの指摘は、苑囿でロキュス共々スライム達を呑み込んだ化け物スライムの事。つまりスラちゃんの事である。
 スラちゃんは2人がいる目の前でロキュスと眷属スライム、そしてアスワムを完全に囲ってそのまま固まってしまったのだ。
 もしこの塊を誰かに目撃されて、指摘されては困るのだ。
「穴を掘って埋めよ。」
「少々お待ちを・・・・」

 早速証拠隠滅とセルファースは足元を掘り返そうとしたが・・・・
 地面が硬すぎて、全く掘り返せない事に今更ながら気が付いた。さっきまで居たワームのせいか?

 これはアスワムの仕業である。
 ワームは地面を自由自在に行き来でき、周囲の土であれば自在に操れる。
 ロキュスと共にスラちゃんの中に収まる直前に地面を硬くしておいたのだ。

「駄目ですアルテュール様!全く歯が立ちません!」
 まだ周囲に人はいない。
 それに国王陛下は大事な王妃の治療の為、暫くは側近共々、つまり主だった臣下はこの辺りには来ないという事だ。
 ここは王子の自室に運び入れるしか手はない。
 他の場所では何かあればすぐにばれる。
 しかし王子の自室であれば、そこに女の惨殺死体が放置してあろうとも、その事実が外に漏れる事はない。

「アルテュール様のお部屋に運ぶしかありますまい。幸いにしてスライム使いは小さく、私とアルテュール様であれば2人で運ぶ事も出来ましょう。間違っても人にやらせる訳にはまいりません。」
「な!何故余がこの様な・・・・」
 アルテュールもそこまでバカではない。
 仕方がなく2人で担ぎ自室に運んでしまった。

 仕方がない。後で部屋を改装させ、この物体を人目につかせぬようにせねば!

 こうしてロキュスは人知れずアルテュールの自室に運ばれてしまった。


 くっ!何故私がこんな後始末まで!父には報告をせねば!

 しかしこの事が公爵の耳に届く事はなかった・・・・表向きは。

 ・・・・
 ・・・
 ・・
 ・

【あいつを始末しておけ。】
【よろしいので?】
【生かす方がまずい。】
【ではどのような始末をご希望で・・・・】
 この国の暗部は公爵が一手に引き受けている。

 この会話は公爵とセルファースによるものだ。
 
 こうしてロキュスと共にもう一人が闇の中へ消えてしまった。
 実際にはセルファースの方が暗部に詳しく、かつ元締めは親である公爵。この命令も親を通じて知っており密かに脱出、身代わりを用意し何処かに消え去ったのだ。

『ここまでですね。いずれあれは問題になりましょうが、私にとっては全てが閉ざされてしまった。やはり愚か者の下につくと碌な事になりませんね。名残惜しいですが・・・・』
『まったくだ。お前には悪い事をした。さて、この辻褄をどう合わせるか・・・・こうなれば路線を変えねばならぬ。しかし困ったものだ。あそこまで愚かだとは思わなかった。お前を傍につけておいてよかったと言わざるを得まい。もしもの時はお前を呼び出さねばならぬ。それまで絶対に生きておるのだ。これは最優先の命令だ。』

『分かっております父上。では・・・・それと王子の部屋には・・・・』
『いやまて、それは儂が知っておかぬ方が良い事柄じゃ、言うな。』

『はい・・・・ではさようなら。』


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