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よっしぃ

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酒と紫色のスライム

第162話 大規模農園の計画

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「ロキュスさん、話し合いましょう、私と2人で。」
 レネーは思った。
 このまま酒蔵の人と話をしていても、ロキュスさんの思い描く結果には到底辿り着けない。

 結局金のある所に金がさらに増えてしまうだけの結果になるのは明らか。

 そして貧困層との話し合いは、今は無理だとレネーは思った。

 貧困層と言えば、犯罪の温床と言われるほど、一般層と比べ犯罪率は高い。
 全ての人が悪いわけではないが、レネーにはそういった犯罪をどうにかしないと話し合いの場を持てないと感じていた。
 結局負の連鎖が途切れない事になる。
 しかしここに貧困層をよく知るロキュスがいる。
 そしてレネーは王族。
 2人の育った環境はまるで違う。
 なので話し合いと言ってもそもそもの考えが違い、決定的な結論は出ない。
 そして王族は貧困層と接する機会はほぼない。
 これは国をよくするきっかけになると確信したレネーは、しかし変な横やりが入るのを懸念し、ロキュスと2人だけで話をする事に決めた。結果それは大正解だった。

 ・・・・
 ・・・
 ・・
 ・

「ロキュスさん、貧困層の問題は、貧困と言いますが、犯罪率の高さだと思います。まず犯罪率を下げない事には何も変わりませんわ。」
 レネーはそう信じてやまない。しかしロキュスの考えは違った。
「レネーさん、そもそも犯罪ってどういった犯罪を、どういった理由で犯しているか知っていますか?」
「・・・・物を盗んだり、人を襲ってやはり物や金品を奪う犯罪が殆どと聞いています。」
「そのものというのは、食べ物に繋がります。物も換金できるものを狙い、金品に至ってはそのまま食べ物を購入できますよね。」
「それはつまり物を、人の物を奪っておいて換金できるルートが存在する、という事ですわね。ロキュスさんはそのルートを探し潰せ、と仰るのですね!流石ですわ!」
 全く違う。それでは新たなルートが出現するだけなのだが、レネーはそんな事には全く気付かない。
「そもそもの前提が違いすぎます。貧困層の人々は働き口がありません。そのせいでお金が手に入らず、食べ物も手に入りません。開墾して畑を得ようと思っても、土地は国や領主が管理していて、それもできません。」
「えっ?そんなはずはないわ。開墾は申請があれば誰でも行えるのよ。そして開墾した土地の半数は開墾した人に権利があるのよ。」
「それは誰が確認しますか?」
「え?
 え?だってそれは土地の所有している領主であり、国が管理しているのであれば役場で働く者ですわ。」
「つまり何とでもなる、という事です。過去に何度もスラム街に住んでいる人々は危険な場所を開墾してきました。そして魔物と戦い人の住む土地を拡げました。しかし領主はなんだかんだと理由を付けて、開墾した人々を追い出すか、搾取してきました。例外はありません。」
 そんなバカなと思うレネーだが、正式に葛根の届けがあるのは、元々有力者であったりする。

「調べてみます。しかしそれでは貧困層の人々に救いがありませんね。いつまでたっても負の連鎖が・・・・そういう事でしたのね。」
 レネーは暫く考えた。
「では、私の名において大々的に開拓民を募りましょう。そして全員の名前を名簿で作成し、開墾した暁には名簿に記載している全員に権利がある、というお触れを出しましょう。万が一の時に誤魔化しがきかないようにすればいいのではないでしょうか?」
「貧困層の人々は読み書きできない人が殆どですよ。」
「そこは王家で管理しますわ。つまり王家の人間が受付をし、貧困層の志願者これを名前でもそうですが、人数を把握します。そして今回は、余裕のある者も同等の扱いで参加させましょう。もし余分な権利を要求した場合、親族一同の身分をはく奪ないし降格処分とさせます。貴族も同様ですわ。総じて指揮をする者が必要で、これは恐らく土地の管理に手慣れた富裕層や貴族が行う事となりましょう。しかしそう言った人々もあくまで参加者の1人として数え、貴族に関しては土地の所有に関する権利を放棄させます。開墾後の税収だけでも十分利益が出るはずですから。」

 ここにきて何となく形になってきたが、まだまだ抜け道があると思うロキュス。しかしやってみないとどうにもならない。
「開墾の中心はワームです。人々はワームで片付けられない岩や樹木の撤去が中心となります。これには監督者が必要と思いますが、貧困層からも監督者の監視をさせます。最終的には考えがありますから、不正はさせません。今度こそ貧困を経験した人々に光を灯したいですし。」
 この後この話は王国中に広がり、最終的には冒険者も多数参加する事となった。冒険者の出自は、大多数が貧困層だったからだ。

 こうして大規模な開墾計画が発足し、ロキュスが思い描く大規模農園の計画の第一歩が始まったのだった。
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