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よっしぃ

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酒と紫色のスライム

第163話 貧困層とスラム街

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 何処の街にも富裕層が一定数存在し、そのうち商人は生活に必要な品々を売る事で領民を支え、領主や貴族は領民を守り、領地を守り、色々な、例えば道や治水に関わる。

 こうした層はごく一部。いわゆる三角形の頂点、とんがった部分に存在するごくごく限られた層。

 次にあるのは中間層。
 大多数の市民。
 こちらも三角の上下が存在するが、概ね一括りとなる。
 主な職業は農民。
 そして農民のうち若い男性の大多数は兵役に服す。

 そして最下層である貧困層。実はこの層が一番多い。
 把握されていれば兵役に服す事もあるが、そうでない場合はずっと貧しい生活を強いられる。

 抜け出そうにも搾取され何も残らず藻掻いても脱出できない。

 そんな貧困層が住まう場所にスラム街がある。
 これらは街の塀に囲まれていない場所であり、常に魔物の脅威にさらされる。
 魔物の襲撃を受けても街が安全であれば、兵士は動かない。
 死んで人数が減ってくれれば御の字と思われている。

 更に魔物が多く済む領域を決死の覚悟と行動で開拓を行っても領主に奪われ、何も残らない。
 残るのは墓だけだ。

 どうにもならなくなったスラム街の住民はやがて犯罪を犯すようになり、殆どは素人のためすぐにつかまり処罰される。

 こうした事を繰り返すうち、徒党を組んで盗賊となってしまう人々が存在する。
 大抵は街道で商人を襲ったりした時点で兵が動き、あっという間に駆逐されてしまう。

 そして今まさに、初めて徒党を組んで街道を移動している正体を襲おうとしている一団があった。

「いいか、もうすぐだ。あのラインを通れば囲いが完成する。」
「本当に大丈夫なのか?」
「ああ、問題ない。スラムのドンがそう言っていたんだ。」
「ドンが?それは・・・・おうい、なんか変だぞ?馬車が停止したぜ!」

 馬車から人が降りてきた。
 まだ子供に見える。そしてもう1人、どう見ても少女が降りてくる。

 そして周囲を兵士が囲んでいた。
「おい!ばれているんじゃないか?何であんな所に兵士が盾を構えて待っているんだ?」

「くそ!どうしてバレた?皆逃げ・・・・おいまて、最初に降り立った少年が白い旗を振っているぞ?」
「いや、右手に白だが左手には赤だ。あれは・・・・交渉を意味している。ど、、どうする?」
 迷っているといつの間には旗が地面に刺さっており、少年の姿は見えなくなった。
「ど、何処行った?」
 ここに集っているのはまだ少年と言っていい年齢の集団。
 おおよそ50人だが、既に500人規模の兵に囲まれているのだが気付いていない。

 狼狽えていると、リーダーと思える少年の足元、つまり地面から声がした。
「こんにちは。僕達は貴方達と交渉をしたいと思ってやってきました。どうでしょう、僕達と共に大規模農園の開拓をやってみませんか?これからスラム街と言われる街に住んでいる人々と共に土地を開墾し、大規模な農園を作っていきたいと思っているんです。過去の過ちを踏まえ、今回は国王陛下自ら指揮を執りますので貴族による搾取はありません。先ずはこれを持ち帰って検討してくれませんか?」

 声の主はロキュスである。
 ロキュスは1つのカバンを地面に突き出した。
 中には大量の食糧が入っている。
 それに鑑定の魔道具も地面に出す。
「鑑定の魔道具です。それを装着し、鑑定してみて下さい。毒や罠が無いとわかるはずです。」

 襲撃しようとしていた面々は混乱した。
 どういう事だ?
「それと、脅す訳ではないですが、たった50人程度では全員捕まってしまいます。周囲は500人の兵で囲んでいますから。できれば話の分かる方と交渉をしたいと思っていますので、どうか面談の約束を取り付けてほしいんです。勿論僕がそちらの指定した場所へ向かいます。」

 この後襲撃を行おうとしたメンバーが逃げるようにして集まってきた。
「完全に囲まれている!」
「あ、交渉に応じて頂けるのでしたら、正面から移動できるようにしますから、どうか前向きに検討してほしいです。」
 いつの間にか目の前に小さな少年が現れていた。
「こんにちは。僕はロキュスと言います。名乗らず失礼しました。スライムやワームのテイマーなのですが、ご存じないでしょうか?もし信用できないようでしたら、こちらのカバンには各種スライムの眷属が入っていますので、活用して下さい。では失礼します。あ、正面は今から通れるようにしますから。それと出来れば今後こうした盗賊行為は控えてもらえると助かります。」

 呆気に捕らわれた少年達。
 この後本当に兵士達は道を開け、スラム街へと戻る事が出来た。



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