平和な日常は終わりを告げた――体格に恵まれぬ三十路の兵士が手にしたのは、触れた能力を己の力に変える『天賦転換』絶望から始まる遅咲きの英雄譚

よっしぃ

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オランド王国

第101話 交錯する視線、新たな絆

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 新オランド王国の首都で数日を過ごすレオナルドは、滞在中に帝国の皇女エレナと何度か顔を合わせ、言葉を交わす機会を持った。二人の間には、最初の出会いから生まれた、特別な空気が流れていた。

 エレナは、レクスへの複雑な感情を胸に抱えつつも、レオナルドの誠実さ、そして彼が語る帝国の未来への希望に惹きつけられていた。彼は、単なる権力欲から帝位を目指しているのではない。混乱を収拾し、かつての輝きを取り戻そうと、真剣に国の未来を憂えているのだ。

「私が目指すのは、力で全てを支配する帝国ではありません。多様な民が、互いを認め合い、共に繁栄できる国です」レオナルドは、力強く語る。彼の言葉は、帝国の不遇な境遇で冷ややかに帝室を見てきたエレナにとって、新鮮な響きを持っていた。

 エレナもまた、自身の知識や新オランド王国での経験を語り、彼の理想に現実的な視点を加える。二人の会話は尽きない。お互いの聡明さ、そして志の高さに惹かれ合ったのだ。レクスへの想いは、エレナの中で大切な記憶として残るだろう。しかし、今、彼女の目の前にいるのは、共に未来を創り出す可能性を秘めた人物だった。

 レオナルドは、新オランド王国を去る際、エレナに改めて協力を求めた。「帝国の混乱を収拾するために、貴女の力が必要です。共に、新しい帝国を創りませんか」

 エレナは、彼の差し伸べられた手を取ることを決意した。それは、レクスと共に安息を見出した場所を離れることでもあった。しかし、彼女は、この運命的な出会いが示す道こそ、自分が進むべき道だと感じていた。

 レオナルドがウレンスとアントンを送還したという報せは、帝国内の他の派閥にも大きな衝撃を与えた。それは、彼の政治的判断力と大胆さを示すものだった。彼はこの一手によって、他の派閥から一歩抜きん出た形となり、急速に帝国の主導権を握ることに成功する。こうして、レオナルドは帝位に就き、新たな帝国を率いることになった。そして、彼の傍らには、帝国の皇女として、そして伴侶として、彼を支えるエレナの姿があった。二人は後に、非常に仲睦まじい夫婦として「オシドリ夫婦」と呼ばれるようになる。

 一方、新オランド王国では、もう一つの新たな絆が芽生え始めていた。エティー新女王と、アルベルテュス王国軍大将ブライトンだ。ウレンスとアントンの引き渡しという、政治的に重い出来事の場で、二人は思いがけず距離を縮めることになった。

 エティーは今年で24歳。ブライトン大将は27歳。年が近いこともあり、以前から面識はあったが、互いを異性として意識するようなことはなかった。エティーにとってブライトンは、レクスの信頼する部下であり、新オランド王国の建国に尽力してくれた、頼れる年上の人物という認識だった。ブライトンにとってエティーは、尊敬するレクスの仲間であり、その妻であるヴィレの従姉妹。彼女は、もはや崇拝すべき女神のような存在だった。そんな彼が、エティーを恋人と思えるか?最初から夢物語だと思っていた。

 しかし、皮肉にも、アントンが引き渡された際の緊迫した状況、そしてその後の後処理を共にする中で、二人の間に予期せぬ急接近が生まれた。エティーは、冷静沈着に指示を出すブライトン大将の姿、そしてレクスたちや民に対する彼の誠実な態度に、今まで気づかなかった魅力を感じ始めた。ブライトン大将も、困難な状況でも気丈に振る舞うエティー新女王の姿に、崇拝だけでなく、一人の女性としての魅力を感じるようになっていった。
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