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召喚から15年が経った

第617話 精練しすぎて大変な事に

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早速魔道具を起動、確認します。
 しかしここでいきなり想定外の出来事が。

 大気中の魔素を精練し、人工魔石に変換する魔道具がいきなり動作不良に。

 どうやら魔素が濃すぎて精練する能力が追い付かなかったようです。

 流石にこんな濃厚な魔素は想定して作っていないので、改良の余地がある?

 つまりは魔素を取り込む速度及び濃度に制限を設け、許容量以上の魔素が周囲にあった場合、能力以上の魔素を取り込まないようにリミッターを設ける事にしました。

 グビッシュ王国において一番魔素の濃い常山領のダンジョン周辺、そこでもこの魔道具は余裕をもって稼働する能力がありました。

 まあこのぐらいならスキルで対処。

 そしてこの魔道具、大きさは実にコンパクトなので片手で持てます。
 但し魔大陸で稼働させるにあたりもう一つネックがあります。

 想定以上の速度で精練され人工魔石に変換されていきます。
 この為に魔石となった塊が魔道具からどんどん落下していくんです。
 魔道具に合わせた収納かばんを用意し、そのまま収納かばんに入っていくようにした方がいいのかな。
 ないと思うけれど、これを稼働させて移動した場合、落ちている人工魔石を辿られてしまうと移動した経路が簡単に特定されてしまう恐れがある。
 これを避けるためにもすべて回収したほうがいい。

 そう結論付け早速改良を加えます。

【日々改善】
 うん。何事にも現状で満足する事無くよりよい環境で行動ができるようにしないと。
 そうじゃなかったらいいものができた瞬間現状に満足し慢心してしまいます。

 例えば武器を打つ鍛冶職人。
 職人のプロフェッショナルである本物の鍛冶師は業物を打っても更なる武器を打ちたいと日々精進するそうです。

 何処かで妥協しないと生活できないので、ある程度の品質で落ち着いてしまう職人も少なくない中、そう言った本物の職人はほんのわずかしかいません。
 そしてその中で本当に才能に恵まれ、尚且つ努力をする職人は両手に砂をすくい、その中の一粒を探すような確率しかいないでしょう。
 僕もそう言った職人になりたいと思いますが、領主としての立場がそれを許さない。いえこれは言い訳ですね。

 落ち着いたら本当は何をしたいのか、真剣に自分を見つめてみよう。
 何故かここにきてそう思ってしまいました。



 さて、出来上がった魔道具。
 これを何個も複製します。
 僕とオイヴィが背負っているカバンに2個ずつ括り付けます。
 早起にはどうするか・・・・
 そんな事を考えていると、
「それ面白そうねえ?それ私にも着けてよう?」

 一応彼女もかばんを背負っています。
 流石の彼女も万が一の場合に備えて必要最低限の物資を持ち歩いています。

 もし魔道具が使えなくなった場合を想定し、リュックは魔道具ではありません。
 中身も基本魔道具ではないです。
 飲み水や食料、ポーションをいくつかと布や着替え。
 まあ彼女なら多少重量が増えても問題ないだろうから僕達と同じように2つ括り付けます。

 これで多少は魔素の濃度が緩和されたらいいんだけど。

 で、出発します。
 そうは言っても目的地は既に視界にとらえています。
 ただ普通に歩いて辿り着けるのか?
 空から向かった方がいいかもだけど、魔導船が使えるのかも分かりません。
 危険があるかもしれないし、魔素が濃すぎて操船に影響が出るかもなので慎重に考えないと。

「ちょっと待ってえ?」

 早起がいきなり止まってそう声をかけてきました。
 何か違和感でもあったのかな。
「どうした?何か違和感でもあったのかい?」

「それなんだけどお、誰もいないのがおかしいのよねえ。この辺りならあ、誰かいるはずなんだけどお、誰もいないのよねえ。」

 それはつまり章君が城の魔族を軒並み消滅させたって事?
 あれ?
 あれ?章君はここに来たのかな?
 そもそも何処で魔王を消滅させたのか確認した覚えがない。
 魔王の居城で魔王と対峙したと思い込んでいた・・・・思い込みって駄目なんだけど、先入観があると思い込んでしまう。
 今更章君に確認できないし。
「何か周囲を調べてみるかい?」
 何やら顎に手を持っていき、考え込む早起。
「もう少し進んで見ようかなあ?」
 この周囲は知り尽くしているであろう早起。
 僕等が異変を感じるまではさきの判断に従い行動しよう。
 ただ、初めて来た場所だから以前の状態がわからないので僕等では判断できにくいなあ。

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