うちの奴隷が性処理奴隷に立候補してきたけど、そういうのは結構です。

春里和泉

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第十話 魔女の最終防衛線

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 キルケはルーに手を引かれて、ベッドに横たわった。

 彼女がすでになにも抵抗できていないことに、すでに人狼は気づいているだろう。
 だがそこには触れなかった。
 まだ早い――そう考えているのだろう。実際に抵抗できているかどうかはともかく、キルケにまだその意思があるからだ。

(わたしの尊厳をおとしめて抵抗の意思を奪いつくしてからだ。……わかっている)

 魔女は内心、そう考えた。
 しかし、わかっているからと言ってどうにかなるものでもない。

 口では虚勢を張っていたが、彼女はちゃんと理解していた。こうなることが決まった瞬間から、ずっとだ。
 このままことが進めば、いずれキルケは快楽の前に負けてしまうだろう。硬い意思もそうなればどろどろに溶かされて、やがては完全にルーの支配下に置かれてしまう。
 時間の問題だった。

(……)

「なにを考えてる?」

 ルーの声ではっと見上げると、じっと彼女を見下ろす黄金の瞳に行き当たる。キルケの横に手をついて上からかがみ込むような姿勢でいる彼は、すでに服を脱いでいた。どうやらぼうっとしているあいだに準備を済ませてしまったようだ。
 彼の目がおそろしく落ち着いていたので、キルケは一瞬、すぐには犯されないのではないかと思った――あまりに静かで、湖面のようだったからだ。

 だが、腹を打つように反りかえっている屹立が目に入って、ぞっとする。

 興奮のまま犯してくれた方がどれだけいいことか。ルーは明確な冷徹さで彼女を蹂躙するつもりなのだと悟った。

「……別に、なにも。考えてなどいない」

 キルケはぼそぼそと答えながら目を逸らした。

「……大口を叩いておいて、ずいぶん大人しいな。なにかたくらんでるね」

 ルーが彼女の髪の毛ごと頭をつかんで、上向かせる。そのままじっと彼女の目をのぞきこんだ。反射的に彼の手を払いのけようとしたが、当然彼はびくともしなかった。

「や……やめろ」
「その目つきだ。なにか隠してる」

 ルーが言って、キルケは思わず身体を硬直させる。人狼はやさしげにもう片方の手で彼女の頬を撫でた。

「……切り札がある?」
「そ……そんなもの」

 どこにあるというのか。そう続けようとした彼女の言葉を引き取るように、ルーが言った。

「どこにもないよね。わかってるんだ。だけど、引っかかる……君の目つきが気に入らない」

 キルケは知らずのうちにすくみあがった。
 乱暴にされたわけではない。なのに、有無を言わせないその声音とおおいかぶさってきている大きな身体とが、彼女の意気をくじく。

「なにを考えているのか言ってみろ」
「わ……わたしは」

 震える声を叱咤しながら、彼女は口を開いた。すでに身体の方はルーに屈服しているのがわかる――こんなにも努力しているのに喉が引きつった。

「……わたしは、お前が間違っていること、わたしが間違っていたことを……証明する」
「……」

 ルーは目を細めた。

「正しいか間違っているかなんて、なんの意味もない。証明できたとして、その証明は無力で空虚だ」
「知っている。だが……」

 こうしている最中にも、情けなく脚のあいだが濡れているのがわかる。本当にどうしようもない。

「……わたしはお前の行為にあらがえない。……認める、無理なんだ」
「だったら――」
「だが、お前の思う通りには支配されないつもりだ。支配は愛じゃない、ルー」

 キルケの言葉に、ルーが顔色を変えたのがわかった。
 冷静だった彼の瞳に一瞬怒りが浮かんだのだ。
 ルーがぎゅっと目を閉じ、そして開く。すでに彼はその怒りをどこかへ隠していた。

「……謎かけかなにか?」
「わたしの言うことが、お前にもすぐにわかる。……それを今から証明するんだ」
「……」
「うっ……」

 彼女の頭を抱えている彼の手に、わずかに力が入る。そのまま上向かされて、思わずキルケはうめき声をあげた。
 見ると、ルーはすでに冷静さを取り戻している。

「どう証明するつもりか知らないけど、その前に僕の支配に抵抗できることを示さないとね」
「……あ、ああ……」

 脚のあいだに屹立が押し付けられたかと思った次の瞬間には、ぐいぐいと押し入ってくる。
 中を広げて、圧迫して、もう入らないと思うのにまだ進んでくるそれに、キルケはあっという間に力を失った。

「あっ、あ、あああ……あぁ、ア」
「すぐに気持ちよくなっちゃだめだよ」

 からかうようなルーの声が降ってくるが、もはやキルケはそれに言い返す余裕もなかった。
 眩暈がするほどの快楽。魔女熱病は治ったはずなのに、なにも変わらない。キルケは反射的に腰を浮かせて足をばたつかせた。
 ルーが軽々と彼女の腰をかかえこむ。

「あーあ……なにをたくらんでたって、これじゃね」
「あっ、うっ、く、ンッ……!」

 人狼のあざけりの声が耳に入って、必死で手で口を覆った。
 そんなことをしたところで本当の意味で抵抗できているわけではない。現に、どうしようもなく身体の奥がしびれて、今にも頭が真っ白になりそうだ。
 だが、少なくとも抵抗の意思はしめせる。キルケは必死で声をこらえた。

「ん、んん……く、うう……」
「ああ、全部入った……」
「っ……」

 内部を満たした上に、それでも足りないのか押し上げられている。どっと汗が出てくる――あまりに気持ちがいい。
 ルーは上からそんな彼女を見下ろし、小馬鹿にするような声音で言った。

「全部入るところまでは我慢できたね。えらいよ」

 そんなところを褒められてもまったくうれしくない。ルーだって別に言葉通りの意味で言ったわけではなく、単に彼女を挑発しているだけだ。
 言い返すこともできず、キルケはただ内部を押し上げるそれから逃げようと身体を上へずらそうとした。

「う、んん……ん、ああ、や、やめろ……押し付けるな、あ、ああ……ッ」
「押し付けられるとすぐだめになるもんな」
「あ……、あっ!」

 ルーの手が、彼女の身体を強く引き寄せた。がつんと奥に衝撃が走った気さえした――実際にはそれほど強い力でもなかったし、ただ再度腰が密着しただけのことに過ぎなかった。
 キルケがそれに気づいたのは、すべてが過ぎ去った後のことだ。彼女はいつの間にか浮いていた背中を、ぐったりとベッドに沈めた。

(ああ……)

 達してしまったのだと悟ったが、もう遅い。
 我慢するとかしないとかいう話ではなく、あまりにも簡単に、自分でもどうにもできないうちにそうなってしまった。

「はぁっ、はぁっ……はぁっ……」
「……まさか、もうイッた?」

 ルーが上から彼女をのぞきこんでいる。やさしく訊いている体をとっているが、冷笑の色を隠すこともしていない。

「まだだよね。思い通りにならないとか、証明するとか言ってたぐらいだ。このぐらいであっさり気持ちよくなるなんてありえない。そうだろ」
「……」

 キルケは言葉を返すこともできず、ただ荒い呼吸を繰り返した。それでもなんとかのしかかっている人狼を見返す。睨むというほど強くなく、ただどろどろに溶けた意識の下から、あがくように。
 ルーは彼女の意図をちゃんと汲み取ったようだ。

「……そんな目をして、僕を挑発しているつもりか。身体は屈服しても、心はとか言うつもりかな」
「……その通りだ……」

 キルケはあえぎながら言った。
 内部のそれがいやでも意識される。ルーに生殺与奪の権利を握られている、そんな状態だ。だがそんなことはもう問題ではなくなっていた。

「お前が手に入れて支配したいのはわたしの心じゃないのか?……どうするつもりだ、ルー。わたしの身体に訊いたって、答えは返ってこない」
「君は勘違いしてる」
「勘違い、あ、あっ、ぐ……うぅ」

 ルーの声が低くなる。そのまま律動されて、キルケは言葉を失った。
 ベッドがゆっくりと鳴る。激しくはないが重く、確実に彼女を追い詰める動きだ。

「僕は急いでない。繰り返し身体を追い詰められるうちに、いつか君は僕を待ち望むようになる。最初は身体だけかもしれないけど、そのうち心から……なぜなら、君は僕のことを好きだからだ。こんなことをされてもまだ僕のことをいい子でやさしいルーだと信じてるんだろう」
「それは」
「君を組み敷いている男をよく見ろ、ご主人様――なにが見える? いい子でやさしいルーが見えるのか?」

 キルケは答えることができなかった。律動が甘く彼女に快楽を送り込んできて、言葉が出てこない。
 ルーは魔女の答えを待たなかった。

「もしまだそんなものが見えてるんだとしたら、君はどうしようもなく現実が見えてない」
「あっ、あぁっ、あ、あ……! や、やめ、あ、あぁ」

 逸らそうとした頭をつかまれて、強引に目を合わせられる。

「あ、あああ……!」

 キルケはまたしても腰を浮かせ、悲鳴を上げた。ルーの言葉は不思議と彼女に届いていたが、飢えたように体の中心を責められては返事をすることもできなかった。
 ルーは彼女が痙攣して達したのにもかかわらず、まったく容赦しなかった。なにごともなかったかのように彼女の身体を穿っている。

「……ッ、あっ、ああっ、~~ッ、あああ……ッ」
「もう我慢する気もないみたいだね」

 声音は冷たいが、彼女を抱きしめる手つきはやさしい。それでいて律動は残酷に彼女を追い詰めていく。
 なにも抵抗できない。その余地すら与えてもらえなかった。
 もし彼の真意に気づく前のキルケであればすでに許しを懇願し、ルーだってそれを尊重していただろう。だが、今そうしたところできっと彼は許さない。

「ああ、キルケ……きれいだ。その顔をもっと見せてくれ」

 ルーが言った。彼女を食い尽くそうとする狼の顔だ。

「もっと抵抗してもいい。どんな手を使ってでも支配してやる……キルケ、君を愛してる」

 そう、彼はいい子でやさしいルーではなかった。



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