【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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国内無双編

永い(5)過去の因縁

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 あの頃。
 携帯もゲームも今ほど無い時。
 有り余ったエネルギーを喧嘩で発散する奴らでいっぱいだった。

 時代的なところだ。

 そんな中、毎日チームとその街のヘッドが入れ替わる程の激戦区──東京。

 緩いあの時代では若者が拳一つで何億と稼ぐ事もあった時代だった。
 
 そんな激動の東京で瞬く間に現れた超新星である新参チームが制覇を果たした。

 『龍!』
 『やりました!』

 チーム夜叉。
 当時まだ16歳そこらの若者しかいない小規模チーム。

 20前後の自信に満ち溢れた喧嘩自慢の若者、極道。

 そんな人間たちがうようよしている東京で⋯⋯突如制覇した意味不明な強さと噂されたのが俺達だった。

 人数は50人くらいのグループ。
 当時俺はまだ高校1年くらいだった。

 そんな俺達は全部で数百いたチームや統合されたグループを従えていたあの時代。

 負けなしの俺に唯一──負けた相手がいた。

 「真壁──銀譲ォォ!!」

 ガードしたはずの左の脇腹に強烈なフックを貰う。

 「ぐっ⋯⋯!」

 当時、制覇してすぐの事だった。

 『悪いが次期後継者としての試練として人を束ねる事をやる為、お前達の利益から得られる金を集金する』

 スーツに身を包み、俺の仲間である一人を人間椅子にしては、俺達に背を向け足を広げて座る煙草を吸う人間。

 誰も従えてはいない。 
 周囲には飛び散る血、武器、様々なモノがあるのにも関わらずだ。


 「会いたかったぞ!」

 一撃が雷が落ちた轟音のような重たさ。
 普通の人間ではない。

 狂気に満ちた顔。
 喧嘩を心の底から愉しむヤツ。

 ⋯⋯変わらない。

 嗤いながら一心に飛び出してきては──動きは荒々しい。

 ボクサーのように腕は構えず。

 迫る草薙に攻撃を仕掛けるが、当たり前のように避けられては。

 「うぐっ⋯⋯!」

 ヤツの膝が両手でガードする上からやってくる。

 それはまるで、車が一方的に突進してきたような威力。
 
 くそ、普通ではない。


 『くうっ!!』

 初めてだった。
 何をやっても勝てるという想像すら出来なかったのは。

 今、目の前にいるこの男の過去が過ってしまう。

 勝てなかったあの頃を。

 「ほう? 真壁、あの頃と変わらないな」

 「⋯⋯っ!」

 ジャブ混じりに殴り掛かったはずの自分の視界が、逆さになっていた。

 ⋯⋯これは確か。

 「合気道」

 ニヤリと狂気じみた顔で笑う草薙。

 ドスンと地面に背中から落ちる。 
 受け身を取れたつもりだが、そのまま片腕を持たれ近くのシャッターに思い切り投げ飛ばされた。

 「ガハッ!!」

 「あぁ~⋯⋯懐かしい」

 キン、と響くライターの音。
 煙草を吸う奴の嬉しそうな顔を見て、あの頃と何も変わっていない事を痛感する。

 「アニキ!!」

 「来るな!」
 
 龍と、仲間数十人。
 対して、武器持ちの草薙の奴隷100人以上。

 「おい、折角の獲物を邪魔するなよ?」

 ヤツがそう言うと綺麗に整列し両手を腰で組み、ただ見ている。

 「あの時の猛獣がどんな進化をしたのかと思えば⋯⋯可愛い子犬になっていたとはな」

 「⋯⋯っ!」

 「て、てめぇ!!」

 一瞬龍の方へとその眼光を向けたがすぐに興味はなくなり、両膝を折って俺を見下ろしながら、鼻から煙草の煙を出していた。

 「あの頃。
 喧嘩の時代⋯⋯最高だった。
 毎日がセックスしている時よりも快感に満ち満ちたあの時代。

 今じゃ台無しだ。
 みんな平等に?

 機会の平等?
 何ふざけたこと言ってるんだかな?」

 くそ、立ち上がれん。
 さっきので腕を折られた。

 それに、衝撃が強くてそれどころではない。

 「現代は文明が発達しすぎてどいつもこいつもよくわからねぇことを抜かしてる奴らが多すぎる。

 喧嘩は良くない?
 戦争が悪いこと?

 男と女の平等だと?
 無理に決まってるだろ。

 男は生きる為にその身を使って生存する為に闘い。

 女は種を残すために男に護られながら子を成して次代に継ぐ。

 シンプルだろ?
 それを女性の進出だと?
 馬鹿も休み休み言えよ。

 女を調子に乗らせて良いことなんて一つもねぇよ。

 てめぇらのほうが現実を見れてねぇよなぁ」

 何言ってんだコイツは⋯⋯っっ!!

 奴に少し背中を手刀で叩かれただけで、とてつもない痛みだ。

 「ぐっ⋯⋯!」

 「お前も──その被害にあったのか?
 誰かを守る為に猛獣である事を辞めたのか?

 俺は寂しいぜ。真壁。

 女なんて適当に話を流して良いタイミングになったら腰振って快感を与えてやれば黙る良い子なのに。

 そんな奴らを進出させたら調子に乗って何しでかすか。

 はぁ。最近仕事で色々あってよ。
 つい愚痴が出ちまったわ」

 と、俺は子供のようにヒョイっと持ち上げられ。

 「なぁ──俺は喧嘩がしてぇんだ。
 血が滾って、快感が支配する暴力的な喧嘩がしたいんだ」

 空気が、揺れる。
 次の瞬間、俺の腹は空気砲でも撃たれたかのように吹っ飛ぶ。

 「ぐぉうっっ!!!」

 後ろ蹴りか。
 なんて威力だ。

 滑りながらだが、片膝をつく。
 これくらいで済んで良かった。

 「あの頃のお前はまだ進化出来た。
 まだ若かった。

 だが今はどうだ?
 すっかり腑抜けて。

 なんだ?その可愛らしい笑みは。
 あの時のギラギラした猛獣の瞳はどこに行ったんだ?」

 寂しそうに口を尖らせ、煙草を吸う。

 「何をやってる?
 なに考えて喧嘩なんてしてるんだ?

 お前はそんな人間ではない。
 こっち側になれる資質を持った人間じゃないか!」

 こちらに両手を広げ、狂った笑みを浮かべ、見つめてくる。

 本気だ。
 あの時から何も変わってなどいない。
 あの眼差し。

 本気で喧嘩をするためだったら自らの命を燃やすような人間だ。

 「最近の若者はどいつもこいつも腑抜けちまってよ?

 何が勉強だ。
 世の中力があれば勉強なんぞ役に立たん」

 拳を見つめ、俺の方を向き直し。

 「さぁ!さぁっっ!!!あの時の続きをしよう!!」

 209cm。
 それにスーツ越しにわかる発達した異様な筋肉とそれを動かす神経。

 このバグったような強さの人間に勝つ方法はないのか。

 「お前の才能はまだ出てない!
 あの時みたいに出せ!」

 唾が飛ぶほど興奮している奴の顔。
 ⋯⋯くそっ。

 大将。すまない。

 「っ!!! そうだ!」

 ここで死んでも、コイツだけはやっぱり勝たなきゃ後ろにいる仲間たちに申し訳がたたない。

 「草薙!!」

 「真壁銀譲ぉ!!!」

 お互いに走り出す。
 それは多分、荒々しい猛獣同士だろう。

 互いの拳がノーガードの顔面に叩き込まれる。

 空気が破裂する、チャカでも発砲したように。

 宙に舞う自分の鼻血。
 向こうも変わらない。
 しかし興奮したやつは満ち満ちている。

 





















 「そうだァ! そうだ!!!!」

 やつの拳を避け、後ろ回しを仕掛ける。
 踵は綺麗にやつの首にしっかりと当たった。

 腰も入っている。
 ──だが。

 「っはははははははは!!!!!」

 避ける事はなくそのまま荒々しく上がる左腕。

 まずい!

 重い空気を通り抜け、俺の胸にその拳は直撃する。

 それは衝撃はまるでマンションから落とした落石に近い。

 全身が地面になすすべなく落とされるような、そんな感覚。

 だが、俺は戦う。
 死ぬ気で。

 「⋯⋯ほう? それはあの時のあいつの」

 俺は昔から何かの格闘技をやるのは向いていないと自覚していた。

 だが、今まで戦ってきた奴らの技を"覚える"事はできた。

 「テコンドーか!」

 華麗に廻り、やつの顎に蹴りを入れ、反対の脚でも反動で蹴り上げる。

 「ん?」

 ──電光石火のボクシングっす!!

 「あれはいつぞやの高校ボクシングチャンピオンの」

 全ての記録から奴を欺け⋯⋯!

 「今度は上奥高校の奴か」

 ファイティングポーズから電光石火のボクシングを見せつけ、今度は空手チャンピオン後輩の皆木の突き。

 「ふっ⋯⋯!やっぱり。

 ──やっぱりお前は本物だ!」

 「っ!」

 俺の攻撃に合わせて、カウンター!

 「っ、これは?」

 草薙、お前が昔見せた足技だよ。

 片手を地面につけて、両足を腕に絡みつけて地面に叩きつける!

 「っふふふ、やるな」

 地面に刺さった。
 だが、俺の足首に奴の!?

 「俺の技も奪うとは⋯⋯お前は筋が良い!」

 くそ、体重何キロあると思って⋯⋯!

 「格闘技だけが正解ではないんだ、真壁」

 ただの怪力で重心を!?

 「うぐっ!」

 倒れている場合ではない!
 
 だがその時、強烈な殺気が倒れた俺を横に転がせた。

 ドンッと余韻すら響く奴の一撃。

 見るとコンクリートにヒビが入っている。
 蜘蛛の巣と言ってもいい。

 「ふんっ! まだまだこれからだ!」

 掌を見つめる。
 くそっ、ボロボロだ。

 まだ10分くらいしか経っていないだろう。

 「殺ろう⋯⋯!真壁銀譲!」

 スーツを脱ぎ捨て、筋肉と傷だらけの上裸姿を見せつけてくる。

 何がヤツに効く?
 俺に残された選択肢は?

 考えて、考え抜く。
 頭が足りないなんてのは分かりきったことだ。

 何か⋯⋯何か⋯⋯


 ーー銀。

 

























 「ん?真壁、舐めてるのか?」

 確か、こうだったか?

 「俺を舐めてるのか?この期に及んで」

 今、できる最高は──これしかない。

 「両手なんか突っ込みやがって」

 覚えている技は限られているが、使えるのはもうこれしかない!

 大将、俺の守護霊になってくれ。


 記憶模倣──"伊崎湊翔"。
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