【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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世界征服編

おい?どうした?

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 金管楽器が鳴らすようなキーンみたいなあの耳鳴り。

 異質な風と土埃。
 悪寒と嫌な予感が的中した。
 最悪だ。

 心拍がどんどん速くなるのを感じる。
 
 分かるさ。

 空間から出てくるのはこれでもかという程紅い髪。

 ウルフカットより少し短いくらいで、バサバサなあ、あぁ⋯⋯あの感じ。

 そんで身長は2m10行かないくらいだし。
 顔も良いに加えて鋭い目つきで全体的に男らしい。

 何が言いたいか。
 非の打ち所のないほど完成された男であるということ。

 あーちくしょう。
 こっちは色々やったってのに。

 俺の容姿が悪いとまでは言わん。
 だがよ。

 あっちは最初からあのままであの強さなのは変わらねぇんだから溜まったもんじゃねぇ。

 数百年ぶりに抱く感想だ。
 ⋯⋯あぁ懐かしい。

 鍛えてもねぇのに上裸でも似合う筋肉もりもりの体で、両手で前にあるズボンのゴムの所を常に持ってる感じ。

 「おい馬鹿弟子」

 容赦なく自分のアソコを躊躇なく掻く実家にいるおっさんのノンデリなあの感じ。

 ボリボリ頭を掻いて重心が上にあるような体の動かし方と歩く感じ。

 なのにこれ以上ないほど野性味とイケメンが組み合わさった存在は見たことがない。

 というか、なんか色々フィルター掛かって相殺されるのなんなん?

 なんだ?段々腹立ってきた。

 「ちなみにジジイ」

 「ん?なんだ?」

 「気付いてないか。馬鹿だなやはり」

 「さぁアカシックに眠る強き魂よ!」

 ⋯⋯、⋯⋯、⋯⋯?

 一瞬の沈黙だった。
 ジジイは既に──四肢というものは消え去っている。

 「ケルビン」

 あぁ⋯⋯思い出すぜ。
 
 この絶望感。
 顎が無意識にカクカクすんの。

 「やっぱさすがだな。
 顔が変わっていても分かるなんて」

 「なーに当たり前な事言ってるんだ。
 考えなくてもわかるっての」

 笑い方は昔から変わらない。
 猛獣が笑ったような感じだ。

 「なんでこんな状態で呼び出されたのかはわからんが、おそらくお前が呼んだ訳でもあるまい?」

 「まぁ」

 「おっ、爺さん、大丈夫か!?」

 あの人正真正銘のサイコだ。
 まぁ仕方ないか。

 あの人は全てにおいて異質な存在だ。
 声に魔力を乗せられる。

 そう。初見殺しだ。
 あの人が発すると一定以下レベルの敵と判断される生命体は命を奪われないしても、致命傷を負う。

 つまり全体攻撃を常に掛けているということだ。

 魔力を操作するというのは、物語ではさも簡単に映し出される。

 だが現実はそんなに上手く行くわけがない。
 一番わかりやすいのは、血液をさも当たり前のように動かしているようなものに近い。

 ファンタジーとはいえ、それは無理だろう?

 ──一緒だ。

 願っても、やれる芸当ではない。
 それをあの人は声に乗せて喋るという常識外のことを平気でやってくる。

 乗せている効果は多種多様。
 腕が飛んだり、足が飛んだり。

 ただ、弱ければ弱いほどその効果が高まる。
 だから一定レベルというラインを引いているわけだ。

 「きっ、貴様⋯⋯!どういうことだ!?」

 「あァ?どうしたんだ爺さん?」

 子供のようにキラキラした瞳。
 ある意味、"俺より質が悪い"。

 「クソ師匠」

 「んぁ?」

 「子供扱いしてやるな。魔導師だ」

 「おぉ⋯⋯まじか!
 爺さん魔導師だったのか!































 悪い悪い、こんなに弱いと思ってなかったんだ」

 俺が最初この人に抱いた感想は、
 ──「子供」だった。

 人は幼少期があり、少年になる。
 そして少年から青年へ。

 青年から大人へとステップアップしていく。

 だが誰しも自分は無敵だと思う時期というのは言葉にしないにしろあったと思う。

 俺もあったし。

 この人はある種、天才過ぎてその少年の時にあった全ての感情や行動パターンがそのまま大人になったというべき人間だ。

 だから、お金がない大人を見ても何も思わないし、弱いやつを見ても何も思わない。

 "ただ、謝る"。

 俺は完膚なきまで潰しにかかるスタイルで生きてきたが、この人は違う。

 存在するだけで人を絶望させる天才だ。

 相手の強さなんて眼中にない。
 一人の人間として向き合ってる。

 謝る?優しい?

 何を言う。
 弱いのを理由に謝られた事のないやつが抱く感想だ。

 その子供のような言葉に、どれだけプライドが傷つけられることか。

 それで何人もの魔導を極めようとした大人たちが泣いて筆を折り、研究を止め、引き篭もったことか。

 「⋯⋯は」
 
 「凄いじゃないか!
 死者の魂と疑似生命の錬成!
 弱いが魔導師としての本懐はあるんだな!」

 「わ、儂が弱い?」

 「どうした?弱いのはいいんだよ!
 死者の魂をアカシック?
 中々出来ることじゃない!」

 「わ、わしは⋯⋯これでも宮廷魔導師として⋯⋯」

 「宮廷魔導師?
 おぉ、"そんなに質が下がったんだな"」

 あぁ爺さん。気持ち分かるぜ。
 その理解できない壁を見た時の絶望感。
 
 「ふーん。
 まぁ分からんが、とりあえず強力な制御機能を持ってるな。

 確かに天帝くらいの実力を持っていても、魂に束縛を掛けられている状態では、会話は出来るにしろ、かなりの制御ができるに違いない」

 あの人がそこまで言うということは、間違いない。

 「だが相手が悪かったなー。
 俺ってさ、そういうのすぐ分かんだよね。
 だがらすぐ取っちゃった」

 地力の差を理解させられるよ。
 懐かしい。

 「よーし。では馬鹿弟子」

 ⋯⋯まずい。

 「折角だ。
 この爺さんの記憶だと、どうやら俺を使ってお前を殺してほしいらしい」

 「き、記憶の魔法だと!?
 あ、あるわけがない!!」

 「⋯⋯何するつもりだ?クソ師匠」

 「この爺さん、弱いけどお前に恨みがあるらしいぞ?

 とりあえず沿ってやるよ。
 術式はとって制限はねぇし、まっ、自由の身だ。

 うい、ほら。
 かかってk──」

 「雷轟炎墜エグリッション

 肘を曲げ、拳を握る。

 固有結界。
 あのクソ師匠⋯⋯いつの間に強化してやがった。

 一気に距離を取り、上級魔法であるエグリッションを撃ち込む。

 矢印状になった炎の周りに紫電が絡みつく魔法が着弾し、きのこ雲がモクモク登る。

 だが、そうだよなぁ?

 「オイオイ⋯⋯さすが──俺の弟子だ」

 煙の中から見える月夜が獅子を照らし嗤うような絶望感。

 首を回しながら吐息混じりに煙から見えたその姿は、何千回とみた男の姿。

 「何も言わなくても容赦なく撃ち込むその姿勢──やはり俺様の弟子だ」

 鼻くそをほじりながら笑う、全くノーガードで防ぐその化物っぷりは健在だ。

 亜空間から即効で指輪と小物を増やす。
 今の俺では、少なくとも魔導具に頼らないとアレには太刀打ち出来ん。

 源流の魔法陣を背後に展開させ、一気に射出する。

 数秒で数百発。
 ジジイの真似事ではない、俺の純魔力を込めた数百発。

 「これなら⋯⋯」

 更にあの人も知らない俺独自の魔法。
 
 無数の魔法式と今までの魔法を重ね、重ね。

 撃ち込み、撃ち込み⋯⋯とにかく短時間でやりまくる。

 「さすがにこれなら⋯⋯⋯⋯っ!」

 撃ち込み続け、展開していた俺の魔法陣。
 それらが突然機能しない。

 「オイオイ──」
 
 脂汗と冷や汗が止まらない。
 振り返ると、呆れたように立ち尽くす師の姿。

 「馬鹿弟子⋯⋯歳とったか?
 俺相手に魔法陣なんて良い度胸してんな」

 陣空権。
 ジジイに俺がやってみせたように、魔法使いというのはその魔法陣を破れるかどうかでその資質が大きく左右される。

 ハッキング力、そして破られないように構築するセキュリティ能力。

 そう。
 俺が黄金の雫を使う時に最初に流用した──。

 師であるこの男の持つ異質な眼。

 "星眼ステアル"

 「ほれ」
 
 俺の手に返ってきた感覚。

 全身が。
 大昔の感覚が。

 俺の身体を震わせる。

 「んぁ?」

 陣空権を返し、クソ師匠は至って普通に。
 それはまるで、犬の散歩のリードを渡してくるような軽快さで言う。
































 「おい、どうした?」
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