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世界征服編
あの時言えなかったこと
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「アンタ、なんでわざと負けた」
「あァ?
なんの事だ?」
背を向けるクソ師匠のボロボロの傷を治していく。
「もうアンタが思うほど子供じゃない」
そう。
俺達錬金術師ならば、魔力があればエリクサーを用意できる。
それが専売特許で、それがあるからこそ、理外の道へと進むことができたから。
「俺様からすればいつまでもガキはガキ。
お前は歳だけとったようだな」
⋯⋯っ。
「ヒールなんてしてどうする?
この術式はあのジジイの魔力がなくなるのと同時に切れる。
持ってあと半日もない」
「そんなの分かってる」
ヒールが掛け終わる。
「あぁー。ところでよ」
「なんだよ」
「ここは何処だ?お前の顔もかなり違うし。
クソガキじゃねぇかよ」
「あぁ⋯⋯まぁ色々あったんだけど」
俺はそれから、一時間位、今までの出来事を話した。
本当に色んなことを。
「あの国王、結局没ったのかよ」
「その後は3番目の子が受け継いだ」
「え?あのカスが?」
大昔の事だ。
俺も若干忘れているが、この人と喋るのが何よりも楽しかったのだろう。
「落ち着け。
別に時間はあるんだから」
「あぁ⋯⋯」
いつぶりだろうな。
精神的な何かに興奮するなんて。
「悪い」
一瞬驚いた顔をしたが、すぐに穏やかに笑う。
「どうだ?長年生きた感想は」
「え?」
「こんなていたらくを見せるくらいだ。
さぞ楽しかったんじゃないのか?」
大の字で寝転がるクソ師匠にそう言われて少し考える。
「半分半分かな?」
「ほう?そうなのか」
「人間の嫌な部分ばかり見えてくるからさ」
「まぁ。そうだろうな。
人生そんなものばかりだ」
「まぁ」
「なぁケルビン、なぜ人は感情がある?」
「え?
それは、生きるために次に活かすために」
「まぁ間違えてはない。
だが──」
寝転がるクソ師匠。
その顔は大海原を初めて見るような、広大な光景を見るように。
「人は言う。
俺達は全知全能ではない。
だが、見方を変える必要がある。
俺達は見方によれば、全知全能が"何かを知っている"。
何があれば全知なのか。
何があれば全能なのか。
なぜ理解していて放置するんだ?
それは、出来ないと勝手に諦めた奴らだからだ。
⋯⋯違う。
俺達は全知全能を知っているのだから、成れるに決まっている」
「相変わらず斜め上を見る人だ」
「そうは思わないか?
魔導の起源は火だと言われている。
火をおこす為に祈ったそうだ。
そうすると、神が力を与え、魔力を使えるようになった。
人は文明を発展させ、まさに全能のように世界を進めた。
そう。だが重要な課題がある」
「重要?」
「ここで初めてくるのが──感情だ。
人という生物には感情がある。
ここで人は思う。
この力をどう使うのか。
攻撃に使うのか、防御に使うのか。
生活の為に使うのか、発展の為に使うのか。
人という生物に唯一作った欠点が──感情だ。
そのせいで、俺達はずっと争って、気に入らないやつを追い出そうとしたり、逆に囲ったり、利用したりする。
上手く行ってるだろう?
その弱点が人類を何度も壊してるんだから」
「じゃあどうすればいいんだ?」
「ちったぁ自分で考えろよ甘ちゃん。
さすが黄金の世代を作った男だ」
「どうも」
この人は相変わらず錬金術師っぽい事ばかり言いやがって。
「その弱点は一緒にいればいい。
それがそいつという証明だ」
「証明?」
「あぁ。
女が好き、ただ本を読むのが好き、研究をするのが好き、歌うのが好き。
なんでもいい。
感情はその為にあるんだ。
その為に、人はここまで様々な思考回路で一つの道を繋いできた。
便利、娯楽、探求。
しかし俺達人間は、それを忘れてしまう。
だから、忘れない事。
自身の弱点と付き合いながら、人生という運命を歩む。
予想外の人生⋯⋯いいじゃないか。
決まった人生を歩んだところで、人は何も感じないし成長しない。
発見もなければ感じることもない。
しゃがんで覗くアリさんと変わらん。
人生という全てを味わう。
天国も地獄も、全てを一人の自分という人生のスープを完成させるんだ。
死ぬ前に、どんなスープを味わえるか。
それが俺達一人一人に与えられた意味だ」
⋯⋯ふっ。アンタは変わらないな。
「さぁ、お前はこの世界で、何を成す?」
「考えたこともなかったな」
ただやりたいようにやる。
紗季を助けて、家族を救い、ダチを助け、日本を本来のルートに戻す。
俺はただそれだけで良かった。
「本当に?」
「⋯⋯っ」
「お前は本当にそれだけの為に帰ってきたのか?」
「まぁな」
偽りのない本音だ。
「ならいい。
俺が教えた事が活かされているのであれば、何も文句を言うことはない。
それも一つの人生だ」
この世界のことを話した。
俺が子供で、師匠は親のように黙って聞いてくれた。
「俺はお前の記憶は覗いた事はないが、伊崎という名字しか記憶にない。
今も変わらないのか?」
「うん」
「そうか。
異世界の技術を持ち込む。
⋯⋯まさにズルだな」
「それは否定しない」
「だが」
「⋯⋯?」
「きっとそれにも、意味はあるのだろう」
⋯⋯やめてくれよ。
俺は面倒なことが嫌いなんだ。
「見せたいものがあるんだ」
「ほう?お前が俺に見せたいものか」
2枚の写真。
「これは?」
「こっちでの俺の家族と、仲間」
石田、銀、鈴、大地、アイツらの下っ端に衣里、理沙。
「こっちが家族⋯⋯ふっ」
デコピンされる。
「イテッ」
「良い笑顔をしてるじゃないか」
そこにはピースサインの俺と家族。
「ま、まぁね」
「そうか。
お前がこんなに笑うのはあまり見たことがない。
本来、お前も普通なんだな」
⋯⋯アンタがおかしいだけだよ。
「でも──」
「ん?」
「師匠との時間もかけがえのない時間だったよ」
「⋯⋯馬鹿弟子が」
「「ふっ」」
*
それから残り少ない時間。
食べ物や飲み物、文化について話した。
興味深そうに聞いていた師匠。
だが、俺は落ち着かない。
キーンと耳鳴りの音が聞こえる。
「おっ、そろそろ時間だ」
師匠の身体が発光しだす。
「そうだ」
振り返り、師匠の人差し指で挟む間は蒼炎に燃えると1枚の手紙が現れる。
「お前の両親に渡せ」
「⋯⋯え?」
「良いもんだ。中身は内緒な」
「なんでよ」
「なんだよ、変なモン入れてないぞ」
信用がねぇ。
「仏頂面をするな⋯⋯ふっ」
深い溜息の末、師匠は笑う。
「ケルビン」
「ん?」
「お前がこんなに笑えるようになって、俺は俺の人生を飾れた。
"もうやることは無い"」
「⋯⋯っ」
それは、もう呼ぶなということだ。
「まさかこの俺が、人に教えを与えるなんて思わなかった。
弟子なんてもっての外だ。
だがまぁ──」
ーーケルビン!!お前ぇぇぇ!!
"ごめん!!"
お前才能あるのに分量間違えんなぁ!!
ーーケルビン!?お前依頼はどうした!?
"やってない"
ーーやれよぉぉぉ!!
「泣くなよ馬鹿弟子」
「うっせんだよクソ師匠」
「お前は俺の中では、いつまでもガキだよ」
「頭ポンポンすんな」
ーーおい伊崎!飯食うか?
ーーおい伊崎、元気だせって!
女なんていっぱいるんだぜ?
んーほら!
街に出ればいっぱい!
「あなたに言えなかったことがあります」
「ん?」
あの時言えなかった言葉だ。
素直に言えなかったたった一言の言葉。
「俺を、育ててくれて──本当にありがとうございました」
深く、深く頭を下げたお辞儀。
「馬鹿弟子が。
俺も、最高に笑える弟子が出来て幸せだったぜ」
「あなたの意思をこの世界で叶えられるようにします」
人生を。
少なくとも、俺の周りのみんなが、人生を選択できるように。
「お前なんかが舵を握ってるなんて心配だったが、杞憂のようだな」
「頭ポンポンすんな」
「バーカ。言ったろ?
いつまでも、俺の中では──俺の子供だ」
なんでこんな歳になってコンクリートが湿るくらい泣いてんだよ俺は。
「親はいつまでも親。
子供はいつまでも子供だ。
⋯⋯いつか分かる」
頭から手が離れる。
少し先へと歩き、振り返る。
「ケルビン。
俺のたった一人の弟子よ。
理解することを恐れるな。
恐怖を感じろ。
人生の全てを──味わえ。
そうして散々味わった後──託した後でもいい。
あの世で酒でも飲もう。
女混ぜて」
⋯⋯折角の場面なのに、相変わらずだ。
「⋯⋯はい!」
「ふっ」
鼻で笑い、手を上げて背を向けたまま歩いて最後。
「じゃあな"""湊翔"""」
光の中へと消えていく。
────え?
「あァ?
なんの事だ?」
背を向けるクソ師匠のボロボロの傷を治していく。
「もうアンタが思うほど子供じゃない」
そう。
俺達錬金術師ならば、魔力があればエリクサーを用意できる。
それが専売特許で、それがあるからこそ、理外の道へと進むことができたから。
「俺様からすればいつまでもガキはガキ。
お前は歳だけとったようだな」
⋯⋯っ。
「ヒールなんてしてどうする?
この術式はあのジジイの魔力がなくなるのと同時に切れる。
持ってあと半日もない」
「そんなの分かってる」
ヒールが掛け終わる。
「あぁー。ところでよ」
「なんだよ」
「ここは何処だ?お前の顔もかなり違うし。
クソガキじゃねぇかよ」
「あぁ⋯⋯まぁ色々あったんだけど」
俺はそれから、一時間位、今までの出来事を話した。
本当に色んなことを。
「あの国王、結局没ったのかよ」
「その後は3番目の子が受け継いだ」
「え?あのカスが?」
大昔の事だ。
俺も若干忘れているが、この人と喋るのが何よりも楽しかったのだろう。
「落ち着け。
別に時間はあるんだから」
「あぁ⋯⋯」
いつぶりだろうな。
精神的な何かに興奮するなんて。
「悪い」
一瞬驚いた顔をしたが、すぐに穏やかに笑う。
「どうだ?長年生きた感想は」
「え?」
「こんなていたらくを見せるくらいだ。
さぞ楽しかったんじゃないのか?」
大の字で寝転がるクソ師匠にそう言われて少し考える。
「半分半分かな?」
「ほう?そうなのか」
「人間の嫌な部分ばかり見えてくるからさ」
「まぁ。そうだろうな。
人生そんなものばかりだ」
「まぁ」
「なぁケルビン、なぜ人は感情がある?」
「え?
それは、生きるために次に活かすために」
「まぁ間違えてはない。
だが──」
寝転がるクソ師匠。
その顔は大海原を初めて見るような、広大な光景を見るように。
「人は言う。
俺達は全知全能ではない。
だが、見方を変える必要がある。
俺達は見方によれば、全知全能が"何かを知っている"。
何があれば全知なのか。
何があれば全能なのか。
なぜ理解していて放置するんだ?
それは、出来ないと勝手に諦めた奴らだからだ。
⋯⋯違う。
俺達は全知全能を知っているのだから、成れるに決まっている」
「相変わらず斜め上を見る人だ」
「そうは思わないか?
魔導の起源は火だと言われている。
火をおこす為に祈ったそうだ。
そうすると、神が力を与え、魔力を使えるようになった。
人は文明を発展させ、まさに全能のように世界を進めた。
そう。だが重要な課題がある」
「重要?」
「ここで初めてくるのが──感情だ。
人という生物には感情がある。
ここで人は思う。
この力をどう使うのか。
攻撃に使うのか、防御に使うのか。
生活の為に使うのか、発展の為に使うのか。
人という生物に唯一作った欠点が──感情だ。
そのせいで、俺達はずっと争って、気に入らないやつを追い出そうとしたり、逆に囲ったり、利用したりする。
上手く行ってるだろう?
その弱点が人類を何度も壊してるんだから」
「じゃあどうすればいいんだ?」
「ちったぁ自分で考えろよ甘ちゃん。
さすが黄金の世代を作った男だ」
「どうも」
この人は相変わらず錬金術師っぽい事ばかり言いやがって。
「その弱点は一緒にいればいい。
それがそいつという証明だ」
「証明?」
「あぁ。
女が好き、ただ本を読むのが好き、研究をするのが好き、歌うのが好き。
なんでもいい。
感情はその為にあるんだ。
その為に、人はここまで様々な思考回路で一つの道を繋いできた。
便利、娯楽、探求。
しかし俺達人間は、それを忘れてしまう。
だから、忘れない事。
自身の弱点と付き合いながら、人生という運命を歩む。
予想外の人生⋯⋯いいじゃないか。
決まった人生を歩んだところで、人は何も感じないし成長しない。
発見もなければ感じることもない。
しゃがんで覗くアリさんと変わらん。
人生という全てを味わう。
天国も地獄も、全てを一人の自分という人生のスープを完成させるんだ。
死ぬ前に、どんなスープを味わえるか。
それが俺達一人一人に与えられた意味だ」
⋯⋯ふっ。アンタは変わらないな。
「さぁ、お前はこの世界で、何を成す?」
「考えたこともなかったな」
ただやりたいようにやる。
紗季を助けて、家族を救い、ダチを助け、日本を本来のルートに戻す。
俺はただそれだけで良かった。
「本当に?」
「⋯⋯っ」
「お前は本当にそれだけの為に帰ってきたのか?」
「まぁな」
偽りのない本音だ。
「ならいい。
俺が教えた事が活かされているのであれば、何も文句を言うことはない。
それも一つの人生だ」
この世界のことを話した。
俺が子供で、師匠は親のように黙って聞いてくれた。
「俺はお前の記憶は覗いた事はないが、伊崎という名字しか記憶にない。
今も変わらないのか?」
「うん」
「そうか。
異世界の技術を持ち込む。
⋯⋯まさにズルだな」
「それは否定しない」
「だが」
「⋯⋯?」
「きっとそれにも、意味はあるのだろう」
⋯⋯やめてくれよ。
俺は面倒なことが嫌いなんだ。
「見せたいものがあるんだ」
「ほう?お前が俺に見せたいものか」
2枚の写真。
「これは?」
「こっちでの俺の家族と、仲間」
石田、銀、鈴、大地、アイツらの下っ端に衣里、理沙。
「こっちが家族⋯⋯ふっ」
デコピンされる。
「イテッ」
「良い笑顔をしてるじゃないか」
そこにはピースサインの俺と家族。
「ま、まぁね」
「そうか。
お前がこんなに笑うのはあまり見たことがない。
本来、お前も普通なんだな」
⋯⋯アンタがおかしいだけだよ。
「でも──」
「ん?」
「師匠との時間もかけがえのない時間だったよ」
「⋯⋯馬鹿弟子が」
「「ふっ」」
*
それから残り少ない時間。
食べ物や飲み物、文化について話した。
興味深そうに聞いていた師匠。
だが、俺は落ち着かない。
キーンと耳鳴りの音が聞こえる。
「おっ、そろそろ時間だ」
師匠の身体が発光しだす。
「そうだ」
振り返り、師匠の人差し指で挟む間は蒼炎に燃えると1枚の手紙が現れる。
「お前の両親に渡せ」
「⋯⋯え?」
「良いもんだ。中身は内緒な」
「なんでよ」
「なんだよ、変なモン入れてないぞ」
信用がねぇ。
「仏頂面をするな⋯⋯ふっ」
深い溜息の末、師匠は笑う。
「ケルビン」
「ん?」
「お前がこんなに笑えるようになって、俺は俺の人生を飾れた。
"もうやることは無い"」
「⋯⋯っ」
それは、もう呼ぶなということだ。
「まさかこの俺が、人に教えを与えるなんて思わなかった。
弟子なんてもっての外だ。
だがまぁ──」
ーーケルビン!!お前ぇぇぇ!!
"ごめん!!"
お前才能あるのに分量間違えんなぁ!!
ーーケルビン!?お前依頼はどうした!?
"やってない"
ーーやれよぉぉぉ!!
「泣くなよ馬鹿弟子」
「うっせんだよクソ師匠」
「お前は俺の中では、いつまでもガキだよ」
「頭ポンポンすんな」
ーーおい伊崎!飯食うか?
ーーおい伊崎、元気だせって!
女なんていっぱいるんだぜ?
んーほら!
街に出ればいっぱい!
「あなたに言えなかったことがあります」
「ん?」
あの時言えなかった言葉だ。
素直に言えなかったたった一言の言葉。
「俺を、育ててくれて──本当にありがとうございました」
深く、深く頭を下げたお辞儀。
「馬鹿弟子が。
俺も、最高に笑える弟子が出来て幸せだったぜ」
「あなたの意思をこの世界で叶えられるようにします」
人生を。
少なくとも、俺の周りのみんなが、人生を選択できるように。
「お前なんかが舵を握ってるなんて心配だったが、杞憂のようだな」
「頭ポンポンすんな」
「バーカ。言ったろ?
いつまでも、俺の中では──俺の子供だ」
なんでこんな歳になってコンクリートが湿るくらい泣いてんだよ俺は。
「親はいつまでも親。
子供はいつまでも子供だ。
⋯⋯いつか分かる」
頭から手が離れる。
少し先へと歩き、振り返る。
「ケルビン。
俺のたった一人の弟子よ。
理解することを恐れるな。
恐怖を感じろ。
人生の全てを──味わえ。
そうして散々味わった後──託した後でもいい。
あの世で酒でも飲もう。
女混ぜて」
⋯⋯折角の場面なのに、相変わらずだ。
「⋯⋯はい!」
「ふっ」
鼻で笑い、手を上げて背を向けたまま歩いて最後。
「じゃあな"""湊翔"""」
光の中へと消えていく。
────え?
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