【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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世界征服編

あの時言えなかったこと

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 「アンタ、なんでわざと負けた」

 「あァ?
 なんの事だ?」

 背を向けるクソ師匠のボロボロの傷を治していく。

 「もうアンタが思うほど子供じゃない」

 そう。
 俺達錬金術師ならば、魔力があればエリクサーを用意できる。

 それが専売特許で、それがあるからこそ、理外の道へと進むことができたから。

 「俺様からすればいつまでもガキはガキ。
 お前は歳だけとったようだな」

 ⋯⋯っ。

 「ヒールなんてしてどうする?
 この術式はあのジジイの魔力がなくなるのと同時に切れる。

 持ってあと半日もない」

 「そんなの分かってる」

 ヒールが掛け終わる。

 「あぁー。ところでよ」

 「なんだよ」

 「ここは何処だ?お前の顔もかなり違うし。
 クソガキじゃねぇかよ」

 「あぁ⋯⋯まぁ色々あったんだけど」

 俺はそれから、一時間位、今までの出来事を話した。

 本当に色んなことを。

 「あの国王、結局没ったのかよ」

 「その後は3番目の子が受け継いだ」

 「え?あのカスが?」

 大昔の事だ。
 俺も若干忘れているが、この人と喋るのが何よりも楽しかったのだろう。
 
 「落ち着け。
 別に時間はあるんだから」

 「あぁ⋯⋯」

 いつぶりだろうな。
 精神的な何かに興奮するなんて。

 「悪い」

 一瞬驚いた顔をしたが、すぐに穏やかに笑う。

 「どうだ?長年生きた感想は」

 「え?」

 「こんなていたらくを見せるくらいだ。
 さぞ楽しかったんじゃないのか?」
  
 大の字で寝転がるクソ師匠にそう言われて少し考える。

 「半分半分かな?」

 「ほう?そうなのか」

 「人間の嫌な部分ばかり見えてくるからさ」
 
 「まぁ。そうだろうな。
 人生そんなものばかりだ」
 
 「まぁ」

 「なぁケルビン、なぜ人は感情がある?」

 「え?
 それは、生きるために次に活かすために」

 「まぁ間違えてはない。
 だが──」

 寝転がるクソ師匠。
 その顔は大海原を初めて見るような、広大な光景を見るように。

 「人は言う。
 俺達は全知全能ではない。

 だが、見方を変える必要がある。
 俺達は見方によれば、全知全能が"何かを知っている"。

 何があれば全知なのか。
 何があれば全能なのか。

 なぜ理解していて放置するんだ?
 それは、出来ないと勝手に諦めた奴らだからだ。
 
 ⋯⋯違う。

 俺達は全知全能を知っているのだから、成れるに決まっている」

 「相変わらず斜め上を見る人だ」

 「そうは思わないか?
 魔導の起源は火だと言われている。

 火をおこす為に祈ったそうだ。
 そうすると、神が力を与え、魔力を使えるようになった。

 人は文明を発展させ、まさに全能のように世界を進めた。

 そう。だが重要な課題がある」
 
 「重要?」

 「ここで初めてくるのが──感情だ。
 人という生物には感情がある。
 
 ここで人は思う。
 この力をどう使うのか。
 攻撃に使うのか、防御に使うのか。

 生活の為に使うのか、発展の為に使うのか。

 人という生物に唯一作った欠点が──感情だ。

 そのせいで、俺達はずっと争って、気に入らないやつを追い出そうとしたり、逆に囲ったり、利用したりする。

 上手く行ってるだろう?
 その弱点が人類を何度も壊してるんだから」

 「じゃあどうすればいいんだ?」

 「ちったぁ自分で考えろよ甘ちゃん。
 さすが黄金の世代を作った男だ」
 
 「どうも」

 この人は相変わらず錬金術師っぽい事ばかり言いやがって。

 「その弱点は一緒にいればいい。
 それがそいつという証明だ」

 「証明?」

 「あぁ。
 女が好き、ただ本を読むのが好き、研究をするのが好き、歌うのが好き。

 なんでもいい。
 感情はその為にあるんだ。
 その為に、人はここまで様々な思考回路で一つの道を繋いできた。
 
 便利、娯楽、探求。

 しかし俺達人間は、それを忘れてしまう。
 だから、忘れない事。

 自身の弱点と付き合いながら、人生という運命を歩む。

 予想外の人生⋯⋯いいじゃないか。 
 決まった人生を歩んだところで、人は何も感じないし成長しない。

 発見もなければ感じることもない。
 しゃがんで覗くアリさんと変わらん。

 人生という全てを味わう。
 天国も地獄も、全てを一人の自分という人生のスープを完成させるんだ。

 死ぬ前に、どんなスープを味わえるか。
 それが俺達一人一人に与えられた意味だ」

 ⋯⋯ふっ。アンタは変わらないな。
 
 「さぁ、お前はこの世界で、何を成す?」

 「考えたこともなかったな」

 ただやりたいようにやる。
 紗季を助けて、家族を救い、ダチを助け、日本を本来のルートに戻す。

 俺はただそれだけで良かった。

 「本当に?」

 「⋯⋯っ」

 「お前は本当にそれだけの為に帰ってきたのか?」

 「まぁな」

 偽りのない本音だ。

 「ならいい。
 俺が教えた事が活かされているのであれば、何も文句を言うことはない。
 
 それも一つの人生だ」

 この世界のことを話した。
 俺が子供で、師匠は親のように黙って聞いてくれた。

 「俺はお前の記憶は覗いた事はないが、伊崎という名字しか記憶にない。

 今も変わらないのか?」
 
 「うん」

 「そうか。
 異世界の技術を持ち込む。
 ⋯⋯まさにズルだな」

 「それは否定しない」

 「だが」

 「⋯⋯?」

 「きっとそれにも、意味はあるのだろう」

 ⋯⋯やめてくれよ。
 俺は面倒なことが嫌いなんだ。

 「見せたいものがあるんだ」

 「ほう?お前が俺に見せたいものか」

 2枚の写真。
 
 「これは?」

 「こっちでの俺の家族と、仲間」

 石田、銀、鈴、大地、アイツらの下っ端に衣里、理沙。
 
 「こっちが家族⋯⋯ふっ」

 デコピンされる。

 「イテッ」

 「良い笑顔をしてるじゃないか」

 そこにはピースサインの俺と家族。

 「ま、まぁね」

 「そうか。
 お前がこんなに笑うのはあまり見たことがない。

 本来、お前も普通なんだな」

 ⋯⋯アンタがおかしいだけだよ。

 「でも──」

 「ん?」

 「師匠との時間もかけがえのない時間だったよ」

 「⋯⋯馬鹿弟子が」

 「「ふっ」」

 





 それから残り少ない時間。
 食べ物や飲み物、文化について話した。

 興味深そうに聞いていた師匠。
 だが、俺は落ち着かない。

 キーンと耳鳴りの音が聞こえる。

 「おっ、そろそろ時間だ」

 師匠の身体が発光しだす。

 「そうだ」

 振り返り、師匠の人差し指で挟む間は蒼炎に燃えると1枚の手紙が現れる。

 「お前の両親に渡せ」

 「⋯⋯え?」

 「良いもんだ。中身は内緒な」

 「なんでよ」

 「なんだよ、変なモン入れてないぞ」

 信用がねぇ。

 「仏頂面をするな⋯⋯ふっ」

 深い溜息の末、師匠は笑う。

 「ケルビン」

 「ん?」

 「お前がこんなに笑えるようになって、俺は俺の人生を飾れた。

 "もうやることは無い"」

 「⋯⋯っ」

 それは、もう呼ぶなということだ。

 「まさかこの俺が、人に教えを与えるなんて思わなかった。

 弟子なんてもっての外だ。
 だがまぁ──」

 
 ーーケルビン!!お前ぇぇぇ!!

 "ごめん!!"

 お前才能あるのに分量間違えんなぁ!!

 ーーケルビン!?お前依頼はどうした!?

 "やってない"

 ーーやれよぉぉぉ!!


 「泣くなよ馬鹿弟子」

 「うっせんだよクソ師匠」

 「お前は俺の中では、いつまでもガキだよ」

 「頭ポンポンすんな」

 
 ーーおい伊崎!飯食うか?
 ーーおい伊崎、元気だせって!
 女なんていっぱいるんだぜ?
 んーほら!
 街に出ればいっぱい!


 「あなたに言えなかったことがあります」

 「ん?」

 あの時言えなかった言葉だ。
 素直に言えなかったたった一言の言葉。

 「俺を、育ててくれて──本当にありがとうございました」

 深く、深く頭を下げたお辞儀。

 「馬鹿弟子が。
 俺も、最高に笑える弟子が出来て幸せだったぜ」

 「あなたの意思をこの世界で叶えられるようにします」
 
 人生を。
 少なくとも、俺の周りのみんなが、人生を選択できるように。

 「お前なんかが舵を握ってるなんて心配だったが、杞憂のようだな」

 「頭ポンポンすんな」

 「バーカ。言ったろ?
 いつまでも、俺の中では──俺の子供だ」

 なんでこんな歳になってコンクリートが湿るくらい泣いてんだよ俺は。

 「親はいつまでも親。
 子供はいつまでも子供だ。
 
 ⋯⋯いつか分かる」

 頭から手が離れる。

 少し先へと歩き、振り返る。

 「ケルビン。
 俺のたった一人の弟子よ。
 理解することを恐れるな。

 恐怖を感じろ。
 人生の全てを──味わえ。

 そうして散々味わった後──託した後でもいい。

 あの世で酒でも飲もう。
 女混ぜて」

 ⋯⋯折角の場面なのに、相変わらずだ。

 「⋯⋯はい!」

 「ふっ」

 鼻で笑い、手を上げて背を向けたまま歩いて最後。
































 「じゃあな"""湊翔"""」

 光の中へと消えていく。































 ────え?
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