自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

文字の大きさ
159 / 247
世界征服編

結構な事

しおりを挟む
 俺はしばらく、その場から動けなかった。

 最後の言葉。
 

 ──"湊翔"。


 人生で頭が回らなかったのは数え切れるほど。

 どういう事だ?
 表では見てないと言ってるだけ?
 頭の中で思考が巡り巡って全く計算が進まない。

 ⋯⋯この天才の俺が。


 ──"意外性、予想外"


 「今それは違う」

 そして、視線は手に持っていた受け取った手紙。

 「⋯⋯⋯⋯」

 これ、中身みてぇ。

 理由は二つ。
 一つは純粋にあの人ならマジで変なもんを渡す可能性があるということ。

 もう一つは、考えたくもないが、親が何かしら関わってた⋯⋯とか。

 「っぁはぁ⋯⋯考えても仕方ないか」

 息継ぎ出来なくなったのは久しぶりだ。

 「っ、じゃなくて」

 ジジイ!

 「アイツは色々使えそうな筈⋯⋯っ」

 見渡すと、ローブの上に灰となったヤツの残骸。

 「チッ、興奮して気にもしてなかった」
 
 じゃない。
 もしかしたら、ではなく。

 多分アイツらも襲撃を受けているに違いない。

 「急ぐぞ」






 
 固有結界から出た後。
 俺はすぐに石田たちへの所へ向かった。

 状態はまぁ予想通り。
 すぐに救急と被害状況の確認から。

 幸い確認するとこちらで死傷者は出ていない。

 重傷者は20人程。

 日本ではないことを考えると、中々悪くない数字だろう。

 相手の状態を見るに、確実にギャングだ。
 
 「伊崎さん!!」

 びっこを引きながら泣きじゃくって俺の懐に入ってくる石田。
 
 「どうした?」

 「アニキが」

 ⋯⋯っ。

 そこには、見るからにヤバそうな銀の姿があった。

 普通に診察をするが、考えなくても分かる。
 
 「石田、どうする?真面目に伝えるか?
 それとも、オブラートに包むか?」

 俺の問いに確信してしまったのだろう。
 真っ直ぐ俺の目を見て言う。

 「真面目にお願いします」
 
 「恐らく⋯⋯もう普通に日常を過ごす事は難しいだろうな」
 
 見ても全身骨があらぬ方向に向かってるし、拳に至っては粉砕されてる。

 「っ、なんで⋯⋯」

 さすがに見てられん。
 
 「普通──ならな」

 言うと無言で俺を見上げる。

 「なんとかなるんですか?」
 
 「あぁ」

 「くうっ⋯⋯ううっ⋯⋯伊崎さぁぁぁん!!」

 「あーはいはいはい」

 見ての通り、完全に蓋が開いて縋りついての大号泣である。

 「伊崎」

 背後から声が聞こえ、振り返るとそこには。

 「仕事をしてくれたのか」

 「あぁ。
 カジノに行くって連絡があったからな」

 タイミングバッチリってわけか。

 「草薙、相手は?」

 「もう押さえてある。
 準備は万端だ」
 
 「サンキュー」

 「アイツら、どうするつもりだ?」

 袖なしに羽織っていたスーツに腕を通し、煙草に火をつけながら聞いてくる。

 「まぁ、アイツら次第だな」
 
 常識、序列。
 日本と外はまるでシステムが違う。

 それに、仕事とはいえ、一度攻撃をしてきた相手だ。

 「先頭で膝をつかされているあの二人⋯⋯多分こいつらみたいなもんだ」 
 
 顎で指してそう囁いてくる。

 「引き入れろと?」

 見上げて返す。

 「いや? 
 アイツらは弱くない。

 だが、アイツらの根性のようなものが常人のそれではなかった。

 腕が折れても、脚が逝こうと、構わず特攻してきた。

 ギャングであんな行動をとるやつなんて見たことない。

 だから念の為な。
 仕事の範疇だ。

 さすがに100億も貰っておいて尻拭いだけだとお前も嫌だろう?」
 
 グラサン掛けながら言うことではないが、まぁその通りだな。

 「そりゃ良い仕事をしてくれる」

 「それと、真壁銀譲の拳の方だが」

 「⋯⋯?」

 「腕の良い医者を知ってる。
 一度退院したあと、俺のところに連れてこい。

 今以上に強くしてやれる」

 「それも100億だからか?」

 皮肉っぽく言ってやると、少し頬を緩ませながら鼻で笑う。

 「ソイツは俺が唯一認めた漢だからな。
 簡単に死なれては困る」

 「そうか。
 何かあったらまた頼むぞ」

 「⋯⋯まぁせいぜい、養生しろや」

 背を向け、手をあげて優雅に去っていく。

 「伊崎さん」
 
 「ん?」

 「俺⋯⋯」

 石田。
 座りながらも太腿にある拳を握り締めて震えていた。

 「俺⋯⋯もっと強くなります。
 もっと⋯⋯頭良くなります」

 「だな。
 銀も精一杯だったろう」

 「聞きました。
 アニキは俺達を信頼してはいても、背中を預けられなかったって。

 だから、これ以上重荷を背負わせるのはなしにします」
 
 だが。
 強ばり過ぎだ。

 俺は肩に手を置いて言う。

 「積み上げろ」

 「⋯⋯え?」


 ーー理解することを恐れるな。
 ーーお前はお前の道を歩め。
 ーー死ぬ時に味わうスープを何にするかはそいつ次第だ。


 「毎日、ただ⋯⋯やるべき事をやれ」

 すると、ポカンと俺を見上げる石田。

 「どうした?」

 「伊崎さん、少し顔が優しくなりました?」

 「はぁ?俺が?んなわけないだろ」

 「いいえ?
 どこかスッキリしたような顔をしてるというか」


 ーー育ててくれて、ありがとうございました。

 
 「ふっ、気のせいだよ」

 「なんか、なんか気持ち悪いです⋯⋯イテッ!!
 
 折れてんすよォォ!?
 伊崎さぁぁん!!!!」

 生意気小僧が。 
 調子に乗るからだ。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...