【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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世界征服編

亜空間旅行(前編)感傷に浸るのも悪くない

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 「久しぶりだな。ここに来るのも」

 最初に一度来たきりだったな。
 ここの亜空間は宮殿をイメージして作った。
 
 上層中層下層、深層。
 そして最下層。

 大体こんな感じのランク分けをしていたはずだが。

 「色々あるな」

 上層は確か武器とか防具だったはずだ。
 目の前には日本全国から粗大ゴミをかき集めたような光景。

 ただ、と言っても手に取って冷静に考えるが、この世界のどの剣よりも純度は高く、明らかに高級品だ。

 「あの時はコレの価値など考えたこともなかったな」

 まぁ根本は今も変わらん。

 剣を持っている手に魔力を流す。
 すると、もう片手に流すと。

 「ま、チートだわな」

 左手にあった剣と同じモノが右手にはある。
 こんな事ずっとやってれば、まぁ価値観は変わらん。

 「石田はなんか盛り上がって1日くらいは問題なさそうだし」

 とりあえず、アイツがいたおかげで、残りの二ヶ月弱か?

 冷静にやれそうだ。
 ⋯⋯これも運命なのか?
 
 「こうやって今まで亜空間に来る事を考えなかったのも、今になって魔力量があるのにもかかわらず、下層へと来なかった事も」

 何がなんだかな。
 この光景を眺めながら俺は思わず呟かざるえない。

 色々思い浮かべながら──宮殿を歩く。
 様々な武具を眺め、一つずつ感傷に浸る。

 まぁ、イメージは昔の体操着の袋を見るような感覚と言えばいいか。

 親が作ってくれた上履き袋を眺めるようなものだ。

 自分の生きてきた証を再確認するものであり、自分という存在が確かに存在していた事を忘れない為だろう。

 そして歩くこと10分。
 俺の目の前には次の階層へ降りる扉だ。
 
 おそらく自分のシンボルだろう。
 濃い茶色を貴重とした大きな扉。
 彫られた刻印が俺をスキャンする。

 カチャンと音が鳴ると。

 「ん?」

 扉が開くかと思えば、スマホのように照射された光が俺の眼前にメッセージを出してきた。

 そこに書かれているのは、


 "これを通る頃の自分は下のモノを有効活用してくれることを願っている"

 "お前は悪用する人間ではない"

 "しかし正義感が強い人間でもない"

 "程々にな"

 "お前はお前、俺様は俺様"

 "色々迷う事もあるだろう。
 だが、最下層へ行け。
 今はここまでかもしれないが"


 などと注意喚起が書かれている。

 「記憶が欠如している可能性大だな」

 こんな事をシステム的に導入した覚えは少なくとも俺の記憶にはない。

 覚えているのは、自分の日記を読み、ゲートを通った記憶のみ。

 それに。


 ーー私たち騎士にとって、あなたの事は義務教育として習いますよ。

 ーー"一万年"以上前に存在していた者として。


 「⋯⋯⋯⋯」

 つまり、俺は1000年や2000年どころではない年月を過ごしていた事になる。

 「──ま、今考えたところで仕方がないだろうな」

 "開け"

 言葉に魔力を乗せ、扉を開ける。
 開いた強風を浴びながら、俺はその先の世界へと足を進めた。

 







 「⋯⋯あーそうだったな」

 螺旋階段を降りた俺は、映る景色を見ると頭が痒くなってきた。

 溜息が止まらん。
 そうだった。

 こんなんだったなぁ。

 目の前に広がる景色は、宇宙空間のような研究施設。
 
 "中層・研究施設と兵器"

 "関係者以外立入禁止"

 "そこら辺にあるオートマタが起動した場合、個体別にマニュアルがあるから自分で調べて自分で解決しろ"

 "マジでアーカムが可愛い、もっと顔はこっちの方がいいよな"

 まぁ俺の実験施設だからまぁ俺の言葉で書いてあるのは当然だが⋯⋯

 近くにあるゲーセンにあるアーケード台のような筐体。

 触れてみると、なんか魔法式が羅列されてハッカーみたいに動き出す。

 「羅列されているのは施設の起動っぽいな」

 近くの回路が動き出しているのを見るに間違いないだろう。

 ヴン、みたいな音がそこら中から聞こえてくるな。

 まぁ、とりあえず。

 何台もあるアーケード台を通り過ぎ、奥の方に見えるデスクらしき場所に足を進め、机の上にある書類を眺める。

 「やはり全盛期の俺だからか、規模が違うな」

 文字通りSFのような広さ。
 奥まで見渡すのに魔力が必要なくらいだ。

 視線をすぐ下の机に落とす。

 "イシヤのカスタムパーツまとめ"

 "魔力の増幅について"

 "寿命の個体差について"

 "魔法式の基礎をガキどもに教える用の要約一覧"

 "魔法についてと今は亡き文明の特徴一覧"

 "研究日誌19675号"

 「見覚えがあるが、内容は覚えてないな」

 これ以外にもある大量の書類の山を指でなぞりながら過去へ思い馳せる。

 毎日積み上げて、やるべき事をやる。
 良かった。
 しっかりとまだ、俺は俺である。

 そんな時、壁にデカく何か書かれている。

 "ここに来たいつかの俺へ"

 「なんだこれ」

 "多分書類を見たか?見ただろう。
 
 それは重要であって重要じゃない。
 だが、昔の自分が気になると思うから、案内を用意しておいた、右にあるだろ?ここの案内図は"

 チラッと見ると確かに右に何かある。

 「えー⋯⋯そこを曲がってここから先、ゴミ箱。

 左へ曲がるとオートマタコレクション。
 真っ直ぐ進むと仮眠室と書斎。
 
 ゴミ箱の近くに昇降機があるから、使えば部屋があるから、必要ならそこから色々持って行け。

 まぁ、ここまで来れるんだからそんなに困らないだろうが⋯⋯か」

 何があるんだ?
 俺って色々不明すぎてこんがらかってくるな。

 まるで自分が自分じゃないみたいだ。

 「つまり、今の俺に伝えようと最後の俺は色々メモってるわけか」

 と、壁沿いに歩いていく。
 本当に研究施設は広く、ここだけでかなり時間が潰せそうだ。

 そんな中。

 「⋯⋯⋯⋯」

 "今のお前はどうだか知らんが、この空間は見ない方がいい"

 何故か案内図に書かれていない謎の空間がある。

 ドアノブがあって、トイレの扉みたいだ。

 それにご丁寧に注意書きがある。
 だが、まぁ自分の事だ。見たいわな。

 「案内図的には書かれていないが、俺なら変則的に見るであろうと予測したのか」

 ドアノブを回すが反応がない。
 チラッと視線落とすと。

 「魔力を流せってか?」

 流すとガチャンと解錠し、中へ入れる。
 そのまま押し開けると、8畳くらいの部屋。

 「⋯⋯⋯⋯」

 思わず言葉に詰まった。

































 "白波紗季"
 "しらなみ"
 "白浪サキ"
 "渡せヨシとも"
 "井崎美波"
 "猪崎?"
 "みなみ"
 "よしなみ"

 ──横を見ても。

 "思い出せない"
 "顔は可愛かった気がする"
 "でもぼやけてて、わかんない"
 "髪は長かったかも?"
 "短髪だった気もする!ちょっと思い出せた!"
 
 ──後ろも。

 "忘れたくない"
 "イヤだ"
 "なんで俺が生きててあいつらがあんな目に遭わなきゃならなかったんだ?"
 "死にたい"
 "でも死ねない"
 "みんな元気にしてるかな?"
 "保険金があったらしい。
 もし知らなかったらどうしよう"
 "ごめん、最期まで無能だった"

 ──天井にすら書かれてある。

 "会いたい"
 "アイタイ"
 "なんで俺が生きてる必要があるんだろう?"

 "でも、みんないる"

 "研究も上手くいってる!
 もしかしたら帰れるかもしれない!"

 "日本語が思い出せない。
 ミンな?を思い出せない"

 ──下にも書かれてある。

 "俺のアイデンティティだから"
 "私の核だから"
 "俺様は俺様、思い出さないと"

 "俺みたいな人間はさっさと死ぬべきだ"

 "忘れたくない人"
 "俺様にとって大事な人"
 "俺の生きた証"
 "私はここで過去を思い出す。絶対"

 "俺の寿命なんていらない。
 だから「あの女の子」を思い出したい"

 "誰だっけ?
 大事なおんなの子だったはずなんだ"

 "ニホンってあったはずだ"
 "俺ちか覚えていない国の名前"
 "俺いは、好きだった女の子がいたはずだ"
 "友ダツがいたはずなんだ"

 "なんで俺は忘れてる?"
 "モジがウマかけない?"
 "なんだつけ? 
 ニっほそん?につこんだったっけ?
 ちがう、アステラス文字でもなくてなんだっけ?"
 
 "教えてくれ、難で自分ダケが生きてナンデ教えてくれない?"

 
 そこには、大量に書かれた魔力でエグった⋯⋯刻まれた懺悔のような部屋だった。

 机も物もなく、ただそこには忘れたくないという怨念や執念に近い壁に書かれた文字。

 多分第三者が見たら、凄まじい隙間もないこの空間にゲロでも吐きそうだな。

 だが、これは俺だろう。

 「漢字がハチャメチャだな」

 壁に刻まれた文字をなぞる。
 記憶は魔力で思い出せるはずだが。
 今は漢字を正確に書けるし、思い出せる。

 「⋯⋯⋯⋯」

 周囲全部に書かれたこの文字の塊。

 「いや、かなりの消費量だ。
 多分、かなり生きた後の話か?」

 自分の筆跡である事は間違いない。
 思わず絶句とまでは行かないが、今の俺の顔はどんな顔をしているんだろうか。

 「⋯⋯責任重大だな」

 どの道、夏までにここもしっかり整理しないとな。
 
 さっ、まだまだ見るところがいっぱいだ。
 見回らないと。

 文字を背に、俺はいつかの自分へと言うように。

 「なぁ、























 救えたよ。俺」
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