【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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世界征服編

伊崎教

 「石田、死にそうになってねぇでいくぞ」
  
 「はいぃ」

 隣で美女の膝枕でぐったりしている石田を放置して進む。

 到着したのは、アブダビのとある場所。
 まぁざっくり説明するとだな。

 「お前どれくらいでくる予定だ?」

 「あと5分です!
 サイコーです!海外美女!」

 「あっそう」

 ⋯⋯悪い。

 まぁ、話すべきは今回の目的とこの場所について⋯⋯だが、その前に話さなければいけないことが多くある。

 まず、どうやら調査によって海外むこうも俺についてかなり情報を得たようだ。

 まぁ都合がいいからだろうな。
 日本と組んだ瞬間に突然真上にグラフが向いたら流石に俺でも勘づく。

 それにあの取引の現場にもスパイだったり態度で逆恨みをする奴が居てもおかしくない。

 そんな中。
 あのタワー計画と様々な今後を展開するエリックの演説があった。

 正直なところ、俺はその演説自体をつい先日見たのだが、今年一年で着手しそうな事を話していた。

 ざっくりこんなところだ。

 ・一つの州全域における電気をエリックたちのタワーで賄う。

 ・真水に変えるプロジェクト
 ・植物工場の建設
 ・燃料関連についての話

 まぁ俺は魔法で何でもなるから正直どうでもいいのだが、まぁ現実はこんな状況だ。

 世界的には審判の日の影響でエリックたちのタワーから多大な影響を受けている事から積極的に支持を始めているらしい。

 あと普通に金になるからだろう。

 「ミスター伊崎」

 「オーケー」

 と。まぁ、長ったらしいな。

 俺の存在がなんとなく知られているという事と、次なる覇者となるべき人物として要注意対象らしい。

 そんで、今回の目的だが、事の発端は少し前の議員と喋ったときに彼の娘の病気を治してしまった事が今回の経緯だ。

 どうやら中東の石油王だったりの娘さんが病気で動けない状況だということで、その議員の話を聞いた奴らが俺に白羽の矢を立てたわけだ。

 そんな中案内の末、到着したのは彼らの別荘の一つらしく、機能性を度外視したような豪邸だ。

 「伊崎さん、いよいよこんなところまで来たんですね」

 隣にいる名も無き通訳くんが、感慨深そうに見上げている。

 「⋯⋯まぁ、そもそもエリックの時点で色々お察しだろう」

 進む。
 案内の先には、如何にもな天蓋の付いたベッドに一人の少女と付きっきりで看病している父親。

 「連れてきました!」

 その声に気付く父親。
 
 「やぁ!噂に聞いているよ!
 アジアの子が難病だと言われていたのを口頭で処方した薬で治すことができたってね!

 うちの娘もどうにかならないか!?」

 見上げるその表情は当然ながら必死。

 "今"の俺からすると、こんな物は当然の如く治せるのだが、それは表情に出してはいけない。

 もしかしたら良いことがあるかもしれないという打算だ。

 「勿論。最善尽くします」

 魔力を通した瞳越しに見えるのは、なるほど。

 いわゆる血液の病気だ。

 「どうだ?何かわかったか!?」

 「脈をとったところ、血液のご病気なので、かなり時間が掛かると思いますよ」

 「掛かって構わない!
 私はどうすればいい!」

 んー⋯⋯どうしようなぁ。
 この場で色々やってもいいが。

 "面倒"だな。

 掌に魔力を集める。

 「⋯⋯っ!?な、なんだ!?」

 "星の巡り"よ、我が手で癒やしたまえ"

 「星の息吹スラブアルテラ

 キーン、と部屋中光り輝く。

 この方が助けてやった感があるだろう。
 正直この魔法はコスパ悪いが、まぁ良いか。

 収束した光り輝く魔力が収まり、少女はぱちくりと目が覚める。

 「⋯⋯あれ?パパ?」
 
 「⋯⋯っ!!!」

 娘の手を握り、抱きしめると⋯⋯ゆっくりと俺を見上げる。

 「か、神だ」

 「⋯⋯え?」

 それは行き過ぎ──っ!?
 俺は金さえ貰えればよかっ──

 「神よ⋯⋯!!」

 俺の両手を凄い勢いで包み込み、聞いたことない声量で扉の方まで行ったかと思えば、そのまま開けて走り去っていく。

 「い、伊崎さん?」

 「俺もなにがなんだか」

 「興奮のし過ぎで落ち着かせる為にどっか行ったんですかね?」

 「あの⋯⋯パパ⋯⋯は?」

 そう話していると少女は掠れた声で喋る。
 視線は少女に戻る。
 
 「あぁ。多分興奮のし過ぎだろう。
 そのうち戻ってくるさ」

 「んー⋯⋯今まで凄い体がダルかったのに⋯⋯凄い体が元気になった気がする」

 「まぁ、俺が治したからな」

 「⋯⋯⋯⋯え!?」

 時間差で驚く少女に、俺は笑ってスマホを開く。

 「俺は頼まれただけだからな。
 別に親切でやったわけではねぇから気にする必要はない」

 「そ、それはなんとなく分かる⋯⋯けど」

 「治りたてとはいえ大変だろう? 
 ゆっくり休むといい」

 「あ、あのっ」

 数歩歩き出したところで振り向く。

 「⋯⋯ん?」

 「ありがとう!」

 ーーねぇ■■■■、ありがとう!
 ーー体痛かったけど、またお仕事できるようになったよ!

 「⋯⋯⋯⋯」

 ──ふっ。

 「身体、ゆっくりな。
 しっかり寝ろよ」
 
 「──うん!」

 そう踵を返し、扉を開けようとしたら通訳が開ける。

 「あんな顔する伊崎さんは初めて見たよ」

 廊下を歩いていると、通訳にそんな事を言われる。

 「ん?」

 「あんな優しい顔出来るんだなって⋯⋯イテテテテ!!」
 
 「ぶっ殺すぞ」

 廊下を抜け外へと向かう。
 だがその途中、俺は鏡に差す太陽の光を見つめる。

 ーー"ありがとう"!

 ありがとう、か。
 何気ない言葉。

 もっと言えばたかが言葉だ。
 
 「⋯⋯⋯⋯」
 
 人はそんな言葉を大事にする。 
 だが、そうか。

 俺も存外人間だった⋯⋯って事か。
 
 「Hey!ミスター伊崎!」
 
 中腰でゼェゼェ荒い呼吸を整え、必死に何かを言おうとしている。

 「この礼は──必ず、必ずする!!」

 「おい⋯⋯」

 その場で膝を付いたと思ったら、なんか神様みてぇに称えられている。

 見回すと周囲もだ。

 「───、───!!」

 謎言語が飛び交い、通訳も困惑している。

 「なんて?」

 「多分宗教か何かだと。 
 ていうか伊崎さん、この人たちに恩を売れたのはデカイかもしれません」

 「なんでだ?」

 「下手したら国が動きますよ」

 そう言われ、一瞬言葉に詰まった。

 「⋯⋯⋯⋯」

 本当にそれで良いのか?
 そう言われてる気がして。

 「⋯⋯今回の代金は要らないと伝えろ」

 「え?でも伊崎さん、さっき金って」

 「いい」

 ーーありがとう!

 「今回に限り、報酬はいらない。
 もちろん次からは死ぬほど取る。

 そう伝えろ」

 ⋯⋯こうやって、俺は俺になって行くのか。
 昔誰かだった自分は、そうして溶けていく。

 「ちょっと伊崎さん!
 向こうがご飯をって⋯⋯!聞いてない!?」

 「いらん。
 気が変わった」

 「あれ?伊崎さん?」

 「てめぇは来んのが遅いんだよ」

 「イタタタタタイ!!
 おい後輩!
 伊崎さんを不機嫌にさせると一週間は地獄だぞ!」

 「え!?俺何もしてないっすよ!!」

 気分が良いな。
 それにこんなところで高いモン食うよりも。

 今日は、家でゆっくり石田アイツの飯が食いたい。

 鈴と大地とたまには食うか。
 帰りにでも
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