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白波ホールディングス編
恩返しの一歩
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急上昇4位とか5位らしいっす!
読んでくださってありがとうございます。
「ただいま」
次の日の早朝。
「あ、お兄ちゃんお帰りー!」
「あー湊翔か、お帰り」
「そーちゃん、お帰り。待ってたのよ」
「お兄遅い」
何やら仰々しいくらい家族全員がリビングで正座の状態で俺を待っていたようだ。
「お、ちょっとまってな」
えーと。どれどれ⋯⋯。
鞄を漁って中から帰りに買った弁当と飲み物をテーブルの上に並べる。
「買ってきたんだ。良かったらみんなで食べよう」
ん?
「どうしたの、みんな」
顔を上げると、全員の表情が何処か真剣だ。
「湊翔。少し話があるんだ」
「おぉ⋯⋯父さん、なにそんな真剣に」
あまりの威圧感があったので、言いながら真正面に座って、弁当を開ける。
「湊翔、何か悪いことはしていないか?」
「パパ、ストレート過ぎだって」
「そうよ。そーちゃんだって事情が」
「いいからいいから。それで、どうなんだ湊翔?」
二人の手を振り払って、俺の目を見つめる父。
「なんにも悪いことはしていないよ。誓ってね」
まぁ一部向こうではケルビンと名乗っただけで斬り殺されそうになったことはゴマンとあるけど。
「ん?」
すると、静かに父がスッと机の上に2つの物を俺に差し出してきた。
「通帳とカード?」
「昨日湊翔が居ない内に白波ホールディングスの会長様が直々にやって来たんだ」
あのおっさんめ。俺が居ない内にこんな事をするなんて。
「何やら会長様を助けたお礼なんだとか」
「あぁ⋯⋯そうなんだよね。勉強していた知識がすごく役にたったんだ」
「そうか? 知り合いに運よく一人白波に入れた人間がいる。
こんなご時世でな。
だが良いとこの大学を出たからといってどうにかなる業務ではないんだそうだが?
通帳をたかが15歳の子供に渡すなんて、何かとんでもない事をしたかと父ちゃんは思ったわけだ」
まぁ間違ってはないか。
そこは会長も理解しているだろう。
「誓ってしてないよ。投資専門の勉強をしていたりして、たまたま俺の予想が当たったってだけだよ。ちょくちょくこれからも力を貸してほしいって」
数秒、無言の眼差しが突き刺さってくる。
魔王なんかよりも凄いんじゃないか?これ。
なんか久しぶりだなぁ。
家族独特の暖かさの混じったこの顔を見るのは。
「⋯⋯そうか。疑って悪かったな。うちの湊翔は天才なのかもしれないな」
「やめてよ。天才じゃない。この家を少しでも良くしたくて勉強しただけなんだから」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
「ちなみに幾ら入ってた?」
そう言うと父の顔が険しい。
こりゃ金額までも見たな。
「数億くらい?」
「⋯⋯知っているのか?」
「まぁ白波の会長さんに言ったからね。損害と対等になるほどの金額を用意してくれって。命と同等の価値としては当然でしょ?ってね」
まぁ取引の内容は知らないだろうし、適当こいとく。
「うちの息子はどこまで勇敢なんだ。
⋯⋯ふぅ、分かった。これは湊翔にしっかりと手渡す」
大人としては複雑なレベルの溜息だろう。
常人からすれば、宝くじが当たったようなレベルの金額を息子が吹っかけて手に入れた訳だからな。
しかも相手は白波。
常識外から何をやってくるかわからん相手でもある。
「父さん、母さん」
なんだよ。折角楽しんで朝食かと思ったのに──俺は。
「湊翔、お前」
「幾らかはもちろん貰う。けど、これは──借金に当ててほしいんだ」
「駄目よ!これはそーちゃんが手に入れたお金でしょ?」
「分かってるよ。だけど」
ーーははは! 湊翔ですか?うちの子はね?東大? もっと上のレベルに行けるほどの天才なんですよ!ええ!ぜひ!
ーーうちのそーちゃんは良い子なんですぅ!自慢の息子でっ!何かあったらそーちゃんがなんだって解決してくれるんです! だから幸せです!
ーーお、お兄。い、いつも⋯⋯ありがとうっ!
ーー湊翔お兄ちゃん! 今度泥団子作ろ!
ふと聞こえる──過去の家族の声。
浮かんでくる。鮮明な記憶と共に。
「もう──幸せは十分に貰ったから」
今の俺の口から出るのは、こんな言葉しかなかった。
これは、向こうでは一切貰うことのなかった感情だ。
恐怖、畏敬、支配。
何でもできる自分が、唯一持つことのできなかった⋯⋯いや、持つことすら許されなかった感情と言葉だ。
「俺は──」
そう。地獄を見た。
『お母さん、なんで夜中いないの?』
必死に繕った笑顔。
見る度に悲壮感漂う母を、忘れられない。
『湊翔、今日の夕飯はな!』
そう。知ってる。
お父さんとお母さんは、食べてない日の方が多かった事も。
トイレで空きっ腹で吐きそうになっているのを見た。
それでも俺達の前では絶対に悲しい顔を見せなかったし、出したら駄目だということも理解していただろう。
それが分かった自分は、苦しかった。
でも自分にはどうすることもできなかった。
金もなければ人脈もない。
だから、どうにかしてこの家を救う為には受験をするしかないって。
ーーあら、伊崎さんまたお風呂に入ってないですって?
『あはは。すいません』
悪態をつかれているのに必死に謝る母を見た。
必死に笑ってなかったことにする父を見た。
同じ家族がそんな目で見られているのに、どこの人間が耐えられるのだろう。
だから俺はどうにかしてやろうと必死に受験勉強を頑張った。
南、拳哉。
俺が。俺が受験を成功させて、就活を頑張れば、絶対にもうそんな思いをさせる必要はないって。
だが、運命がそうさせてくれなかった。
「湊翔⋯⋯」
「だから、これはうちが普通の生活を出来るようにするために使って。親とか子とか、関係ないでしょ?」
過去では言えなかったことを、過去の自分を清算するとか、何でもいい。
──今言うんだ。
「知ってるよ? 父さんも母さんも、ご飯を食べれていなかったことも。
拳哉と南は俺の邪魔にならないように家ですら声を潜めてた事も、ご飯の時はなるべく笑顔でいようって頑張ってたのも。全部知ってる。
嬉しい。凄い嬉しいよ。だけど、それじゃみんなが幸せにならない。
だから、どんだけお金がかかってもいい。
借金を返して、みんなで普通の部屋に引っ越して、普通の生活をしようよ。
その為なら俺は───」
少し感情的になっているのは分かってる。
だが抑えられん。
今の俺だからではなく、過去に引っ張られているのだから。
あの時には、言えなかったことだから。
今なら、俺は言える。
「世界中の人間を殺してでも生活出来るようにするから」
「そ、そーちゃん⋯⋯」
「知らないよ。俺にとっては、ここにいる家族が全てだもん」
顔を覆って泣く母と、黙って俯く南と拳哉。
そして、無表情で見上げる父。
「俺は、その意見には反対だ」
「父さんはそう言うだろうね」
「だがな湊翔──」
父は、恥を忍んだのか。
一拍。
間が空いて、その場で額をつけて俺に頭を下げた。
「そんなお前が誇らしく思う」
母達には見えていない死角で握りしめた拳が、今まで誰にも言えなかった想いを押し殺していたのだと、俺は見逃さなかった。
過去ではそんな事すら考えていると気付いたのは、かなり後の事だったから、俺はなんとも言えない顔をしていた。
親というのは大変だな。
「パパ」
「あなた」
「俺には、決して出来ない。だからこうしてみんなに迷惑もかけているし、報いだと思っている。
だから、すまない──湊翔。
そして、心から⋯⋯ありがとう」
「これは、俺が貰った幸せの価値だから。こんな金、いくらでも増やすから。だから、だから──」
「いいのよそーちゃん! そんなこと言わなくても! ごめんねぇ!何もできないママで」
「うわーん!!! お兄ちゃんー!」
「お兄!!」
ガバッとテーブルなんてひっくり返して抱き合う俺達。
弁当、ひっくり返ってるし⋯⋯なんて野暮か。
「これが家族だよな⋯⋯そうだよな」
ぼそっと呟く声すら聞こえない。
母に感化された二人も泣き始め、みんなで号泣してる。
今は、今回は──なんとか少しは盛り返せただろうか。
黙って男泣きを見せる父を見て、少し安堵した。
そしてその後、弁当がひっくり返ったのをみんなで拾って食べたのは、10年後には悲しいモノではなく──間違いなく良い思い出になるだろう。
まさか、自分が半泣きするとはな。
俺もまだまだ人間辞めてなかったみたいだ。
読んでくださってありがとうございます。
「ただいま」
次の日の早朝。
「あ、お兄ちゃんお帰りー!」
「あー湊翔か、お帰り」
「そーちゃん、お帰り。待ってたのよ」
「お兄遅い」
何やら仰々しいくらい家族全員がリビングで正座の状態で俺を待っていたようだ。
「お、ちょっとまってな」
えーと。どれどれ⋯⋯。
鞄を漁って中から帰りに買った弁当と飲み物をテーブルの上に並べる。
「買ってきたんだ。良かったらみんなで食べよう」
ん?
「どうしたの、みんな」
顔を上げると、全員の表情が何処か真剣だ。
「湊翔。少し話があるんだ」
「おぉ⋯⋯父さん、なにそんな真剣に」
あまりの威圧感があったので、言いながら真正面に座って、弁当を開ける。
「湊翔、何か悪いことはしていないか?」
「パパ、ストレート過ぎだって」
「そうよ。そーちゃんだって事情が」
「いいからいいから。それで、どうなんだ湊翔?」
二人の手を振り払って、俺の目を見つめる父。
「なんにも悪いことはしていないよ。誓ってね」
まぁ一部向こうではケルビンと名乗っただけで斬り殺されそうになったことはゴマンとあるけど。
「ん?」
すると、静かに父がスッと机の上に2つの物を俺に差し出してきた。
「通帳とカード?」
「昨日湊翔が居ない内に白波ホールディングスの会長様が直々にやって来たんだ」
あのおっさんめ。俺が居ない内にこんな事をするなんて。
「何やら会長様を助けたお礼なんだとか」
「あぁ⋯⋯そうなんだよね。勉強していた知識がすごく役にたったんだ」
「そうか? 知り合いに運よく一人白波に入れた人間がいる。
こんなご時世でな。
だが良いとこの大学を出たからといってどうにかなる業務ではないんだそうだが?
通帳をたかが15歳の子供に渡すなんて、何かとんでもない事をしたかと父ちゃんは思ったわけだ」
まぁ間違ってはないか。
そこは会長も理解しているだろう。
「誓ってしてないよ。投資専門の勉強をしていたりして、たまたま俺の予想が当たったってだけだよ。ちょくちょくこれからも力を貸してほしいって」
数秒、無言の眼差しが突き刺さってくる。
魔王なんかよりも凄いんじゃないか?これ。
なんか久しぶりだなぁ。
家族独特の暖かさの混じったこの顔を見るのは。
「⋯⋯そうか。疑って悪かったな。うちの湊翔は天才なのかもしれないな」
「やめてよ。天才じゃない。この家を少しでも良くしたくて勉強しただけなんだから」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
「ちなみに幾ら入ってた?」
そう言うと父の顔が険しい。
こりゃ金額までも見たな。
「数億くらい?」
「⋯⋯知っているのか?」
「まぁ白波の会長さんに言ったからね。損害と対等になるほどの金額を用意してくれって。命と同等の価値としては当然でしょ?ってね」
まぁ取引の内容は知らないだろうし、適当こいとく。
「うちの息子はどこまで勇敢なんだ。
⋯⋯ふぅ、分かった。これは湊翔にしっかりと手渡す」
大人としては複雑なレベルの溜息だろう。
常人からすれば、宝くじが当たったようなレベルの金額を息子が吹っかけて手に入れた訳だからな。
しかも相手は白波。
常識外から何をやってくるかわからん相手でもある。
「父さん、母さん」
なんだよ。折角楽しんで朝食かと思ったのに──俺は。
「湊翔、お前」
「幾らかはもちろん貰う。けど、これは──借金に当ててほしいんだ」
「駄目よ!これはそーちゃんが手に入れたお金でしょ?」
「分かってるよ。だけど」
ーーははは! 湊翔ですか?うちの子はね?東大? もっと上のレベルに行けるほどの天才なんですよ!ええ!ぜひ!
ーーうちのそーちゃんは良い子なんですぅ!自慢の息子でっ!何かあったらそーちゃんがなんだって解決してくれるんです! だから幸せです!
ーーお、お兄。い、いつも⋯⋯ありがとうっ!
ーー湊翔お兄ちゃん! 今度泥団子作ろ!
ふと聞こえる──過去の家族の声。
浮かんでくる。鮮明な記憶と共に。
「もう──幸せは十分に貰ったから」
今の俺の口から出るのは、こんな言葉しかなかった。
これは、向こうでは一切貰うことのなかった感情だ。
恐怖、畏敬、支配。
何でもできる自分が、唯一持つことのできなかった⋯⋯いや、持つことすら許されなかった感情と言葉だ。
「俺は──」
そう。地獄を見た。
『お母さん、なんで夜中いないの?』
必死に繕った笑顔。
見る度に悲壮感漂う母を、忘れられない。
『湊翔、今日の夕飯はな!』
そう。知ってる。
お父さんとお母さんは、食べてない日の方が多かった事も。
トイレで空きっ腹で吐きそうになっているのを見た。
それでも俺達の前では絶対に悲しい顔を見せなかったし、出したら駄目だということも理解していただろう。
それが分かった自分は、苦しかった。
でも自分にはどうすることもできなかった。
金もなければ人脈もない。
だから、どうにかしてこの家を救う為には受験をするしかないって。
ーーあら、伊崎さんまたお風呂に入ってないですって?
『あはは。すいません』
悪態をつかれているのに必死に謝る母を見た。
必死に笑ってなかったことにする父を見た。
同じ家族がそんな目で見られているのに、どこの人間が耐えられるのだろう。
だから俺はどうにかしてやろうと必死に受験勉強を頑張った。
南、拳哉。
俺が。俺が受験を成功させて、就活を頑張れば、絶対にもうそんな思いをさせる必要はないって。
だが、運命がそうさせてくれなかった。
「湊翔⋯⋯」
「だから、これはうちが普通の生活を出来るようにするために使って。親とか子とか、関係ないでしょ?」
過去では言えなかったことを、過去の自分を清算するとか、何でもいい。
──今言うんだ。
「知ってるよ? 父さんも母さんも、ご飯を食べれていなかったことも。
拳哉と南は俺の邪魔にならないように家ですら声を潜めてた事も、ご飯の時はなるべく笑顔でいようって頑張ってたのも。全部知ってる。
嬉しい。凄い嬉しいよ。だけど、それじゃみんなが幸せにならない。
だから、どんだけお金がかかってもいい。
借金を返して、みんなで普通の部屋に引っ越して、普通の生活をしようよ。
その為なら俺は───」
少し感情的になっているのは分かってる。
だが抑えられん。
今の俺だからではなく、過去に引っ張られているのだから。
あの時には、言えなかったことだから。
今なら、俺は言える。
「世界中の人間を殺してでも生活出来るようにするから」
「そ、そーちゃん⋯⋯」
「知らないよ。俺にとっては、ここにいる家族が全てだもん」
顔を覆って泣く母と、黙って俯く南と拳哉。
そして、無表情で見上げる父。
「俺は、その意見には反対だ」
「父さんはそう言うだろうね」
「だがな湊翔──」
父は、恥を忍んだのか。
一拍。
間が空いて、その場で額をつけて俺に頭を下げた。
「そんなお前が誇らしく思う」
母達には見えていない死角で握りしめた拳が、今まで誰にも言えなかった想いを押し殺していたのだと、俺は見逃さなかった。
過去ではそんな事すら考えていると気付いたのは、かなり後の事だったから、俺はなんとも言えない顔をしていた。
親というのは大変だな。
「パパ」
「あなた」
「俺には、決して出来ない。だからこうしてみんなに迷惑もかけているし、報いだと思っている。
だから、すまない──湊翔。
そして、心から⋯⋯ありがとう」
「これは、俺が貰った幸せの価値だから。こんな金、いくらでも増やすから。だから、だから──」
「いいのよそーちゃん! そんなこと言わなくても! ごめんねぇ!何もできないママで」
「うわーん!!! お兄ちゃんー!」
「お兄!!」
ガバッとテーブルなんてひっくり返して抱き合う俺達。
弁当、ひっくり返ってるし⋯⋯なんて野暮か。
「これが家族だよな⋯⋯そうだよな」
ぼそっと呟く声すら聞こえない。
母に感化された二人も泣き始め、みんなで号泣してる。
今は、今回は──なんとか少しは盛り返せただろうか。
黙って男泣きを見せる父を見て、少し安堵した。
そしてその後、弁当がひっくり返ったのをみんなで拾って食べたのは、10年後には悲しいモノではなく──間違いなく良い思い出になるだろう。
まさか、自分が半泣きするとはな。
俺もまだまだ人間辞めてなかったみたいだ。
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チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双!
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