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国内無双編
理解できない怪物
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俺は石田の概要を銀から受けていた。
石田龍司。
父親は元プロボクサー。
天性の能力で日本ランカーまで一瞬。
練習はほぼしていないのにもかかわらず当たり前のように試合に勝っては、帰りに妻がいるのに愛人のような存在と一試合して──ましてや妻を他の男に使わせるような糞男だったらしい。
だが、容姿は良く、それ以外は普通に良い人間だったと書かれている。
性に奔放で、が、両親には家を買ってあげたり、身内での食事の場では全部金を出したりなど、妻の態度以外はほとんど完璧に近い人間だった。
そんな遺伝子を受け継いでいる石田は、ほとんど何もしないで地元では喧嘩で負け知らず。
その後挑戦としてプロテストを受ける。
⋯⋯圧勝であった。
しかし受けてしまうと色々アレなので、相手がぶっ倒れているにもかかわらず棄権してその場を去ったということで伝説になっているそうだ。
未だに名言になっているそうだ。
"こんな所カスでも出来ると"。
そんな奴だ──誇りがあるだろう。
「では、開始!」
さぁ、石田。
お前は怪物と相対した時──逃げるか?
⋯⋯それとも闘うか?
座りながら俺は石田を再度品定めするように見下ろしていた。
「始まったな」
「あぁ」
石田はその場で軽快な足取りでボクサーの動きを見せながら星の様子を窺う。
しかし肝心の星は構える事もせずに、ただ棒立ち。
傍から見れば超ガタイの良いプロとただの小学生くらいの差が見て取れる程。
誰であっても、答えを知らない人間は石田に全ツッパではないだろうか。
──さぁ。
「動いた」
石田が両手で構えながら進む。
一気に距離を詰め、挨拶代わりと言わんばかりにジャブを出そうとした時──一瞬石田の瞳が揺れ動いた。
「⋯⋯なんだ?」
銀が戸惑っている。
出そうとした途端にバツンと後ろに下がり、何やらもじもじしだした。
「ハハハッ⋯⋯」
「なんだ大将、何が起きてるんだ?」
さぁ石田。こっからが本番だぞ?
怪物にどう戦う?
どう対処する?
*
最初は伊崎さんの言ってる事が全く理解できなかった。
本人的にも適当なところがある。
あの時俺を指名したのだって、近くに俺しかいなかっただろうからだと、今でも思ってる。
恩恵があるから悪口を言う気にもならないけど。
しかし俺からすればどうしても文句も言いたくなってしまう。
コレは違うだろう。
目の前に立ってる中坊。
傷だらけで、喧嘩すらしたことなければ壁にすら拳をぶつけたことが無いような肌が晒されている。
俺は虐められている側に問題があると思うタイプだ。
殺られる前にやらないからそうなる。
そういうのは舐められたら終わりだ。
そんな事も知らない子供が大人になって生き残れる訳がない。
見せてやる。
地元で生き残って来た男って奴を。
ステップをとって、とりあえず試しに挨拶代わ──
距離を詰め、奴を見た瞬間の事だった。
グワァァッと。何かが蠢く感覚。
全身が。
「⋯⋯⋯⋯」
──全身が。
「⋯⋯⋯⋯」
⋯⋯⋯⋯全身が。
身の毛が全て逆立った。
触れてはいけないモノというのはこういうものなのかと理解らせられたというべきか。
ただヤツはこちらを見ていただけだ。
まるで胸ぐらでも掴まれているような無防備で無抵抗な状態で。
ただ、違うのは──まるで待っているような眼をしていた。
真っ暗な空間から、扉から入ってきた俺を、見ているような⋯⋯。
本当に触れたらまずいナニカを起こしてしまったような気がして。
「⋯⋯ッ!」
思わず、距離を取った。
いや、取ってしまった。
「ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯ハァ」
なんだ?
隙だらけなのに。
"俺を待ってる"。
*
「なんだ?あれは⋯⋯大将」
人は自分が理解できる言葉で現象や状況を翻訳する。
だから口論や戦争が起きるわけで。
それを反射神経や動体視力という括りで判断するが、そんな次元にこういう人間はいない。
ありえない。
そう。ありえないのだ。
本来人が繰り出す拳を"予測"し、それを元に"次"はどう動くのか、傾向を読む。
プロのボクサーも例外ではないだろう。
素人とプロの差はざっくり言えばそのサンプルの数が桁違いに多い。
ある程度の傾向を判断し、そして対策を考える。
だが怪物は違う。
"待って"──
──"見る"。
動体視力?
反射神経?
違う。そんな言葉が使われる人間ではない。
単純な才なんてものではない。
時間だ。
アイツの眼は──時間の密度が違う。
つまり、生きている世界が違う。
流れている時間が違う。
ーードスッ!
一発。石田が勇気を振り絞って踏み込みだして振りぬいたのを顔面近くまで拳が来たのを"見て"、"避けた"。
そしてその反撃の一打が鳩尾に入る。
しかし、効くが体格差で耐えれている。
「っ!クソッ──」
ーードスッ!
フック。綺麗なスイングだ。
だがそれも避けられ鳩尾に入る。
「クッ!」
そう。俺が教えたのは──。
────
──
─
「いいか、避けたらココを狙え」
星の鳩尾辺りを軽く掌で叩いて言う。
「え?構えとかじゃないの?」
「ん? お前に構えは要らん、余計な物にしかならない」
「え、ステップみたいなのは?」
「自分から闘いたい人間じゃないだろ?余計なものだ」
「そういうものなの?」
「あぁ。お前は来た攻撃を迎撃して同じ場所目掛けて叩き続ければいいんだ」
────
──
─
「ぁ⋯⋯く⋯⋯」
構えはとっている。
だが、石田の顔を見れば一目瞭然。
顔が答えを物語っている。
脂汗が流れ、尖らせている唇を見れば誰だってわかるだろう。
「⋯⋯⋯⋯」
ここでやられまいとブルブルしながら構える石田と、棒立ちでなんでそんな状態なのか理解できていない星。
構図は変わらないのに、恐らく石田は最悪な気分だろう。
星が俺を見上げる。
なんでこの人まだやるの?と言いたげに。
笑わずにいられない。
目の前の大人はやられまいとしているのに、怪物は理解できていないのだから。
だから俺は分かりやすく座りながら拳を構えて打てと数回打ち込むのを見せる。
すると一瞬眉をひそめては口がえ?と言っている。
だからやれともう一回教えてやる。
俺は見なくても結果が分かるので、そのまま立ち上がって背を向けた。
「大将──」
バタン。と背後で倒れる音が聞こえたが、俺はこれからの事を考えると興奮して夜も眠れない。
さて、何を教えてやろうかな。
石田龍司。
父親は元プロボクサー。
天性の能力で日本ランカーまで一瞬。
練習はほぼしていないのにもかかわらず当たり前のように試合に勝っては、帰りに妻がいるのに愛人のような存在と一試合して──ましてや妻を他の男に使わせるような糞男だったらしい。
だが、容姿は良く、それ以外は普通に良い人間だったと書かれている。
性に奔放で、が、両親には家を買ってあげたり、身内での食事の場では全部金を出したりなど、妻の態度以外はほとんど完璧に近い人間だった。
そんな遺伝子を受け継いでいる石田は、ほとんど何もしないで地元では喧嘩で負け知らず。
その後挑戦としてプロテストを受ける。
⋯⋯圧勝であった。
しかし受けてしまうと色々アレなので、相手がぶっ倒れているにもかかわらず棄権してその場を去ったということで伝説になっているそうだ。
未だに名言になっているそうだ。
"こんな所カスでも出来ると"。
そんな奴だ──誇りがあるだろう。
「では、開始!」
さぁ、石田。
お前は怪物と相対した時──逃げるか?
⋯⋯それとも闘うか?
座りながら俺は石田を再度品定めするように見下ろしていた。
「始まったな」
「あぁ」
石田はその場で軽快な足取りでボクサーの動きを見せながら星の様子を窺う。
しかし肝心の星は構える事もせずに、ただ棒立ち。
傍から見れば超ガタイの良いプロとただの小学生くらいの差が見て取れる程。
誰であっても、答えを知らない人間は石田に全ツッパではないだろうか。
──さぁ。
「動いた」
石田が両手で構えながら進む。
一気に距離を詰め、挨拶代わりと言わんばかりにジャブを出そうとした時──一瞬石田の瞳が揺れ動いた。
「⋯⋯なんだ?」
銀が戸惑っている。
出そうとした途端にバツンと後ろに下がり、何やらもじもじしだした。
「ハハハッ⋯⋯」
「なんだ大将、何が起きてるんだ?」
さぁ石田。こっからが本番だぞ?
怪物にどう戦う?
どう対処する?
*
最初は伊崎さんの言ってる事が全く理解できなかった。
本人的にも適当なところがある。
あの時俺を指名したのだって、近くに俺しかいなかっただろうからだと、今でも思ってる。
恩恵があるから悪口を言う気にもならないけど。
しかし俺からすればどうしても文句も言いたくなってしまう。
コレは違うだろう。
目の前に立ってる中坊。
傷だらけで、喧嘩すらしたことなければ壁にすら拳をぶつけたことが無いような肌が晒されている。
俺は虐められている側に問題があると思うタイプだ。
殺られる前にやらないからそうなる。
そういうのは舐められたら終わりだ。
そんな事も知らない子供が大人になって生き残れる訳がない。
見せてやる。
地元で生き残って来た男って奴を。
ステップをとって、とりあえず試しに挨拶代わ──
距離を詰め、奴を見た瞬間の事だった。
グワァァッと。何かが蠢く感覚。
全身が。
「⋯⋯⋯⋯」
──全身が。
「⋯⋯⋯⋯」
⋯⋯⋯⋯全身が。
身の毛が全て逆立った。
触れてはいけないモノというのはこういうものなのかと理解らせられたというべきか。
ただヤツはこちらを見ていただけだ。
まるで胸ぐらでも掴まれているような無防備で無抵抗な状態で。
ただ、違うのは──まるで待っているような眼をしていた。
真っ暗な空間から、扉から入ってきた俺を、見ているような⋯⋯。
本当に触れたらまずいナニカを起こしてしまったような気がして。
「⋯⋯ッ!」
思わず、距離を取った。
いや、取ってしまった。
「ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯ハァ」
なんだ?
隙だらけなのに。
"俺を待ってる"。
*
「なんだ?あれは⋯⋯大将」
人は自分が理解できる言葉で現象や状況を翻訳する。
だから口論や戦争が起きるわけで。
それを反射神経や動体視力という括りで判断するが、そんな次元にこういう人間はいない。
ありえない。
そう。ありえないのだ。
本来人が繰り出す拳を"予測"し、それを元に"次"はどう動くのか、傾向を読む。
プロのボクサーも例外ではないだろう。
素人とプロの差はざっくり言えばそのサンプルの数が桁違いに多い。
ある程度の傾向を判断し、そして対策を考える。
だが怪物は違う。
"待って"──
──"見る"。
動体視力?
反射神経?
違う。そんな言葉が使われる人間ではない。
単純な才なんてものではない。
時間だ。
アイツの眼は──時間の密度が違う。
つまり、生きている世界が違う。
流れている時間が違う。
ーードスッ!
一発。石田が勇気を振り絞って踏み込みだして振りぬいたのを顔面近くまで拳が来たのを"見て"、"避けた"。
そしてその反撃の一打が鳩尾に入る。
しかし、効くが体格差で耐えれている。
「っ!クソッ──」
ーードスッ!
フック。綺麗なスイングだ。
だがそれも避けられ鳩尾に入る。
「クッ!」
そう。俺が教えたのは──。
────
──
─
「いいか、避けたらココを狙え」
星の鳩尾辺りを軽く掌で叩いて言う。
「え?構えとかじゃないの?」
「ん? お前に構えは要らん、余計な物にしかならない」
「え、ステップみたいなのは?」
「自分から闘いたい人間じゃないだろ?余計なものだ」
「そういうものなの?」
「あぁ。お前は来た攻撃を迎撃して同じ場所目掛けて叩き続ければいいんだ」
────
──
─
「ぁ⋯⋯く⋯⋯」
構えはとっている。
だが、石田の顔を見れば一目瞭然。
顔が答えを物語っている。
脂汗が流れ、尖らせている唇を見れば誰だってわかるだろう。
「⋯⋯⋯⋯」
ここでやられまいとブルブルしながら構える石田と、棒立ちでなんでそんな状態なのか理解できていない星。
構図は変わらないのに、恐らく石田は最悪な気分だろう。
星が俺を見上げる。
なんでこの人まだやるの?と言いたげに。
笑わずにいられない。
目の前の大人はやられまいとしているのに、怪物は理解できていないのだから。
だから俺は分かりやすく座りながら拳を構えて打てと数回打ち込むのを見せる。
すると一瞬眉をひそめては口がえ?と言っている。
だからやれともう一回教えてやる。
俺は見なくても結果が分かるので、そのまま立ち上がって背を向けた。
「大将──」
バタン。と背後で倒れる音が聞こえたが、俺はこれからの事を考えると興奮して夜も眠れない。
さて、何を教えてやろうかな。
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