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出発
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「お前ら⋯⋯一体何したらそんな痣だらけになるんだ?」
「「コイツが」」
朝から騒がしいギルド内の酒場。
リドルの前でおこちゃま二人が互いに相手を指差し、コイツのせいだと押し付けている絵面があった。
「はぁ? お前が勝手に送ったのが原因だろうが」
「お前が言うことを聞かないから」
「待て待て。分かったから。とりあえず、落ち着け」
そもそも俺がなんで若者二人を宥めてやらんといけないのだ。
眉間をつまみ、リドルはため息混じりにそう内心呟く。
「今日出発するのに、喧嘩なんてしておるのは流石にやめておけ」
戦争中に喧嘩なんて最悪もいいところだ。
リドルはなんとしてもコイツらを止めねばと続けようとしたところで、一人の帯剣している男が中央に立つ。
『では、出発する!!』
力強い声でそう発すると、全員空気は一変し、ササッと外へと出始める。
──伯爵騎士団。
彼はかなり強い権力を持っており、誰も反抗などしようものなら一瞬で処罰されてしまう。
「行くぞ、二人共」
「「あぁ」」
ボソボソ何か言いながら、結局全員外に出たのである。
くっそ。
勝手に提出しやがって。これで下手に実績など上乗せなどされたら、最悪ルートまっしぐらじゃねぇかよ。
今アイツらがいない内に⋯⋯。
どうにか⋯⋯おっ!
「すいません!」
「ん?どうした?冒険者の少年」
発見したのは、一人の若い騎士。
「いや、実は提出した配属先を間違えまして」
「規定では後からの変更は認められていないが」
「そうなんですが、ギフトや能力的にまずいと周りに念を押されまして⋯⋯」
「むぅ。なら仕方ないか。下手に君みたいな若者が死ぬのは私としても寝覚めが悪いからな」
俺の考えとしては、補給部隊で頑張る姿を見せれば、この意見も通ると思ったからだ。
「一応こう見えても力はあるんですよ!」
食糧が入った樽を軽々と上げているところを騎士の男に見せつける。
補給部隊はあまり良い人材が揃っていない。
こういう所を見せ付ければ、さすがに嫌な顔をするとは思えないが。
「ほぉ⋯⋯確かにそれはかなりの力になりそうだな」
「そうなんです。なので前線の方へ行けるのかなぁなんて思っていましたが、周りの方々を見てそれはお門違いなんだと理解せざるを得ないのかなぁなんて思った訳なんです」
へへへと、頭をポリポリかいて腑抜けている演出をし、なんとか補給部隊へと移行する事に成功したのである。
「あっ、ノア先輩!」
「ん?」
補給部隊で早速荷物を運んでいると、知らない少年に声をかけられた。
もっとも、俺も見た目は成人したての若者なんだが。
「この間はありがとうございました!」
「あぁ。あの時の」
この間血抜きを教えた少年くんじゃないか。
俺も記憶力が落ちたもんだ。
「少年はパーティーの参加なんじゃないのか?」
「本当ならそうなんですが、自分、修行しなきゃと思ったんです!」
⋯⋯ん?うん。
「⋯⋯良いこと⋯⋯なんじゃないか?」
「はい! それでここに配属すると予想して、ノア先輩を見学させてください!」
「なぜ俺?」
俺なんかいい所なんて見せてないだろ。
ギルドで可愛い女の子が居たらアリィと指差してほくそ笑んだり、名物を見れたりしたら手を叩いて笑ったりしてるだけなはずだったがな。
「ノア先輩の姿を見て、俺考え変わりました!」
「⋯⋯っごめん。全く話が読めないんだけど」
お、意外とこの樽重いな。
人でも入ってるんじゃないか?
「俺、大手に入ればすぐに強くなれるって思ってたんです」
「おいしょ⋯⋯。別に、間違ってはないんじゃないか? 大手は環境が違う。ハイレベルな周りにハイレベルな装備、人材も良い人間が揃ってる。その中で戦う経験は、何事にも代えられない物だと思うが?」
俺もあったぁ。オンド達にパーティーに誘われた時なんかは、本気で焦った。
必死に目立たないように隠れてたつもりだったんだがな。
「ノア先輩は蹴ったんですよね?」
「⋯⋯よく知ってるな。オンドにでも聞いたのか?」
元気よく縦に頷く少年。
あいつもベラベラ人に喋りやがる。
「ま、カッコつけるのは止めだ。ただ俺は⋯⋯程々が良いんだよ」
「程々⋯⋯ですか?」
「だってさ、この仕事も、いくら頑張っても貴族様の一言で全ておじゃんになる事だってある。金も返金してこないのにもかかわらずだ。そうだろ?」
「そう⋯⋯ですね」
「冒険者もそう。頑張りすぎたところで、死んだらそこまで。楯突いてもそこまで。今の話だって、貴族様の耳に入ったら一発で死ぬだろ?」
「不敬罪も成り立つかもしれません」
「だろ? 才能があり過ぎても地獄だし、無さすぎても地獄だ。別に俺自身、自分が特別なんて思った事もないが、目立ったら終わりだ」
そう少年を見ると、目が呆れている。
なんか不快だな。
「なんだその顔は」
「いえ、先輩⋯⋯天然ですか?」
「なわけないだろ? 何言ってんだ」
「は、はぁ⋯⋯」
「まぁ要するに、最適な力と最適な位置にいるだけで、世の中何とかなるってことだよ。少年は今、その力を得るという場所にいるだろうが、行き過ぎは毒となる。この世は権力で変わるなんて思ってるやつが一定層いるが、実はそんな事はない」
「違うんですか?」
「全くという事ではないが、ほぼ違う」
「じゃあ⋯⋯どういう事ですか?」
最後の荷物を入れた俺にそう訊ねる少年。
キラキラな瞳が眩しい。
「権力というのは、強さの上に成り立っている」
「⋯⋯はい」
「つまり、そいつらより強ければどうということはない。だから最適な強さと立ち位置が必要なんだ」
「⋯⋯?」
「ま、いつか分かるさ」
「「コイツが」」
朝から騒がしいギルド内の酒場。
リドルの前でおこちゃま二人が互いに相手を指差し、コイツのせいだと押し付けている絵面があった。
「はぁ? お前が勝手に送ったのが原因だろうが」
「お前が言うことを聞かないから」
「待て待て。分かったから。とりあえず、落ち着け」
そもそも俺がなんで若者二人を宥めてやらんといけないのだ。
眉間をつまみ、リドルはため息混じりにそう内心呟く。
「今日出発するのに、喧嘩なんてしておるのは流石にやめておけ」
戦争中に喧嘩なんて最悪もいいところだ。
リドルはなんとしてもコイツらを止めねばと続けようとしたところで、一人の帯剣している男が中央に立つ。
『では、出発する!!』
力強い声でそう発すると、全員空気は一変し、ササッと外へと出始める。
──伯爵騎士団。
彼はかなり強い権力を持っており、誰も反抗などしようものなら一瞬で処罰されてしまう。
「行くぞ、二人共」
「「あぁ」」
ボソボソ何か言いながら、結局全員外に出たのである。
くっそ。
勝手に提出しやがって。これで下手に実績など上乗せなどされたら、最悪ルートまっしぐらじゃねぇかよ。
今アイツらがいない内に⋯⋯。
どうにか⋯⋯おっ!
「すいません!」
「ん?どうした?冒険者の少年」
発見したのは、一人の若い騎士。
「いや、実は提出した配属先を間違えまして」
「規定では後からの変更は認められていないが」
「そうなんですが、ギフトや能力的にまずいと周りに念を押されまして⋯⋯」
「むぅ。なら仕方ないか。下手に君みたいな若者が死ぬのは私としても寝覚めが悪いからな」
俺の考えとしては、補給部隊で頑張る姿を見せれば、この意見も通ると思ったからだ。
「一応こう見えても力はあるんですよ!」
食糧が入った樽を軽々と上げているところを騎士の男に見せつける。
補給部隊はあまり良い人材が揃っていない。
こういう所を見せ付ければ、さすがに嫌な顔をするとは思えないが。
「ほぉ⋯⋯確かにそれはかなりの力になりそうだな」
「そうなんです。なので前線の方へ行けるのかなぁなんて思っていましたが、周りの方々を見てそれはお門違いなんだと理解せざるを得ないのかなぁなんて思った訳なんです」
へへへと、頭をポリポリかいて腑抜けている演出をし、なんとか補給部隊へと移行する事に成功したのである。
「あっ、ノア先輩!」
「ん?」
補給部隊で早速荷物を運んでいると、知らない少年に声をかけられた。
もっとも、俺も見た目は成人したての若者なんだが。
「この間はありがとうございました!」
「あぁ。あの時の」
この間血抜きを教えた少年くんじゃないか。
俺も記憶力が落ちたもんだ。
「少年はパーティーの参加なんじゃないのか?」
「本当ならそうなんですが、自分、修行しなきゃと思ったんです!」
⋯⋯ん?うん。
「⋯⋯良いこと⋯⋯なんじゃないか?」
「はい! それでここに配属すると予想して、ノア先輩を見学させてください!」
「なぜ俺?」
俺なんかいい所なんて見せてないだろ。
ギルドで可愛い女の子が居たらアリィと指差してほくそ笑んだり、名物を見れたりしたら手を叩いて笑ったりしてるだけなはずだったがな。
「ノア先輩の姿を見て、俺考え変わりました!」
「⋯⋯っごめん。全く話が読めないんだけど」
お、意外とこの樽重いな。
人でも入ってるんじゃないか?
「俺、大手に入ればすぐに強くなれるって思ってたんです」
「おいしょ⋯⋯。別に、間違ってはないんじゃないか? 大手は環境が違う。ハイレベルな周りにハイレベルな装備、人材も良い人間が揃ってる。その中で戦う経験は、何事にも代えられない物だと思うが?」
俺もあったぁ。オンド達にパーティーに誘われた時なんかは、本気で焦った。
必死に目立たないように隠れてたつもりだったんだがな。
「ノア先輩は蹴ったんですよね?」
「⋯⋯よく知ってるな。オンドにでも聞いたのか?」
元気よく縦に頷く少年。
あいつもベラベラ人に喋りやがる。
「ま、カッコつけるのは止めだ。ただ俺は⋯⋯程々が良いんだよ」
「程々⋯⋯ですか?」
「だってさ、この仕事も、いくら頑張っても貴族様の一言で全ておじゃんになる事だってある。金も返金してこないのにもかかわらずだ。そうだろ?」
「そう⋯⋯ですね」
「冒険者もそう。頑張りすぎたところで、死んだらそこまで。楯突いてもそこまで。今の話だって、貴族様の耳に入ったら一発で死ぬだろ?」
「不敬罪も成り立つかもしれません」
「だろ? 才能があり過ぎても地獄だし、無さすぎても地獄だ。別に俺自身、自分が特別なんて思った事もないが、目立ったら終わりだ」
そう少年を見ると、目が呆れている。
なんか不快だな。
「なんだその顔は」
「いえ、先輩⋯⋯天然ですか?」
「なわけないだろ? 何言ってんだ」
「は、はぁ⋯⋯」
「まぁ要するに、最適な力と最適な位置にいるだけで、世の中何とかなるってことだよ。少年は今、その力を得るという場所にいるだろうが、行き過ぎは毒となる。この世は権力で変わるなんて思ってるやつが一定層いるが、実はそんな事はない」
「違うんですか?」
「全くという事ではないが、ほぼ違う」
「じゃあ⋯⋯どういう事ですか?」
最後の荷物を入れた俺にそう訊ねる少年。
キラキラな瞳が眩しい。
「権力というのは、強さの上に成り立っている」
「⋯⋯はい」
「つまり、そいつらより強ければどうということはない。だから最適な強さと立ち位置が必要なんだ」
「⋯⋯?」
「ま、いつか分かるさ」
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