22 / 24
出発
しおりを挟む
「お前ら⋯⋯一体何したらそんな痣だらけになるんだ?」
「「コイツが」」
朝から騒がしいギルド内の酒場。
リドルの前でおこちゃま二人が互いに相手を指差し、コイツのせいだと押し付けている絵面があった。
「はぁ? お前が勝手に送ったのが原因だろうが」
「お前が言うことを聞かないから」
「待て待て。分かったから。とりあえず、落ち着け」
そもそも俺がなんで若者二人を宥めてやらんといけないのだ。
眉間をつまみ、リドルはため息混じりにそう内心呟く。
「今日出発するのに、喧嘩なんてしておるのは流石にやめておけ」
戦争中に喧嘩なんて最悪もいいところだ。
リドルはなんとしてもコイツらを止めねばと続けようとしたところで、一人の帯剣している男が中央に立つ。
『では、出発する!!』
力強い声でそう発すると、全員空気は一変し、ササッと外へと出始める。
──伯爵騎士団。
彼はかなり強い権力を持っており、誰も反抗などしようものなら一瞬で処罰されてしまう。
「行くぞ、二人共」
「「あぁ」」
ボソボソ何か言いながら、結局全員外に出たのである。
くっそ。
勝手に提出しやがって。これで下手に実績など上乗せなどされたら、最悪ルートまっしぐらじゃねぇかよ。
今アイツらがいない内に⋯⋯。
どうにか⋯⋯おっ!
「すいません!」
「ん?どうした?冒険者の少年」
発見したのは、一人の若い騎士。
「いや、実は提出した配属先を間違えまして」
「規定では後からの変更は認められていないが」
「そうなんですが、ギフトや能力的にまずいと周りに念を押されまして⋯⋯」
「むぅ。なら仕方ないか。下手に君みたいな若者が死ぬのは私としても寝覚めが悪いからな」
俺の考えとしては、補給部隊で頑張る姿を見せれば、この意見も通ると思ったからだ。
「一応こう見えても力はあるんですよ!」
食糧が入った樽を軽々と上げているところを騎士の男に見せつける。
補給部隊はあまり良い人材が揃っていない。
こういう所を見せ付ければ、さすがに嫌な顔をするとは思えないが。
「ほぉ⋯⋯確かにそれはかなりの力になりそうだな」
「そうなんです。なので前線の方へ行けるのかなぁなんて思っていましたが、周りの方々を見てそれはお門違いなんだと理解せざるを得ないのかなぁなんて思った訳なんです」
へへへと、頭をポリポリかいて腑抜けている演出をし、なんとか補給部隊へと移行する事に成功したのである。
「あっ、ノア先輩!」
「ん?」
補給部隊で早速荷物を運んでいると、知らない少年に声をかけられた。
もっとも、俺も見た目は成人したての若者なんだが。
「この間はありがとうございました!」
「あぁ。あの時の」
この間血抜きを教えた少年くんじゃないか。
俺も記憶力が落ちたもんだ。
「少年はパーティーの参加なんじゃないのか?」
「本当ならそうなんですが、自分、修行しなきゃと思ったんです!」
⋯⋯ん?うん。
「⋯⋯良いこと⋯⋯なんじゃないか?」
「はい! それでここに配属すると予想して、ノア先輩を見学させてください!」
「なぜ俺?」
俺なんかいい所なんて見せてないだろ。
ギルドで可愛い女の子が居たらアリィと指差してほくそ笑んだり、名物を見れたりしたら手を叩いて笑ったりしてるだけなはずだったがな。
「ノア先輩の姿を見て、俺考え変わりました!」
「⋯⋯っごめん。全く話が読めないんだけど」
お、意外とこの樽重いな。
人でも入ってるんじゃないか?
「俺、大手に入ればすぐに強くなれるって思ってたんです」
「おいしょ⋯⋯。別に、間違ってはないんじゃないか? 大手は環境が違う。ハイレベルな周りにハイレベルな装備、人材も良い人間が揃ってる。その中で戦う経験は、何事にも代えられない物だと思うが?」
俺もあったぁ。オンド達にパーティーに誘われた時なんかは、本気で焦った。
必死に目立たないように隠れてたつもりだったんだがな。
「ノア先輩は蹴ったんですよね?」
「⋯⋯よく知ってるな。オンドにでも聞いたのか?」
元気よく縦に頷く少年。
あいつもベラベラ人に喋りやがる。
「ま、カッコつけるのは止めだ。ただ俺は⋯⋯程々が良いんだよ」
「程々⋯⋯ですか?」
「だってさ、この仕事も、いくら頑張っても貴族様の一言で全ておじゃんになる事だってある。金も返金してこないのにもかかわらずだ。そうだろ?」
「そう⋯⋯ですね」
「冒険者もそう。頑張りすぎたところで、死んだらそこまで。楯突いてもそこまで。今の話だって、貴族様の耳に入ったら一発で死ぬだろ?」
「不敬罪も成り立つかもしれません」
「だろ? 才能があり過ぎても地獄だし、無さすぎても地獄だ。別に俺自身、自分が特別なんて思った事もないが、目立ったら終わりだ」
そう少年を見ると、目が呆れている。
なんか不快だな。
「なんだその顔は」
「いえ、先輩⋯⋯天然ですか?」
「なわけないだろ? 何言ってんだ」
「は、はぁ⋯⋯」
「まぁ要するに、最適な力と最適な位置にいるだけで、世の中何とかなるってことだよ。少年は今、その力を得るという場所にいるだろうが、行き過ぎは毒となる。この世は権力で変わるなんて思ってるやつが一定層いるが、実はそんな事はない」
「違うんですか?」
「全くという事ではないが、ほぼ違う」
「じゃあ⋯⋯どういう事ですか?」
最後の荷物を入れた俺にそう訊ねる少年。
キラキラな瞳が眩しい。
「権力というのは、強さの上に成り立っている」
「⋯⋯はい」
「つまり、そいつらより強ければどうということはない。だから最適な強さと立ち位置が必要なんだ」
「⋯⋯?」
「ま、いつか分かるさ」
「「コイツが」」
朝から騒がしいギルド内の酒場。
リドルの前でおこちゃま二人が互いに相手を指差し、コイツのせいだと押し付けている絵面があった。
「はぁ? お前が勝手に送ったのが原因だろうが」
「お前が言うことを聞かないから」
「待て待て。分かったから。とりあえず、落ち着け」
そもそも俺がなんで若者二人を宥めてやらんといけないのだ。
眉間をつまみ、リドルはため息混じりにそう内心呟く。
「今日出発するのに、喧嘩なんてしておるのは流石にやめておけ」
戦争中に喧嘩なんて最悪もいいところだ。
リドルはなんとしてもコイツらを止めねばと続けようとしたところで、一人の帯剣している男が中央に立つ。
『では、出発する!!』
力強い声でそう発すると、全員空気は一変し、ササッと外へと出始める。
──伯爵騎士団。
彼はかなり強い権力を持っており、誰も反抗などしようものなら一瞬で処罰されてしまう。
「行くぞ、二人共」
「「あぁ」」
ボソボソ何か言いながら、結局全員外に出たのである。
くっそ。
勝手に提出しやがって。これで下手に実績など上乗せなどされたら、最悪ルートまっしぐらじゃねぇかよ。
今アイツらがいない内に⋯⋯。
どうにか⋯⋯おっ!
「すいません!」
「ん?どうした?冒険者の少年」
発見したのは、一人の若い騎士。
「いや、実は提出した配属先を間違えまして」
「規定では後からの変更は認められていないが」
「そうなんですが、ギフトや能力的にまずいと周りに念を押されまして⋯⋯」
「むぅ。なら仕方ないか。下手に君みたいな若者が死ぬのは私としても寝覚めが悪いからな」
俺の考えとしては、補給部隊で頑張る姿を見せれば、この意見も通ると思ったからだ。
「一応こう見えても力はあるんですよ!」
食糧が入った樽を軽々と上げているところを騎士の男に見せつける。
補給部隊はあまり良い人材が揃っていない。
こういう所を見せ付ければ、さすがに嫌な顔をするとは思えないが。
「ほぉ⋯⋯確かにそれはかなりの力になりそうだな」
「そうなんです。なので前線の方へ行けるのかなぁなんて思っていましたが、周りの方々を見てそれはお門違いなんだと理解せざるを得ないのかなぁなんて思った訳なんです」
へへへと、頭をポリポリかいて腑抜けている演出をし、なんとか補給部隊へと移行する事に成功したのである。
「あっ、ノア先輩!」
「ん?」
補給部隊で早速荷物を運んでいると、知らない少年に声をかけられた。
もっとも、俺も見た目は成人したての若者なんだが。
「この間はありがとうございました!」
「あぁ。あの時の」
この間血抜きを教えた少年くんじゃないか。
俺も記憶力が落ちたもんだ。
「少年はパーティーの参加なんじゃないのか?」
「本当ならそうなんですが、自分、修行しなきゃと思ったんです!」
⋯⋯ん?うん。
「⋯⋯良いこと⋯⋯なんじゃないか?」
「はい! それでここに配属すると予想して、ノア先輩を見学させてください!」
「なぜ俺?」
俺なんかいい所なんて見せてないだろ。
ギルドで可愛い女の子が居たらアリィと指差してほくそ笑んだり、名物を見れたりしたら手を叩いて笑ったりしてるだけなはずだったがな。
「ノア先輩の姿を見て、俺考え変わりました!」
「⋯⋯っごめん。全く話が読めないんだけど」
お、意外とこの樽重いな。
人でも入ってるんじゃないか?
「俺、大手に入ればすぐに強くなれるって思ってたんです」
「おいしょ⋯⋯。別に、間違ってはないんじゃないか? 大手は環境が違う。ハイレベルな周りにハイレベルな装備、人材も良い人間が揃ってる。その中で戦う経験は、何事にも代えられない物だと思うが?」
俺もあったぁ。オンド達にパーティーに誘われた時なんかは、本気で焦った。
必死に目立たないように隠れてたつもりだったんだがな。
「ノア先輩は蹴ったんですよね?」
「⋯⋯よく知ってるな。オンドにでも聞いたのか?」
元気よく縦に頷く少年。
あいつもベラベラ人に喋りやがる。
「ま、カッコつけるのは止めだ。ただ俺は⋯⋯程々が良いんだよ」
「程々⋯⋯ですか?」
「だってさ、この仕事も、いくら頑張っても貴族様の一言で全ておじゃんになる事だってある。金も返金してこないのにもかかわらずだ。そうだろ?」
「そう⋯⋯ですね」
「冒険者もそう。頑張りすぎたところで、死んだらそこまで。楯突いてもそこまで。今の話だって、貴族様の耳に入ったら一発で死ぬだろ?」
「不敬罪も成り立つかもしれません」
「だろ? 才能があり過ぎても地獄だし、無さすぎても地獄だ。別に俺自身、自分が特別なんて思った事もないが、目立ったら終わりだ」
そう少年を見ると、目が呆れている。
なんか不快だな。
「なんだその顔は」
「いえ、先輩⋯⋯天然ですか?」
「なわけないだろ? 何言ってんだ」
「は、はぁ⋯⋯」
「まぁ要するに、最適な力と最適な位置にいるだけで、世の中何とかなるってことだよ。少年は今、その力を得るという場所にいるだろうが、行き過ぎは毒となる。この世は権力で変わるなんて思ってるやつが一定層いるが、実はそんな事はない」
「違うんですか?」
「全くという事ではないが、ほぼ違う」
「じゃあ⋯⋯どういう事ですか?」
最後の荷物を入れた俺にそう訊ねる少年。
キラキラな瞳が眩しい。
「権力というのは、強さの上に成り立っている」
「⋯⋯はい」
「つまり、そいつらより強ければどうということはない。だから最適な強さと立ち位置が必要なんだ」
「⋯⋯?」
「ま、いつか分かるさ」
48
あなたにおすすめの小説
最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます
わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。
一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します!
大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚
ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。
しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。
なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!
このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。
なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。
自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!
本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。
しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。
本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。
本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。
思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!
ざまぁフラグなんて知りません!
これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。
・本来の主人公は荷物持ち
・主人公は追放する側の勇者に転生
・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です
・パーティー追放ものの逆側の話
※カクヨム、ハーメルンにて掲載
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。
死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった!
呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。
「もう手遅れだ」
これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる