上 下
62 / 104
現在_特務課

特務課_6

しおりを挟む
「盛りだくさんですね」
「そうね。でも、現状で出来ることは限られているわ」

 有栖がどれから手を付け、何をどうしようかと考えていると、京が三本立てていた指を人差し指だけ残して、指揮棒のように小さく動かした。

「『ワクチン』がこちらにあるように振る舞う為に、警察との接触は可能な限り避けること。そして、明確な特定情報を得るまで目立った動きはしないで、このメンバー以外には口外せず秘密裏に捜査すること」

 前者はともかく後者は捜査条件として厳しい。情報収集は数多く集めて精査して質の良いものを選択するのが定石だ。これならスピーディに動けるが、同時に目立つことにもなるだろう。早く『ワクチン』を居場所を特定したいが、その条件が鈍足にさせている。

「これに関しては私と佐倉さんが動く。キャリアがある分、信頼できる情報筋も持っているはずだから」

 京の視線を受け、佐倉が頷く。多忙である彼も可能な限りでの協力は惜しまないでいてくれるようだった。

「となると、自分と反保はパスワードの解明ですか」
「僕も先輩も頭を使うのは苦手ですからね」
「後輩にさらりと馬鹿にされた」
「あっ……すみません」
「普通に謝らないでよ。余計に傷つくでしょ」

 有栖と反保のやりとりに京がくすり、と笑う。

「パスワードは二つの観点から捜査するべきね。一つは我孫子から得たパスワードのヒントから解明。もう一つは我孫子が殺害した人物――パスワードのヒントと『ワクチン』の更新を最後に行った人物ね。この男が周囲に何か話してなかったか……関係する人物を調べる」

 アース博士が口外していた線も調べることになるだろうが、それを言わなかったのは彼女よりもその被害者の男性の方が情報に関することを漏洩している可能姓が高いからだろう。

「自分は後者の方が性に合いますね、馬鹿なんで」
「もう、すみませんって……じゃあ、僕も得意ではないですがパスワードのヒントから当たってみます。それで無理そうなら先輩に合流で」
「そうね。それで、肝心のパスワードのヒントだけど、これがそうよ」

 そう言って、京は一枚の紙を差し出し、机に置く。デジタルでのやり取りは警察に監視され奪われたり、消去されたりする可能姓があるのでアナログな手法だった。
 紙には数個の単語が並んでおり、全員がそれを覗き込むように見つめていた。
しおりを挟む

処理中です...