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第二章_七日前

一色_2-1

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 外出の連絡を有栖と反保に入れたあと、一色は目的の場所へと向かった。
「さて、と」
 一色は目的地――桜華学園にたどり着くと校門の前で、少し気を引き締めた。彼が妙な緊張感を覚えるのは、ここが彼の娘が通う高校であることも要因の一つだろう。時刻は昼過ぎであり、午後の授業が始まっている時間なので娘に会うことはないと解っていてもその存在を意識しない、というのは無理な話だった。
 一色は桜花学園の校門を通り、受付へと向かうと事前にアポイントを取っていた時間と名前を告げた。

 ユースティティアでは桜花学園と最近でも業務で関わりがあった。
 一色の部下である有栖と反保がこの学園にイジメがあるという情報を得て、素行調査と以前から疑っていた裏金の調査を行ったのだ。
 結果としては、裏金の調査は上手くいかず、素行調査は想定外の結末を迎えた。しかし、その結果により問題のあった教員――それは学園長を含むのだが、その人事異動が行われ、学園の健全化が徐々に行われている。
 現在はその最中であり、一色は現状のヒアリング、ということで来訪したことになっている。

 一色は学園長室へと案内され、付き添ってくれた受付の女性がドアを開けてくれた。
「これは、これはどうも。ユースティティアさん」
 中に入ると一色を『現在』の学園長が席から立って、迎え入れてくれた。
「本日は対応して頂き、ありがとうございます」
「いえ、警察の方にも、ユースティティアの方にも現状を見てもらうことで、初めて健全化に向けた活動の意味がありますので」
 そう言った『現在』の学園長は爽やかに笑った。
 
『現在』の学園長は『以前』の学園長よりも若く……とはいえ、それなりの年配者ではあるが、過去に一般企業の社長をしていた人物だ。活力が溢れ出ている様子から年齢を感じさせないところがある。

 そこから二時間ほど、一色は学園長と桜花学園についてヒアリングとその回答の聴取を行った。
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