有栖と奉日本『翔べないツバサ』

ぴえ

文字の大きさ
58 / 86
第六章:名もなき毒

有栖_6-1

しおりを挟む
 有栖達は飛田から聞いたとおりの道順で走る。その道中では観客の熱狂する声が聞こえてきて、興業自体は順調に進んでいるようだった。しかし、それは京の推測が正しければ棚神選手が服毒する時間が迫っていることを示しており、そのことは彼女達の焦燥を煽る。

「急ぐよ、反保」

 少し後ろを走る反保にそう話しかけると、彼は頷く。しかし、次の瞬間、有栖より前方へと視線を向けて驚いた表情を見せた。

「先輩!」

 その声と同時に有栖も前方を向く。そこには――

「……中島さん」

 有栖達は進行方向にあった階段からすっと出てきて、塞ぐように中島が立ち止まる。有栖達も一定の距離をあけて立ち止まった。

「ここから先は通しません」

 中島は睨むように二人を見つめ、静かにそう言った。そこにはこれまで接したフレンドリーな様子はなく、明らかに敵対意識を二人に向けている。

「非常事態だとしても?」
「…………」
「何かに気づいていたんですね?」
「……付き人ですから。微かな変化も気づきますよ」
「当人の命に関わることですよ?」
「……貴女達には解りませんよ。だから――通しません」

 中島は腰を軽く落とし、手を広げて構える。これが彼のファイティングポーズなのだろう。

「先輩」

 後方から小さな声で反保が話しかけてきた。

「彼は僕が止めます。だから、先に進んでください」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...