有栖と奉日本『真夏のモンスター』

ぴえ

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 虹河原は三人に近づくと、
「反保緋桐をこちらに引き渡してください」
 強い威勢でそう言った。
「はぁ? 何で――」
 有栖が怪訝そうな顔をするが、一色が軽く彼女の頭を叩く。
「断る。それをする理由がない。彼はユースティティアが傷害で逮捕する」
「殺人事件で逮捕する方が正しく罪を償わせることができます」
「せやったら、奥で倒れてる田中って警察を逮捕するんやな。傷害及び殺人事件の重要な容疑者や」
「なっ――」
 虹河原は驚いた様子で、奥で手錠を掛けられている一人の警察がいることを確認した。
「証拠もないのに貴方の言うことを鵜呑みにするわけにはいかない」
「証拠はコレや」
 一色は先ほど反保から受け取ったスマホを見せた。そして、それを操作しようとすると――
「あれ? 有栖、これパスワード解る?」
「え? 知らないです」
 ロックされたスマホの画面に戸惑っていると、
「2175683です」
 反保がはっきりとそう言った。有栖と一色は驚いた表情を見せたあと、もう一度教えてもらいながらスマホを操作し、番号を押す。すると、スマホのロックが解除された。
「何で?」
 有栖が反保に尋ねる。
「さっき、あの警官が応援を呼ぶような電話をしているとき、ボクは意識があって、そのときに見てましたから」
「見てましたって……それだけで覚えてたの? そんなこと――」
「有栖、その話は後や。それより、コレや」
 一色はスマホの中の画像フォルダを開き、虹河原に見せる。そこには数々の傷害事件で襲われた女性の写真と殺人事件の現場の写真もあった。
「こ、これは……」
「傷害事件の被害者達の話をよく聞くと、スマホで写真を撮られたって証言がチラホラ出てきたんや。もしかしたら、犯人はその場を記念撮影してるんちゃうかと思ってな。まぁ、ビンゴやったわけや。殺人現場の写真なんて、完全に犯人しか撮れんやつやしな」
「…………」
 動かぬ証拠に虹河原は黙った。持ち主が田中でない可能性を提示することも可能だが、調べれば解ることを騒いでも無駄な抵抗だと理解しているのだろう。
「こうなった以上、警察に反保を渡すわけにはいかん。裏で操作されて責任逃れの為に、反保に全ての罪を背負わせる可能性がある」
「そんなことはしない!」
 一色の言葉を虹河原が否定する。しかし、彼は首を横に振り優しく、寂しそうに、そして、諭すように言い返した。
「解るよ、聖――いや、虹河原。俺も警察にいたんやから、解る」
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