有栖と奉日本『真夏のモンスター』

ぴえ

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「何で、傷害事件の犯人が二人いると気づいたのですか?」
 虹河原は俯きながら一色に尋ねる。言葉には悔しさが色濃く混じっているのが解った。
「文字では傷害事件って一括で表現できるけど、その中身を詳細に調べれば相違点は多くあった」
 一色は調査する上で書面上では似ているものでも被害者に会い、一つ一つ丁寧に調べた。そうすることで多くの情報を得れたのは彼の捜査に対する姿勢や誠意さ、そして、被害者に寄り添う気持ちが伝わったことにより相手が話してくれたのだ。
「男性側の被害者は襲われてはおるけど、当人や周囲から詳細を聞けば、その前段階で自分達から喧嘩をふっかけたり、暴力を振るったりしとうことが多かった。まぁ、そんなことしとるから被害にあったことを中心に言うて自分達の非は可能な限り隠してたって感じやな。あと、傷も浅いんが特徴的やった」
 一色はスマホをポケットに入れ、指を一本立てて話す。そして、続けて、もう一本の指を立て、
「その一方で、女性側の被害者は犯人が自ら襲っとるし、怪我も深い。更にスマホで写真を撮ってるんも女性を襲ってるときだけやった。そこまで違うと模倣犯とかの別の犯人像が浮かぶやろ」
 さらさらと、整然と語る彼に虹河原は反論をしなかった。充分で適切な情報を理解できる速度で話されていることを相手も理解している。そこには話し手と聞き手の信頼関係が存在していた。
「まぁ、せやけど、推察の域を出なかったのはあの犯人が上手いことやっとったからやな。ちゃんと、反保のアリバイが証明しにくいときを狙って犯行を実施してた。だけど、それが完全に崩れたんは――」
 そこで一色は小さく笑って、虹河原に教えた。
「飛田のおかげなんや」
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