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第一章:緞帳を前に

アリス

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 あぁ、忙しい、忙しい。本番は明日からだというのに、忙しい。
 巡回は一通り終わりましたが、このあとは――

「しかし、面倒なことになってもうたなぁ」

 何かを考えながら独り言を呟く男性が、ワタシとぶつかりそうになったので、こちらが緊急で停止しました。
「あぁ、悪いな。邪魔したな」
 はい、邪魔です。ですが、ワタシは優秀なのでそのような発言はしません。
 顔を上げたワタシは相手の顔認証を実施します。
 認証開始――既に確認済み。一色誠であることを再認識。
「困ってるし、ロボットに助けてもらおかな」
 発音の所々に冗談を話す人間のパターンと多くが一致しました。つまり、これは冗談でしょう。
 しかし、優秀なワタシはそれを指摘しません。
「このあとはプライオリティの高いタスクがあります。ワタシ以外のロボットにヘルプを頼むことをオネガイいたします」
 ワタシの言葉に一色という男は笑います。
「そうか、止めて悪かったな。行ってええよ」
 その言葉を聞いて、ワタシは次のタスクを実行する為に移動を再開しました。
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