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第四章:三極-2-

音切_4-1

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「あー、痛ぇ」
 音切は掌で鼻血を拭う。そして、付着した赤色を見て、彼は笑った。
「ふひ、ふひひ……いいねぇ」
 自身の血を見て、音切は興奮していた。この高揚した気分のまま暴れたい衝動に駆られたが、それを彼は制御する。
 ぎょろり、と反保を睨む。油断することなくこちらを見据えている。刺した太腿にダメージはなさそうだった。

 ――ユースでは見たことない奴だったし、若いってことで甘くみてたな。

 舐めるように音切は反保を睨む――いや、観察していた。それは彼の中の油断を消し、相手を切り刻む為に必要なことだと言い聞かせる。
 冷静なわけではない。衝動は爆発しそうだった。しかし、彼には彼で詩島組の為に成すべきことを理解している。遊びに来たわけではないのだ。
「ちょっと正攻法で戦いすぎたな」
 音切はまたスーツから複数のナイフを取り出す。
「さぁ、いくぞ、ゴラァ」
 音切は手に持っていたナイフを次々に反保へと投げる。そして、そのまま接近する為に駆けだした。
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