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第四章:三極-3-

有栖_4-9

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 有栖が背後に人の気配を感じたので振り返ると、そこにはアース博士の姿があった。彼女はじろり、と有栖を睨むと、
「うるさい」
 と、不機嫌そうに文句を言った。
「失礼しました」
 そう返して、有栖は伏見の両手に手錠を掛ける。
「終わったのか?」
「はい、一応」
「一つ聞きたいことがある。良いか?」
「はぁ……」
 珍しく、アース博士が話しかけてくるので、有栖としては何を言われるのか、と少し怖かった。先程の戦闘よりも断然に。
「私を無理矢理にでも逃がす方法や指示をしなかったのは何故だ?」
 有栖はアース博士に逃げろ、とは言ったがそれはブラフだった。そのことをアース博士も気づいたのだろう。
「言っても聞かないでしょ?」
 そう答えて、有栖は笑う。
「自分はユースティティアとしての役割を果たしただけです。貴女には貴女の役割がある。その役割を果たす為に、逃げる必要があれば勝手に逃げるだろうし、そうじゃなきゃテコでも動かないだろう、と思っただけです」
「役割……研究か?」
「知りませんよ。自分自身で決めるもんでしょ?」
「自分で決める……か」
 アース博士は天を仰ぎ、呟く。その様子を少し不思議そうに有栖は見ていたが、
「では、自分は報告とかがあるので」
 併せて、他の階の様子も気になるので立ち去ろうとしたが、
「有栖」
 アース博士が彼女を呼び止めた。
「何でしょう?」
「礼を言う。ありがとう」
 有栖の顔を見て、そう言うとアース博士は部屋に戻っていった。予想外のことに呆気に取られている有栖を残して。
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