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第四章:三極-3-
有栖_4-8
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「勝てないけど、まだ戦うの?」
立ち上がろうとする伏見に、有栖は警告する。
「知っている。だが、諦めるわけにはいかない」
「そっか……」
事実、短刀を持っていない伏見に対して、体術では負ける要素がないことを彼女は確信していた。リスクのない相手に対して、時間をかける必要もない。有栖は一応、距離を取っていた相手に一歩ずつ近づく。
「一つ、聞きたいことがある」
「何?」
「アマツカ、という男を知っているか?」
「知らない、誰?」
「そうか……ちょっと気になっただけだ」
伏見は会話を終えると、ボクサーのように拳を握り、構えた。彼の思考は既に切り替わっていて、アース博士の誘拐は諦めている。時間をかけて、体力を回復し、逃げる。もしくは、同行してきた部下が逃げる時間を稼ぐことだった。
だから、伏見が選択したのは皮肉にも、先程の有栖と同じ戦い方だった。ジャブを放ち、距離を取り、戦う。それしかなかった。
有栖が近づいて来る。伏見も自身の間合いについては理解している。拳が届く距離になると、ステップイン――ジャブを繰り出した。
しかし、伏見が拳を放った瞬間、ほぼ同時に彼の左腕に蛇のように何かが絡みつく。そして、ガキン、と顔面が打ち抜かれた。
「……化け物め」
有栖が伏見のジャブに対して、クロスカウンターを放ったのだ。もちろん、ダメージがあっても彼のジャブは遅くない。ただ、有栖が予測し、狙っていた。実現するには相応の技術が必要だが、彼女には問題のないことだった。
有栖が拳を引いて戻すと、伏見は仰向けに倒れた。気を失っている。彼女も手応えから、すぐには起きあがらないだろう、と確信していた。
立ち上がろうとする伏見に、有栖は警告する。
「知っている。だが、諦めるわけにはいかない」
「そっか……」
事実、短刀を持っていない伏見に対して、体術では負ける要素がないことを彼女は確信していた。リスクのない相手に対して、時間をかける必要もない。有栖は一応、距離を取っていた相手に一歩ずつ近づく。
「一つ、聞きたいことがある」
「何?」
「アマツカ、という男を知っているか?」
「知らない、誰?」
「そうか……ちょっと気になっただけだ」
伏見は会話を終えると、ボクサーのように拳を握り、構えた。彼の思考は既に切り替わっていて、アース博士の誘拐は諦めている。時間をかけて、体力を回復し、逃げる。もしくは、同行してきた部下が逃げる時間を稼ぐことだった。
だから、伏見が選択したのは皮肉にも、先程の有栖と同じ戦い方だった。ジャブを放ち、距離を取り、戦う。それしかなかった。
有栖が近づいて来る。伏見も自身の間合いについては理解している。拳が届く距離になると、ステップイン――ジャブを繰り出した。
しかし、伏見が拳を放った瞬間、ほぼ同時に彼の左腕に蛇のように何かが絡みつく。そして、ガキン、と顔面が打ち抜かれた。
「……化け物め」
有栖が伏見のジャブに対して、クロスカウンターを放ったのだ。もちろん、ダメージがあっても彼のジャブは遅くない。ただ、有栖が予測し、狙っていた。実現するには相応の技術が必要だが、彼女には問題のないことだった。
有栖が拳を引いて戻すと、伏見は仰向けに倒れた。気を失っている。彼女も手応えから、すぐには起きあがらないだろう、と確信していた。
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