10 / 48
有栖-1
有栖-1-7
しおりを挟む
「探偵の副業でも始めたんですか?」
「違う、違う。先輩からの頼み事なんですよ」
その先輩、というのが一色であり、その頼み事こそがオフィスにまで彼が有栖に会いに来た理由でもあった。
「何か先輩の娘さんの飼い猫が家出しちゃったみたいで、その猫を探す為に娘さんが夜遅くまで外出してるっぽいんですよね」
「そうなんですか。娘さんの飼い猫って妙な言い回しですね」
「あぁ、この先輩、奥さんと娘さんとは別居中なんですよ」
「それ言っていいんですか?」
「……まぁ、いいってことで。どうせ暇だろってことで猫探しを依頼されたんですよ」
「事務仕事の気晴らしには良いんじゃないですか?」
高本はそう言いながら、器用に手を動かしバーで使うであろうグラスを磨いていく。
「そうかもだけど……あ、高本さん、この猫なんですけど見たことありませんか?」
そう言って有栖はスマホを取り出し、一色から転送されていた写真を見せた。高本も向けられた画面に顔を近づけて見る。
「綺麗に撮れていますね――色々と映ってる」
写真には高校生の一色の娘と赤い首輪がついている黒猫が映っている。家でお菓子作りをしている一場面だろうか、リビングでステンレスのボウル等の道具がテーブルの上に置いてあり、その邪魔をしにきた猫を注意するかのように一色の娘――黒髪のショートカットの爽やかな女の子が笑顔で抱えている平和な一枚だ。
「……見たことありますね」
「え、本当ですか? どこで?」
高本の発言に、有栖は思わず身を乗り出す。
「ここで」
「へ?」
「彼女、この店にたまに彼氏と来ていますよ」
「あー……それ聞かなかったことにします」
有栖はそう言って苦笑いを返す。よく一色から娘さんの溺愛話を聞いており、この写真も奥さんに頼み込んで貰ったことを知っている彼女にとってはその事実を説明する勇気はとてもじゃないが持ち合わせていなかった。
「違う、違う。先輩からの頼み事なんですよ」
その先輩、というのが一色であり、その頼み事こそがオフィスにまで彼が有栖に会いに来た理由でもあった。
「何か先輩の娘さんの飼い猫が家出しちゃったみたいで、その猫を探す為に娘さんが夜遅くまで外出してるっぽいんですよね」
「そうなんですか。娘さんの飼い猫って妙な言い回しですね」
「あぁ、この先輩、奥さんと娘さんとは別居中なんですよ」
「それ言っていいんですか?」
「……まぁ、いいってことで。どうせ暇だろってことで猫探しを依頼されたんですよ」
「事務仕事の気晴らしには良いんじゃないですか?」
高本はそう言いながら、器用に手を動かしバーで使うであろうグラスを磨いていく。
「そうかもだけど……あ、高本さん、この猫なんですけど見たことありませんか?」
そう言って有栖はスマホを取り出し、一色から転送されていた写真を見せた。高本も向けられた画面に顔を近づけて見る。
「綺麗に撮れていますね――色々と映ってる」
写真には高校生の一色の娘と赤い首輪がついている黒猫が映っている。家でお菓子作りをしている一場面だろうか、リビングでステンレスのボウル等の道具がテーブルの上に置いてあり、その邪魔をしにきた猫を注意するかのように一色の娘――黒髪のショートカットの爽やかな女の子が笑顔で抱えている平和な一枚だ。
「……見たことありますね」
「え、本当ですか? どこで?」
高本の発言に、有栖は思わず身を乗り出す。
「ここで」
「へ?」
「彼女、この店にたまに彼氏と来ていますよ」
「あー……それ聞かなかったことにします」
有栖はそう言って苦笑いを返す。よく一色から娘さんの溺愛話を聞いており、この写真も奥さんに頼み込んで貰ったことを知っている彼女にとってはその事実を説明する勇気はとてもじゃないが持ち合わせていなかった。
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
【完結】限界離婚
仲 奈華 (nakanaka)
ミステリー
もう限界だ。
「離婚してください」
丸田広一は妻にそう告げた。妻は激怒し、言い争いになる。広一は頭に鈍器で殴られたような衝撃を受け床に倒れ伏せた。振り返るとそこには妻がいた。広一はそのまま意識を失った。
丸田広一の息子の嫁、鈴奈はもう耐える事ができなかった。体調を崩し病院へ行く。医師に告げられた言葉にショックを受け、夫に連絡しようとするが、SNSが既読にならず、電話も繋がらない。もう諦め離婚届だけを置いて実家に帰った。
丸田広一の妻、京香は手足の違和感を感じていた。自分が家族から嫌われている事は知っている。高齢な姑、離婚を仄めかす夫、可愛くない嫁、誰かが私を害そうとしている気がする。渡されていた離婚届に署名をして役所に提出した。もう私は自由の身だ。あの人の所へ向かった。
広一の母、文は途方にくれた。大事な物が無くなっていく。今日は通帳が無くなった。いくら探しても見つからない。まさかとは思うが最近様子が可笑しいあの女が盗んだのかもしれない。衰えた体を動かして、家の中を探し回った。
出張からかえってきた広一の息子、良は家につき愕然とした。信じていた安心できる場所がガラガラと崩れ落ちる。後始末に追われ、いなくなった妻の元へ向かう。妻に頭を下げて別れたくないと懇願した。
平和だった丸田家に襲い掛かる不幸。どんどん倒れる家族。
信じていた家族の形が崩れていく。
倒されたのは誰のせい?
倒れた達磨は再び起き上がる。
丸田家の危機と、それを克服するまでの物語。
丸田 広一…65歳。定年退職したばかり。
丸田 京香…66歳。半年前に退職した。
丸田 良…38歳。営業職。出張が多い。
丸田 鈴奈…33歳。
丸田 勇太…3歳。
丸田 文…82歳。専業主婦。
麗奈…広一が定期的に会っている女。
※7月13日初回完結
※7月14日深夜 忘れたはずの思い~エピローグまでを加筆修正して投稿しました。話数も増やしています。
※7月15日【裏】登場人物紹介追記しました。
2026年1月ジャンルを大衆文学→ミステリーに変更しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
悪役令嬢は手加減無しに復讐する
田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。
理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。
婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる