壊れるぐらい愛して

ふしきの

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 柔らかな曲線の腰。
 うねる様に絡み付く下半身。
 嬌声が五月蠅いと、口に脱がしたパンティを押し込んだこともある。
 女は抱き心地が良い。
 東谷の頭の中で、高木はどんなのだろかと、考える。
 一度だけ抱いてみた感じは、骨っぽくて震えていた。
 それだけだった。
 だのになぜ、胸に抱いた感じが手の痕に残っているかように忘れることができないでいる。
 だからだろうか、それが頭から抜けない。あいつはどんな顔をするだろ。あいつはどうイクんだろう。というか、高木はどんな女と寝るのかが想像できない。頭のなかに寝ている姿は俺の胸で眠っている満ち足りたリアルな感覚。
「ねーぇ何考えてるの」
「…」
「あたしのこと、考えてくれてる?あたし以外のこと考えちゃ駄目」
 独占欲の強い女は一度寝たくらいですぐにそう言う。
 冗談の様な軽いキスを真っ赤な顔をして、ウブな顔は珍しいと、東谷は高木のことを思っていた。

 いつも通り、高木と東谷はオールナイトの映画の後で、別々に別れた。

「もう終わったことだろう」
 高木は誰かと話していた。
「しつこい」
 振り返ると、高木は誰かに言い寄られていた。
「ほっといてくれないか!」
 話がこじれているみたいだ。
 俺には関係ないことだ、と東谷はそう思っていた。
 相手が、暴力をふるってくるまでは…。

 われにかえってみたら、自分の拳が少しだけ腫れ上がっているのと、高木の泣いている顔だけが目に入った。
「ワリィ」
 東谷はそう言った。
 東谷は興奮が治まるまで、自分のしたことが理解できてなかった。
 振り払おうにも振り払えないほどの力で、東谷の腕をつかんで走ってる。
 何処かのホテルに入らされて、ドアロックの閉まる音をを呆然と聞きながらベットの上に座っていた。
 右手の拳に相手の血と唾液が付いていたが、刃物か何かで切られたのだろ、右腕がばっさり切れてて血まみれだった。
 やっと自分の頭がクリアになったときに、東谷は言った。
「何、泣いてるんだ」
 遠く外から漏れてくる警察官の声。
 わめく人。
 サイレン。
 目の間で泣いている高木。
 東谷は高木の頭をなでた。
「お前は、傷無いか?」
 高木は首を振る。
「ならいい」
「良くない!全然良くない…馬鹿!」
 高木は目に涙をためている。
「なんで?お前が傷付いてないんだったら何の心配も無いじゃないか」
「だって……血が」
 東谷の上着からじわじわと出てくる赤い血に高木はタオルを当てている。それでもじんわりとにじんでいる。
「ご免なさい、ご免なさい」
「お前が謝ることはない」
 東谷はむっとして言った。
 深夜の医者を捜して電話しようとする高木を東谷は止めた。
「なあ、高木。そう言えばお前の名前、俺知らないわ…」
 東谷はそう言った。
 高木の髪の毛は柔らかい。頭をなでると柔らかな髪が心地よく絡まってくる。
「…高木登…平凡な名前だろ」
 そう泣きながら笑う。
「泣くなって…俺は東谷…」その後は記憶にない。

『泣くなって。登。俺はお前の味方だから』

 目が覚めたら小汚い病院のベットの上だった。
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