壊れるぐらい愛して

ふしきの

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第三章

8

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 波の音が繰り返す。
 足を組み両腕を膝がしらに抱き締める。


『僕の名前を呼んで。僕を愛していると言って。何度も口付けを交わしたその声で。僕をきつく抱きしめて』


 夕暮れの海の風は少しだけ冷たく、じっとりとしている。
 波の音が子守のように優しく奏でるのを聞いていた。

 誰かによばれたような気がした。誰かが歩いてくる。よく見えないが、気配がそんな気がした。

 無粋な顔をして歩いてくる、何かが飛んできたのを受け止めた。
 いつも大事にしていた腕時計。
 文字盤もきちんと見える。
 ああ、この時計、針が動いている。

 気配で誰か分かる。

「俺にお使いを頼むな!」
 啓吾はむくれてそういった。

 強い風が吹いて砂が舞った。
 それでも目を凝らさずにはいられない。

「まったく馬鹿だよ…馬鹿」
「誰が?」
「おまえも俺も。全部馬鹿…ああ、馬鹿だ馬鹿だバカらしくなったぞ」

 抱きしめあう。
 体が熱い。
 人の体温がこんなにも熱いことを忘れていた。
 汗の香りも忘れていた。
「好き…一番好き」
 愛してる。
 

 おしまい   

WIND GATE 

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