改編版アストロノートとペテン師

ふしきの

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AI

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『お気の毒です…』というフレーズがアベイルの頭の中で連呼していました。
「ああ、ダメだ。それじゃあ、ダメなんだよ。私は、私たちは諦めてはいけない。そう、約束じゃないか、大地に二人で立つ夜明けの風を夢みた実現を遂げないと」 

 アベイルは何度もAIに「問い」続けました。
 それは何時間も、時間にして何時間もです。
『すみません、その要求には答えられません』から『わたくしのプログラムシステムに組み込まれていません』まで続きました。  
「では、問う。私は彼を愛していたのか」
『痴情の微々たる問題はわたくしの能力地では理解できません』
「彼は私に心を開いた、同じ方向を向く初めての人だと……」
『方向とは方位です』
「AIは貪欲なる情報の渇望だと聞くが」
『わたくしは常に展開を希望します』
「なら、何故彼は生き返らない」
『脳の破損による欠落は人体での再生ができにくい箇所です。同じものをご用命でならクローンによる事例があります』
「彼の培ってきた命の時間をコピーできるのか。昨日までの彼の瞳が戻るのか。同じものを同じ時間過ごせていない双子になんの意味がある、君は人という形をした心のないオモチャの量産品をこの私に提案しているにすぎない」
『記憶の刷り込みは100%不可能ですが、同じ人の再生はおおよそ可能です』
「そのうちアストノートのなれる可能性は」
『ゼロではない限り可能ですが、培養にかかる媒体が不足します』
「黙れ、人をなんだと思っている、機械人、今になってあいまい理論、を学習したのか! 」
『……沈黙を解除してくださる前に申し上げます。意図的にシステムダウンを起こした飛行士たちの最初の喧騒は入植地における土地名の命名権です。この先のわたくしの録音及び記録は遮断されました』
「なんと」
『オペレーション名は火星への有人飛行及び第一次入植者です。これは報道規制により変わりましたが、システムそのものも積み荷も従来とは一切変わりはありません、そして、当時予測された磁気嵐及び太陽風も予測されていました、けれども予測の修正前に』
 もういい、と言葉を止めさせました。
「ああ、人間とは何て単純にして愚か者なのだ」
 全システムが再起動して、すべてのものが無重力に浮き上がりました。そして、船内全ての電源が正常に戻り、重力場が出たとき、アベイルの周りだけが大量の涙の粒が濡れ落ちたのです。そして、彼はゆっくりと手首の枷の外れる音と同時に歩き出したのです。
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