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季節は
林間学校
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山の腐葉土は好き。森林の柔らかさと落ち葉のまだ枯れていない半々を踏みしめる不思議な柔らかさと弾力性。どこまで掘れば地面なのかと不思議に思う感覚。
なのに、私は圧倒的に山が苦手になった時期がある。
初めての林間学校のキャンプでのことだった。
取り決めのきついキャンプ場に白い画の中に恐ろしく古くて重たいテントを作らされる。グループにあてがわれた場所は見えにくいが緩い傾斜があった。
雨予報もないのに、テントの回りに溝を掘っておくこと、テントのはしらをたてるポールが長い間の貸し出しで微妙に歪んでいること。「もっとピント張りなさい」とだらけているはずもないのに指導教員に怒鳴られる非力さにチームワークに亀裂が入っていく。
全員が決められた場所での飯盒炊飯。メニューは全生徒面倒くささでカレー。カレーのルゥが違う程度か舐めきった男子はレトルトカレー持参で一食分が浮くが成長期の強烈な空腹に女子も心が冷えきった食事風景。
私はジャージと体操服が嫌いだった。
化繊の生地の寒さが腐葉土に染みた水分を吸い込む冷たさに嫌悪感が出た。いつまでも嫌なオリエンテーションやらに首の回りに蚊が吸って腫れ上がり最後は掌に血塗れが泥のように乾いてもまた耳元で騒ぐモスキート音になにもかも陰鬱だったから。
火を見て歌を歌って詩を読まされるのを体育座りで聞く。各自のトーチ点火まで冷える尻。
傾斜のあるテントの中は案の定黴の臭いがしている。それでも沢山の蚊を一斉に退治して眠る頃には少しばかり安堵してしまった。
寒い。
誰もが言わないが寒い。
静かにテントの中に入る風を塞ぐ作業をしても冷え込む。
リュックサックとナップザックの違いも解らない子どもにペラ紙で何度も何度も必要品目をチェックして誰もがどれを軽く入れられるか。どのように持ち運ぶかをレクチャーされたと言うのに、テントとコテージの落差は想定外だった。
しかも、キャンプは全員初。親世代も知らないし、地域性もあったと思う。遊びとは遊技場となりだした時期。なぜ気味の悪い山にまで入って好き好んで夜を明かすのかと言うような時代だったから。空の開けていない森の中のキャンプ場に一般客は見たことがない。
あてがわれたゴザ。
ザックを枕に。
なのに、薄い上掛けは唇を真っ青にさせるだけだった。
「寒い、提案がある。お布団を二重にして一緒に寝てくれない」と懇願した私は、将来テレビの土下座して「一生のおねがい」っていうひとを二度と笑えないと、お笑いでもゲス組の人間のようになった気がしたのだ。私は土整理が下手だったらしく地面に枯れた丸太がちょうど背中に当たっていて二重にしてもらった布団でもさらに身動きのできない眠りにつくことになった。
そして、唯一寝れたと言う子は二重の毛布を持ってきた子だった。圧縮と言う通信販売をいち早く利用させてもらった子だった。私たちは家から外に持ち出すだけで毛布を「捨てる、古い、自分用」と最後の最後まで親も自分も苦しみ続けた「バスタオルでいいじゃない?」ぐらいの安直に負けたのだ。
『日本にしかタオルケットはない』と知ったのは昨日のことだ。
深夜別の班の男の子達が「チョコレート」をくれと女子のテントを徘徊したとか。待ち伏せの逢い引きが成功したとかしないとかといった噂と楽しさだけが朦朧とした帰りのバスで聞き耳に伝わってくる。思い出は、身近に起きた悔しさしかない。
なのに、私は圧倒的に山が苦手になった時期がある。
初めての林間学校のキャンプでのことだった。
取り決めのきついキャンプ場に白い画の中に恐ろしく古くて重たいテントを作らされる。グループにあてがわれた場所は見えにくいが緩い傾斜があった。
雨予報もないのに、テントの回りに溝を掘っておくこと、テントのはしらをたてるポールが長い間の貸し出しで微妙に歪んでいること。「もっとピント張りなさい」とだらけているはずもないのに指導教員に怒鳴られる非力さにチームワークに亀裂が入っていく。
全員が決められた場所での飯盒炊飯。メニューは全生徒面倒くささでカレー。カレーのルゥが違う程度か舐めきった男子はレトルトカレー持参で一食分が浮くが成長期の強烈な空腹に女子も心が冷えきった食事風景。
私はジャージと体操服が嫌いだった。
化繊の生地の寒さが腐葉土に染みた水分を吸い込む冷たさに嫌悪感が出た。いつまでも嫌なオリエンテーションやらに首の回りに蚊が吸って腫れ上がり最後は掌に血塗れが泥のように乾いてもまた耳元で騒ぐモスキート音になにもかも陰鬱だったから。
火を見て歌を歌って詩を読まされるのを体育座りで聞く。各自のトーチ点火まで冷える尻。
傾斜のあるテントの中は案の定黴の臭いがしている。それでも沢山の蚊を一斉に退治して眠る頃には少しばかり安堵してしまった。
寒い。
誰もが言わないが寒い。
静かにテントの中に入る風を塞ぐ作業をしても冷え込む。
リュックサックとナップザックの違いも解らない子どもにペラ紙で何度も何度も必要品目をチェックして誰もがどれを軽く入れられるか。どのように持ち運ぶかをレクチャーされたと言うのに、テントとコテージの落差は想定外だった。
しかも、キャンプは全員初。親世代も知らないし、地域性もあったと思う。遊びとは遊技場となりだした時期。なぜ気味の悪い山にまで入って好き好んで夜を明かすのかと言うような時代だったから。空の開けていない森の中のキャンプ場に一般客は見たことがない。
あてがわれたゴザ。
ザックを枕に。
なのに、薄い上掛けは唇を真っ青にさせるだけだった。
「寒い、提案がある。お布団を二重にして一緒に寝てくれない」と懇願した私は、将来テレビの土下座して「一生のおねがい」っていうひとを二度と笑えないと、お笑いでもゲス組の人間のようになった気がしたのだ。私は土整理が下手だったらしく地面に枯れた丸太がちょうど背中に当たっていて二重にしてもらった布団でもさらに身動きのできない眠りにつくことになった。
そして、唯一寝れたと言う子は二重の毛布を持ってきた子だった。圧縮と言う通信販売をいち早く利用させてもらった子だった。私たちは家から外に持ち出すだけで毛布を「捨てる、古い、自分用」と最後の最後まで親も自分も苦しみ続けた「バスタオルでいいじゃない?」ぐらいの安直に負けたのだ。
『日本にしかタオルケットはない』と知ったのは昨日のことだ。
深夜別の班の男の子達が「チョコレート」をくれと女子のテントを徘徊したとか。待ち伏せの逢い引きが成功したとかしないとかといった噂と楽しさだけが朦朧とした帰りのバスで聞き耳に伝わってくる。思い出は、身近に起きた悔しさしかない。
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