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ふしきの

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季節は

ハイヒールと皺

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 年上の姉は大学生時代から今まで通勤に5センチ以上のハイヒールを履く。ブーツでも、夏のサンダルでも、下駄は、仕方ないので少しばかり低いものを履く。彫りの深いキリリとした顔立ちと、長年ヒールでも鍛え抜いた体幹は威圧のオーラを出す。だから、姉は家長を嫌い、長い間の期間弱小のワタシが父の代理人をしていた。父の仕事を継ぐことはなかった。が、色々と細かいことは手が切れないことが多かったので。

「いろじろさんは七癖隠す」という。
 よく老婆がワタシを見ては言葉がつまるとこういうのだ。だけれど、ワタシは、『七癖の癖とは何か』の方が知りたくてうっとおしがられた。ワタシがどれのどこが劣るのかを明確にさせたかった。

 父の初めての法事が49日と100か日、家族だけで行った。いつも通り頑固な母は、スーパーマーケットからフルーツ盛り駕籠を買い込んでいく。時期的に人を呼ばないので、口やかましく浅ましい親族が居ないことに、私たちは心が楽だった。


 近くにできた道の駅で小さな食事をとる。
 食が細いワタシにはこういう店でおにぎりと味噌汁だけが頼めることが嬉しかった。テレビでは高校野球がしていた。
 日差しがきつくて暑かったり寒かったりする窓枠だらけの道の駅でお茶を二杯飲んで、一息つく。


 家族はそれぞれが独立している個性なので誰一人まとまらない。好きと嫌いが双方向であるのでならんで歩くこともほぼない。


 それでも、夜を過ごすとき唯一の応接間に全員が黙ってテレビを見ていた。応接間には勝手に父が入れ込んだベットが南側に椅子がわりに鎮座している。
『爺くせぇ』枕には汗が残っている。何度洗っても臭いの落ちない頑固な臭い。

 姉は逆がわに寝転んで、「足を揉んでくれ」と言い出す。
 外反母趾で歪んだ親指、けれどももっとすごいのは、足の裏にまっすぐ硬い靴タコが踵まで延びているのだ。
 ハイヒールを履きつづけ、背筋を伸ばし、誰よりも目立つ位置に立つ姉の足の裏の積み重なった苦労は、『おなごの手を見てみろ、土汚れのしていないものは貴族だ』という大河ドラマのような台詞を思い出しながら、懸命に親指でほぐして汗だくになった。



 ふとテレビでは劇レアさんに近藤春菜と壇ふみが出ていた。
「春菜、色白い」ってワタシはビックリした。大女優にもひけをとらない堂々とした美しさに感動して、ぼんやりとワタシの口から出てしまった。



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