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Ⅴ章
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「ニフィちゃんがもう少し経てば、正式に迷宮ギルドで荷物持ち係を斡旋するサービスを開始するって言ってたし、もうしばらくの辛抱だろう」
「迷宮ギルドで斡旋されたからって信用できるかな?」
「いや、迷宮ギルドで登録するってことはちゃんとした身元が保証されてるんだから滅多なことはしないんじゃないか?」
「好きな女の子の言葉だからって鵜呑みにはするなよ。新しく何かをするにあたって、有能であれ無能であれ失敗はつきものだって師匠が言ってただろ?用心するに越したことはない」
「へいへい。ったく、ルービィは今日も口うるさいなぁ」
「君が適当過ぎるんだ」
そんな2人の会話から数日後。
受付嬢のニフィから聞いた通り、迷宮ギルド側から荷物持ち専門の人材の派遣が始まった。
迷宮ギルドに登録している探索者達はどんなもんかと期待半分、不安半分で迷宮ギルドの荷物持ち達を雇い始める。
その結果は上々。
少なくとも、盗難被害が皆無に近いレベルにまで上げることに成功したのだ。
それもそのはず。
そもそもとして迷宮ギルドは国営である。
今までにない様々な資源を得ることができる迷宮を個人やその辺の団体が管理できるはずもなく、第一発見者が国に勤める軍人であったことも相まって、サドラン帝国によってしっかり管理されている。
さらには外国人に秘匿せず、独占しないオープンスタイルであるが、ゆえに迷宮から得られたアイテムの悪用やどこの国にどんなアイテムが渡ったのかを把握しやすくするためにも、迷宮ギルドにおける登録はある程度の身分証明が必要であるし、一度登録した人間は身分がある程度明らかになっているだけに、悪いことをすればすぐに逮捕される。
外国人であれば国に強制送還からの入国禁止措置を取る。
すなわち。
迷宮ギルドで登録した荷物持ちはある程度、どこの誰で、どこ住みで、どんな経歴をしているかを把握できるのである。
下手に盗難行為などの犯罪を犯せば得られるメリット以上のリスクを抱えることになるが故、基本的にそうした行為はされないのである。
「よろしくお願いします!アルルって言います!」
フォルフォー少年とルービィ少年の2人はそうした評判を聞き、再度荷物持ちを雇うことに決めた。
そしてやってきたのは12、3歳のアルルと名乗る少女であった。
長い綺麗な黒髪に血のように赤い瞳、やたらと顔の整った少女だ。
年齢も相まって体の起伏には乏しいものの、それであっても異性の視線を惹きつけそうなほどに見目が良い少女であった。
左腕に付けられている無骨な腕輪が不釣り合いに感じる。
「よ、よろしく」
「よ、よろしくお願いします」
2人の少年はお互いに好きな女性がいるが、それでなお思わず緊張してしまうほどに。
荷物持ちなのだから、もっとガタイの良い奴がやってくると思っただけになおさら。
「あ、あのさ、一応、聞くけど…荷物持ち…ってことで良いんだよな?」
いまだ少年で、小柄よりである体格の彼らよりも更に小さな体躯のアルルと名乗る少女に思わずとばかりにフォルフォー少年が訪ねた。
あまり言いたくはないが、荷物持ちという名の足手纏いにしかならないのでは?と考え、そう訪ねてしまうのも無理はない。
彼でなくても、確認せざるを得ないくらいにはアルルは小柄で、とてもではないが荷物持ちの仕事をこなせるとは思えない。
すわ、何かしらの手違いを疑い始めたところでアルルは笑いながら答えた。
「ふふ。そう思うのも無理はありませんね。
でも、ご安心を。
下手に力自慢な方々以上の仕事ができると自負しております」
「自負、と言われてもね…とてもじゃないがそうは見えないよ」
ようやく驚きから立ち直ったルービィ少年がアルルに言葉を返した。
「おや?
迷宮で名の通り始めた、お二人ならば気が付きませんか?
ここは不思議なことが起きる、不思議で不思議な迷宮ですよ?
例えば幼気な少女が、沢山の荷物を持ち運べることなど序の口です。
ここは一つ。騙されたと思って私を雇いませんか?」
その端正な顔立ちに笑顔を浮かべながら彼女は言った。
「とりあえず行ってみるか?」
「本当に騙されなければ良いけれどね」
前述したとおり迷宮ギルドは国営機関だ。
登録する人たちの身分はある程度明らかであり、滅多なことでは騙されまい。
逆に言えば、滅多なことが起きれば何かが起こるわけだが、いかんせん彼らも年頃の男の子。
好きな女性にアプローチ中のフォルフォー少年や、婚約者を持つルービィ少年であっても多少なりとも甘い判断になってしまうのは仕方がない。
どのみち今から新しく荷物持ちを雇うとなれば、少なくとも今日は無理そうだ。
新しく始まったばかりのサービスであるがゆえに、荷物持ち登録者は少ない。
であれば時にはこんな冒険の日があっても良いかも知れない。
なによりも、問題があればすぐに引き返せば良いだけの話だ。
可愛い女の子と一緒に探索というのも一興。
不安と期待がブレンドされた浮ついた気持ちを胸に秘めつつ、彼らは迷宮へと出発した。
「迷宮ギルドで斡旋されたからって信用できるかな?」
「いや、迷宮ギルドで登録するってことはちゃんとした身元が保証されてるんだから滅多なことはしないんじゃないか?」
「好きな女の子の言葉だからって鵜呑みにはするなよ。新しく何かをするにあたって、有能であれ無能であれ失敗はつきものだって師匠が言ってただろ?用心するに越したことはない」
「へいへい。ったく、ルービィは今日も口うるさいなぁ」
「君が適当過ぎるんだ」
そんな2人の会話から数日後。
受付嬢のニフィから聞いた通り、迷宮ギルド側から荷物持ち専門の人材の派遣が始まった。
迷宮ギルドに登録している探索者達はどんなもんかと期待半分、不安半分で迷宮ギルドの荷物持ち達を雇い始める。
その結果は上々。
少なくとも、盗難被害が皆無に近いレベルにまで上げることに成功したのだ。
それもそのはず。
そもそもとして迷宮ギルドは国営である。
今までにない様々な資源を得ることができる迷宮を個人やその辺の団体が管理できるはずもなく、第一発見者が国に勤める軍人であったことも相まって、サドラン帝国によってしっかり管理されている。
さらには外国人に秘匿せず、独占しないオープンスタイルであるが、ゆえに迷宮から得られたアイテムの悪用やどこの国にどんなアイテムが渡ったのかを把握しやすくするためにも、迷宮ギルドにおける登録はある程度の身分証明が必要であるし、一度登録した人間は身分がある程度明らかになっているだけに、悪いことをすればすぐに逮捕される。
外国人であれば国に強制送還からの入国禁止措置を取る。
すなわち。
迷宮ギルドで登録した荷物持ちはある程度、どこの誰で、どこ住みで、どんな経歴をしているかを把握できるのである。
下手に盗難行為などの犯罪を犯せば得られるメリット以上のリスクを抱えることになるが故、基本的にそうした行為はされないのである。
「よろしくお願いします!アルルって言います!」
フォルフォー少年とルービィ少年の2人はそうした評判を聞き、再度荷物持ちを雇うことに決めた。
そしてやってきたのは12、3歳のアルルと名乗る少女であった。
長い綺麗な黒髪に血のように赤い瞳、やたらと顔の整った少女だ。
年齢も相まって体の起伏には乏しいものの、それであっても異性の視線を惹きつけそうなほどに見目が良い少女であった。
左腕に付けられている無骨な腕輪が不釣り合いに感じる。
「よ、よろしく」
「よ、よろしくお願いします」
2人の少年はお互いに好きな女性がいるが、それでなお思わず緊張してしまうほどに。
荷物持ちなのだから、もっとガタイの良い奴がやってくると思っただけになおさら。
「あ、あのさ、一応、聞くけど…荷物持ち…ってことで良いんだよな?」
いまだ少年で、小柄よりである体格の彼らよりも更に小さな体躯のアルルと名乗る少女に思わずとばかりにフォルフォー少年が訪ねた。
あまり言いたくはないが、荷物持ちという名の足手纏いにしかならないのでは?と考え、そう訪ねてしまうのも無理はない。
彼でなくても、確認せざるを得ないくらいにはアルルは小柄で、とてもではないが荷物持ちの仕事をこなせるとは思えない。
すわ、何かしらの手違いを疑い始めたところでアルルは笑いながら答えた。
「ふふ。そう思うのも無理はありませんね。
でも、ご安心を。
下手に力自慢な方々以上の仕事ができると自負しております」
「自負、と言われてもね…とてもじゃないがそうは見えないよ」
ようやく驚きから立ち直ったルービィ少年がアルルに言葉を返した。
「おや?
迷宮で名の通り始めた、お二人ならば気が付きませんか?
ここは不思議なことが起きる、不思議で不思議な迷宮ですよ?
例えば幼気な少女が、沢山の荷物を持ち運べることなど序の口です。
ここは一つ。騙されたと思って私を雇いませんか?」
その端正な顔立ちに笑顔を浮かべながら彼女は言った。
「とりあえず行ってみるか?」
「本当に騙されなければ良いけれどね」
前述したとおり迷宮ギルドは国営機関だ。
登録する人たちの身分はある程度明らかであり、滅多なことでは騙されまい。
逆に言えば、滅多なことが起きれば何かが起こるわけだが、いかんせん彼らも年頃の男の子。
好きな女性にアプローチ中のフォルフォー少年や、婚約者を持つルービィ少年であっても多少なりとも甘い判断になってしまうのは仕方がない。
どのみち今から新しく荷物持ちを雇うとなれば、少なくとも今日は無理そうだ。
新しく始まったばかりのサービスであるがゆえに、荷物持ち登録者は少ない。
であれば時にはこんな冒険の日があっても良いかも知れない。
なによりも、問題があればすぐに引き返せば良いだけの話だ。
可愛い女の子と一緒に探索というのも一興。
不安と期待がブレンドされた浮ついた気持ちを胸に秘めつつ、彼らは迷宮へと出発した。
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