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二話
しおりを挟む畳に腰を下ろした幹比古の周囲に、扇を描くようにして種々の物品が並んでいる。大小の箱に巾着の類、調合器具に、素人が一見しては用途の分からぬ品も大量に。
「人魚憑きと呼ばれるものにも、二種類あるんです」
幹比古の邪魔をせぬよう離れた場所から見守る垣内に、幹比古は暇潰しのようにそう語った。垣内は自ら助手を申し出て、幹比古の傍に付いているが、今のところ特に働いて貰う予定はない。
「人魚という奴等はね、女しかいないものなんですよ。それ自身で殖えることが出来ない。ゆえに、人の男女を使うんです」
「人間を……ですか」
神妙な面持ちで、垣内が幹比古の言葉を反芻する。実際に人魚を眼にしたこともない垣内には、想像に難い話なのだろう。それでも石榴という事例があるためか、垣内は幹比古の話を与太だと断じることはなかった。
「大抵の場合、事故などで海に落ちた人間を使います。人魚はまず、人の男と目合い、子を成します。しかしその子は、人魚ではなく人の子の形で生まれてくる。人魚は人の子を孕む腹を持ちません。それゆえ、人の女の腹を借りる。女の腹に卵を埋め、己の子を人の腹で育むのです。人の子とほぼ同じ、十月程度を経た後、その子は一見人の子と変わらぬ姿で生まれてくる」
「ま、待ってください、ならその子供は、人の子ではなく……」
「ええ、正真正銘人魚の子ですよ。人の姿をしておりますが、人ならざるものです。初めは人の子と同じように育ちますが、およそ十になる頃には、人魚としての自我が芽生えていきます。同時に、肉体も変化していく。人の子供から、人魚へと。仮に男として産まれたならば、性別すらも転化するでしょう。そうしていずれ――海へ還る」
その話を聞いた垣内の顔は、遠目からでも分かる程真っ青に染まっていた。膝の上で握り締めた拳が、ぶるぶると震えている。恐怖と、動揺と、僅かな瞋恚にも似た感情を滲ませながら、垣内は揺れる声で幹比古に問うた。
「い、伊坂先生。それじゃあ、それじゃあ……石榴は、あの子は、人の子じゃあなく、元々人魚だったって言うんですか」
冷や汗を顎まで伝わせながら、垣内は絞り出すように吐き出す。己が慈しみ育ててきた甥っ子が、人ならざるものであったなどと、俄かに信じられるものではないのだろう。しかし伊坂は、眉ひとつ動かさぬまま、淡々と答えた。
「いえ、違います」
「え?」
呆気なく否定された事実に、垣内は子供のように目を丸くした。まさしく鳩が豆鉄砲を喰らったようなその表情を見て、幹比古は些か意地の悪い笑みを浮かべた。
「人魚憑きには二種類ある、と先程説明しましたね。ひとつは今言った通り、人魚が人の男女に憑いて子を産ませるもの。そしてもうひとつは――女が腹に孕んだ子供に憑くものです」
垣内はどこか唖然とした顔で、幹比古の言葉を聞いている。隙間から吹き込んだぬるい風が、二人の髪を僅かに揺らした。ざあ、と葉擦れの音が遠くに聞こえる。幹比古はついと視線を上げると、目元に掛かる前髪をゆっくりと指先で搔き上げた。
「女は海に落ちた男と子を成します。しかし、その後すぐに人の女の腹に仕込まなければ、人魚の卵は枯れてしまう。それゆえ、人魚の子を孕むのは、世を儚んで心中した男女の女の方であることが多い。しかし――卵が枯れてしまった後でも、それが為せる場合がある。それは、腹の中の子に卵を埋める場合。子供は先程と同じように人の子として産まれ、成長し、同じように十ほどの年齢になれば、肉体に変化が出ます。その後辿る運命も、先程説明した流れと殆ど相違ない。しかし、両者には決定的な違いがあります。それは前者の子供が人魚そのものであるのに対し、後者は人魚憑きの、人間の子供であるということ」
「伊坂先生は、石榴は後者であると……?」
「ええ。撫子さんが身を投げた時期、石榴が産まれた時期から逆算するに、間違いなく後者でしょう。撫子さんが自殺を図った時には、既に腹には石榴がいた。その時、あの子は人魚憑きになったのでしょう。私は人魚の子を人間に変える術は知りません。しかし、人魚憑きの子供から、憑き物を落とす方法ならある」
幹比古は床に広げた荷物の中から、桐の箱をひとつ拾い上げた。ちょうど幹比古の手の大きさと同程度の箱だ。蓋を開けてみれば、柔らかな絹地に包まれた、小瓶がひとつ入っている。その中には、細い枯れ枝のような、乾ききった貝紐のようなものが見えた。
「先生、それは……?」
「臍の緒です。人魚のね」
「人魚の……」
垣内は驚愕を顔に張り付けて、幹比古の手許をまじまじと見つめた。瓶の中には、小指ほどの長さがある、からからに乾いた臍の緒が数本。一見して、人のそれと何ら変わりはないものだった。
「ある土地では、神事として意図的に女に人魚を憑かせることがあります。そこでは人魚と海神が同一視されている。女が人魚の子を孕み、そして無事に海へと還すことで、豊漁と凪が約束されると言われているのです。所謂人身御供のような儀式ですね。人魚は波と親しみますから、神とするのも強ち間違いという訳ではありません」
「は、はあ……」
「私はその土地にいくらか伝手がありましてね。これは、極秘裏に譲っていただいたものです。これと、鬼灯の実、そしていくらかの薬草を煎じたものを、石榴に飲んで貰います。頻度は二日に一度。一月ほどそれを続けて――最後に仕上げをすれば、憑き物落としは終了です」
その間、この屋敷に滞在させて欲しいと乞えば、垣内は一も二もなく頷いた。恐らくは彼が判断することではないと推察されるが、それについて幹比古は敢えて言及しなかった。掌に収まる小瓶を持ち上げて、幹比古はゆっくりとそれを揺らす。枯れた臍の緒が擦れ合う音が、浜辺に波の打ち寄せるそれと重なって聞こえた。
翌日から、幹比古は石榴の元へ通いながら、定期的な投薬を行った。毎朝石榴の脚を触診し、体調を確認して、薬の量を少しずつ調整する。桶に入った水は毎日女中が取り換えているようで、いつ見ても清潔さが保たれていた。石榴の身体が変異しているのは、足の爪先から、膝下まで。脚のおよそ半分が変異していることになる。幹比古が訪れた時点で、まだこの段階で済んでいるのは幸運だった。膝を超え、腿まで変異が進む頃になれば、いよいよ人としての精神にも異常を来していただろう。そうなれば、今のように素直に薬を飲んでくれていたかは怪しい。
「ん……こほ、っ」
薬を飲んだ後、僅かに咳込んだ石榴の背を、幹比古はそっと擦る。何度か咳を繰り返した後、しかし石榴は吐き戻すこともなく、落ち着いて息を吐き出した。石榴から受け取ったグラスを、幹比古は手近な文机の上に置いた。グラスの中身は塩水だ。肉体の変異が始まった人魚憑きは、塩水以外のものを殆ど口に出来なくなる。この三年、石榴は塩水だけで生きてきた筈だった。それでも骨のように痩せてしまわないのが、その身に憑いた人魚の力だ。
「口を開けてみなさい――ああ、ちゃんと飲めているようだ。偉いね」
「んっ……」
幹比古が頭を撫でてやれば、石榴は嬉しそうに頷いた。憑き物落としの薬はひどく苦い。子供には飲み難いものだろうが、石榴はいつも文句のひとつも言わず、幹比古の渡す薬を飲み下した。
「伊坂先生、まだ、いる……?」
「ああ、いるよ、いつもの通りに」
石榴の問いに、幹比古は小さな笑みと共に頷いた。薬の作用で、飲んだ後から暫くは、身体に気怠さを感じるようになっている。それが治まるまでは、幹比古は石榴の傍に付いているようにしていた。
「よかった」
ふんわりと微笑んで、石榴は幹比古の手に懐き寄った。格子の填まった丸窓から、四角く切り取られた朝陽が差している。それが、石榴の濃紺の髪を照らしていた。夜とは違って、日の光の下では、その色がよく分かる。美しい紺碧を想起させる髪だ。さらさらと落ちる柔らかな髪が、石榴の白い頬にかかっている。幹比古は手を伸ばして、そっと毛先を払ってやった。
「先生、そばにいてくれると、嬉しい」
頬を仄かなばら色に染め、石榴は瑞々しい唇でそう紡ぐ。淡い青の瞳がとろりと溶けて、揺れる水面のようだった。脚を水に浸けたまま、石榴は幹比古の胸に頭を預ける。微かな潮と、どこか甘い香りを感じた。
同じ年頃の子供よりも、石榴の振る舞いは少し幼く見える。閉鎖的な環境で育ったからか、あるいはここに閉じ込められた影響か。いずれにせよ、石榴は子供のいとけなさで、幹比古によく懐いた。
「兄さんも、おじさんも、僕のことを見ると、いつも悲しそうな顔をするの」
兄さんというのは垣内のことで、おじさんは村長だ。世話を焼く女中以外で、ここを訪ねて来るのはその二人しかいない。幹比古は何も言わずに、胸に凭れ掛かる小さな頭を撫で下ろした。
「いつも、ずっと、そうだったよ。ここに入るよりも前から、ずっと。僕のこと見る人は、みんな悲しい顔をしたり、怖い顔をしたり、苦しい顔をしたりしてた。笑ってるように見えても、本当は、そうじゃなくて」
石榴は、人の感情に敏い子なのだろう。大人が隠した思惑を、この子は見抜いている。物心の付く前に実の両親を亡くした、人魚憑きの子。それを見つめる他者の瞳は、果たして何を石榴に語ったのか。
「先生は……悲しい顔、しない」
幼い指が伸ばされる。柔らかな、白い指先が、幹比古の頬に触れた。
「先生は、僕を見ても、悲しくない……?」
石榴の透き通る瞳が、幹比古を見上げる。がらす玉のような眼差しだった。この子の視線には、何ひとつ偽りがない。この世に生を受けたばかりの子猫のように、石榴は世界を見つめている。
「悲しくないよ」
「ほんとう?」
「ああ」
柔い頬を撫でて、幹比古は頷いた。光を受ける石榴の睫毛が、僅かに震える。薄く開いた赤い唇から、あえかな吐息が零れて落ちた。薄い瞳が、目蓋の奥に隠される。胸に縋る少年の背に、幹比古はするりと手を回した。薬の効果が出て来たのか、少し呼吸が荒い。ゆっくりと背中を叩いてやると、石榴は心地よさそうに、小さく鼻を鳴らした。
華奢な身体は今も、水に浸かったままだ。石榴の身体は腰元まで水に濡れて、衣服が身体に張り付いていた。まろやかな腿から、水滴が滑り落ちる。幹比古は石榴の身体を抱きながら、きらきらと陽光を反射して輝く水面を、じっと見つめていた。
石榴への投薬は順調に続いた。時が進むにつれ、それは目に見えた効果を見せるようになった。石榴の脚は少しずつ乾きに対して耐性が生まれ、憑き物落としが始まってから二週間が経過する頃には、常に水に足を浸していなくとも、耐え難い痛みに襲われることはなくなった。三週間が経過すれば、石榴の脚は殆ど水を必要としなくなった。脆く薄い鱗を傷付けないため、常に脚に包帯を巻いておかなければならないが、それ以外は普通の少年と同じように過ごすことが出来る。長く歩いていなかったためにまだ足元は覚束ないが、これには村長も垣内も大層喜び、安堵した表情を見せた。そして、四週。きっかり一月をもって、石榴の憑き物落としは完了となる。
その、少し前に、幹比古は村長と垣内を呼び寄せた。投薬は、次で最後になる。だが、憑き物落としはそれでは終わらない。幹比古は事前に、最後の仕上げが必要になると、村長と垣内に知らせていた。その大凡の内容も。この日、幹比古は村長にその仔細な段取りを説明し、必要なものを箇条書きにした書面を渡した。その内容を確認し、村長と垣内は共に顔を見合わせ、複雑な感情を顔に滲ませていた。けれども村長は、石榴を一月で快復させた幹比古を信用し、全てを任せると頭を下げた。
その遣り取りが終わった後、幹比古は自室に引っ込み、荷物を少し整理した後、縁側に出て一服した。もう八月も末になろうというところで、遅鳴きのヒグラシが、何処かでかなかなと鳴いている。夕暮れに染まる空を見上げながら、幹比古は紫煙をゆっくりと吐き出した。そこに、きしきしと足音をさせて、誰かが近付いてくる。垣内だった。
「伊坂先生」
「垣内さん。何か私に御用ですか」
「ああ、いえ、用という程では……いや、用はあるんですが、何と言いますか」
もごもごと要領を得ないことを言いながら、垣内は頭を掻く。悠然と煙草を口にする幹比古の隣に立って、垣内は暫く言葉に迷っていた様子だったが、やがて意を決したような顔で、幹比古に向き直った。
「伊坂先生、その、最後の仕上げというのは、本当にやらなくちゃいけないことなんでしょうか」
「と、言いますと」
「その……先生のお陰で、石榴は水の中から出ることが出来ました。それは本当に感謝しています。ですが……だからこそ、このままではいけないだろうかと、思ってしまうんです。勝手な話ですが、今のままでも、石榴はなんとか生きていけるんじゃないかと」
「残念ながら、否という他ありませんね。仕上げと私は言いましたが、実際は今までの投薬の方が、ただの前準備に過ぎないんですよ。これからあの子に施すこと――それがなければ、憑き物落としは終わらない。薬を飲まなければ、また状態はすぐ元に戻ります。決して無限ではない薬を、現状維持の為だけに与え続けるのは、不可能でしょう」
にべもない幹比古の回答に、垣内は目に見えて肩を落としたようだった。彼にとっては酷なことを告げているのだという自覚はあるが、幹比古は己の発言を取り繕おうとは思わない。
「そう……そうですよね。申し訳ありません。生意気なことを言ってしまって」
「いえ。垣内さんが仰りたいことは分かっているつもりです。まだ年端もいかぬ子供の石榴にさせる経験としては、決して生半可とは言えぬものでしょうから」
「ああ、いえ……それもそうなんですが、もちろんそうなんですが、それだけでもないといいますか」
曖昧な言葉を紡ぐ垣内の方が困ったような顔をして、指先で頬を掻いた。幹比古の方をちらちらと見上げて、ひどく言い難そうにしながら、たどたどしく続く言葉を探している。幹比古は急かすでもなく、煙草を口に咥えながら、垣内が落ち着くのを待った。
「先生がこちらに来てから、俺が石榴のところを訪ねると、あの子、先生の話ばかりするんですよ。先生にはとてもよくしていただいているようで、ありがたい限りです」
「いえ。とても素直でいい子ですから。こちらとしてもやりやすくて助かっています」
「そうですか。それはよかった。いえ、よかった……んですが……」
「――何か、私のことで、ご不満でもおありですか。お教えいただければ、改善の努力はするつもりですが」
「そ、そんな! そんなことではないんです。先生に文句だなんてとんでもない。ただ、嬉しそうに伊坂先生の話をする石榴を見ていると、心配になってしまうというか、なんというか、その……」
しどろもどろになりながら、垣内は懸命に思考を整理しているようだった。どうやら彼が幹比古に伝えたいことは、余程口にするのが憚られることらしい。先程から会話に無駄な時間が多いが、それは幹比古に不快感を与えるようなものでもなかった。灰の長くなってしまった煙草を片手に、幹比古はのんびりと垣内を観察する。旋毛が左巻きだ、と、至極どうでもいい情報が手に入った。
「あの子を見ていると……俺は、あの子が、どうにも、先生に向けている感情が特殊に見えるといいますか。ええっと、あの……正直に言ってしまうと、先生に好意を向けているように見えるんです。大人として慕っているとか、そういう枠を飛び越えて」
そうしてついに、垣内は核心に迫ることを口にした。幹比古は細い煙を吐き出して、垣内に視線を投げる。すると垣内はぎくりと肩を跳ねさせて、まるで自分自身が幹比古に愛を告げたような態度で、視線をきょどきょどと迷わせた。額から、冷や汗がだらだらと流れているのが見える。
「だ、だからその、俺は……もしもそうだったとしたら、伊坂先生が、石榴にしようとしていることは……もしかすると、あの子を傷付けてしまうのではないかと、思ってしまって」
「――そうですか。では、代わりに垣内さんがなさいますか。私はそれでも構いませんが」
この時幹比古は小さな嘘を吐いた。けれども純朴な垣内はそれに毛ほども気付くことなく、唖然として幹比古を凝視した。
「え、えええ、お、俺ですか!」
よほど衝撃的な言葉だったのだろう。垣内が己を指差す手が震えている。幹比古は平然と頷いて、流れるように言葉を繋げた。
「ええ。他に適任がいるとすれば、あなたでしょう。あの子に害意を持ち得る村の男を向けるのは危険ですし、候補はあなたか村長の二択になります。年齢的に、村長さんに任せるのは現実的ではないでしょう。そうなると、残るはあなたしかいなくなる」
「で、でもそんな、俺が、そんな、石榴になんて……」
「私が駄目だというのなら、あなたしかいない。いずれにせよ、誰かがやらねばならないことです」
垣内は目を白黒させながら、頭を抱えている。代わりに自分が指名されるなど、想像もしていなかったのだろう。自分の掌をじっと見下ろし、思い詰めたような顔で暫く悶々と考えていた様子だったが、結局垣内はぶんぶんと頭を振って、泣きそうな声で弱音を吐いた。
「そ、そ、そんなの、無理ですよ……」
「では、私がやるしかないでしょうな」
「そ……うですよね……」
「ああ、心配なら、同席されますか。私の方は、それでも全く――」
「いえ! そ、それは遠慮させていただきます」
幹比古の言葉を遮るようにして、垣内が大声で拒絶を口にした。むしろそんな状況の方が自分がやるより何倍も居た堪れない、という心中の台詞が伝わってくる。幹比古にとっては、あまりにも予想通りの反応だった。
「そうですか」
特段気にすることもなく頷いて、幹比古は垣内から視線を外した。垣内は隣で、ああ、だのうう、だの呻きながら、未だ色々と思い悩んでいるようだ。視界の端にそれを捉えながら、幹比古は微かに笑みを浮かべる。本当に、どこまでも真っ直ぐな青年なのだろう。年齢の割に些か老成した幹比古と比べ、垣内は溌溂とした若々しさと、初々しさに満ちている。そんな彼のことを、幹比古はそれなりに気に入っていた。
「まあ、安心してください。悪いようにはしませんよ。私にも考えがありますので」
「考え? それは、どんな」
「それについては、また後程。ひとまず憑き物落としが成功しない限りは、どうにもならない話です」
そう言って、幹比古は話を打ち切った。気になるところで幕を引かれ、垣内は複雑な表情を浮かべて頭を掻く。けれども彼が、それ以上追及してくるようなことはなかった。この伊坂幹比古という男が、涼しげな容姿とは相反して、腹の片隅に狸を飼っている類の男であることを、垣内もこの一月の間である程度理解したらしい。
夏の夕暮れ、少し冷えた風を受けながら、幹比古は屋敷の庭を悠々閑々と眺める。池に飼われている鯉が、ぱしゃんと水を跳ねさせる音が小さく聞こえた。
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