竜の背に乗り見る景色は

蒼之海

文字の大きさ
23 / 80
第一章

第22話 謝罪

しおりを挟む
 予想外のエドゥアの登場にヘルゲやジェスターはもちろん、武具生産班の面々にでさえ緊張が走るのが、離れていても嫌でも分かる。

 ボクはゆっくりと人だかりに向かってマシンを走らせると、エドゥアの前でブレーキをかけた。

 初めて見る得体の知れない迫り来るマシンに少しだけ慄きながらも、毅然とした態度を崩さないエドゥアにボクは、少しだけ感心した。

 性格は最悪だけど、さすが腐っても製造部のトップと言ったところだろうか。

 あちゃあ。そんなに顔を真っ赤にしちゃって……こりゃ相当怒っているよね? 

「カズキ……お前はここで何をやっているんだ。そろそろ任務開始の刻だと言うのに、こんな騒ぎを起こして一体何を考えて……って、そのウルサい音を早く止めろ!」 

「……はーい」

 キーをOFFに回しエンジン音は止まったけれど、エドゥアの怒りは止まらない。

「だから! その口の聞き方はなんなんだ!? ……おい! 班長はいるか?」

「はい。ここにいますよ」

「ヘルゲ! 貴様の教育がなっとらんから、こんな無作法な態度を取り問題を起こすのだ! 貴様も厳重に処罰するから覚悟しておけ!」

 呼ばれて近づいてきたヘルゲに向かって、エドゥアは唾を飛ばして捲し立てた。

「———ちょっと! 騒ぎを起こしたのもボクだし、口が悪いのも生まれつきだよ! 悪いのは全部ボクじゃないか! ヘルゲさんは関係ないよ!」

「黙れ! 尽く俺に楯突きやがって! 製造部は俺の管轄だ。ヴェルナード様の預かりと言う事で大目に見てもらえると思うなよ!」

 聞く耳を持たなそうなエドゥアに、これ以上何を言っても無駄の様だ。

 処罰がボクだけなら納得できる。だけどこのままだとヘルゲが責任を取らされる事になる。それだけは絶対に避けないといけない。

 ボクがマシンを直したいと言った時もヘルゲは笑って許してくれた。嫌な顔一つしないでボクの我儘に付き合ってくれたんだ。そんな人が処罰されるのは、自分が処罰されるよりも辛い。

 ボクはひらりと降車するとマシンのサイドスタンドで自立させ、エドゥアに歩み寄って深々と頭を下げた。

「……騒ぎを起こしてすみませんでした。全部ボクが悪いんです。だからヘルゲさんは関係ないんです。どうか許してください」

「か、カズキ……」

「これからは一生懸命働きます。反省もしてます。だから、ヘルゲさんを処罰するのだけは、やめてください……お願いします……!」 

 下を向いたまま足音だけで、ジェスターが側に来てくれた事が分かった。だけどボクは顔を上げずにそのまま頭を下げ続ける。

 謝っている最中だし、何よりも、半ベソをかいているこの顔をジェスターに見られたくない。

「ほほう、良い心がけだな。そうかそうか、お前もようやくこの『モン・フェリヴィント』のしきたりが分かってきたか。……では本当に反省しているのかを見せてもらおう。……この訳の分からないガラクタを、お前の手で壊すのだ!」

「えっ!?  そ、それは……!」

 思わず顔を上げたボクに、薄ら笑いを浮かべたエドゥアの視線が突き刺さる。

 CRF250Rこの子を自分の手で壊すなんて、そんなのできる訳ない! でも、それをしないとヘルゲが処罰されてしまう。

 一体どうしたらいいの? ……誰か助けて!

 ボクの心の助けを察知したのかは分からないけど、救いの手を差し伸べてきたのは、意外な人物だった。

「謹んで申し上げます。エドゥア様もご覧になられたと存じますが、あの乗り物、確かに得体の知れない奇妙なものではございますが、その能力は計り知れません。使い道を考慮すれば、きっと何かの役に立つものかと思います。どうか今一度ご賢察を……」

「黙れ! 貴様は確か……武具生産班の班長補佐か。『1つの月章ファーストムン』風情がこの俺に物言いとは。……あんな珍妙なモノ、この製造部に必要ない! さあカズキ、どうするのだ? ヘルゲと一緒に処罰されるか、このガラクタを壊して許しを請うのか。好きな方を今ここで選ぶのだ!」

 さっきまでボクたちをからかっていた班長補佐の意見具申を上からぺしゃんこに潰されても尚怯まないジェスターが、容赦の声を続けて上げる。

「エドゥア様! カズキにとってあの乗り物は、カズキのいた世界の思い出が詰まった大切なモノなんです。どうかお許しください!」

「お前は……雑務係の小僧だな。どいつもこいつも雑務係は揃いも揃って俺に楯突きやがって……まったく持って忌々しいわ!」

 憎悪が込められた目がボクとジェスターに向けられた。

 ここまで強い人の憎悪の感情にさらされたのは、今まで生きてきて初めてかもしれない。

 体が自分の意思とは関係なく、ふるふると震えだす。

 ……怖い。誰でもいいからお願い。助けて!


 その時だった。

 遠くから嘶きと蹄の音が、ふわりと風に乗って聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜

侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」  十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。  弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。  お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。  七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!  以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。  その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。  一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

処理中です...