幸せのありか

神室さち

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学園☆天国

12 side夏清

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 さすがはお嬢様学校と言うべきなのだろうか。元々、クラス数もウチの半分くらいな上に、模擬店を出すのは一年か二年の半数ほどのクラスで、そのうち飲食店となるとさらに数が減り、ココにきては当たり前かと納得せざるをえないんだけど、とりあえず扱いやすい炭水化物代表、小麦粉メニューの代表格と言うべき、たこやきだの焼きそばだのと言うファストフード的な店は一店もなく、ほとんどが同じ小麦粉を使っていてもお菓子のお店。

 まあ、油がコッテコテでキャベツ増量、肉一人一切れなモサモサした焼きそばとかじゃないのは胃袋にはありがたいんだけど。


 つまり、来客も生徒も食事を取りたければランチテラスこと学食へ行くのが当たり前らしい。テーブルは四人がけが基本。樹理ちゃんと氷川さんと先生と私でひとテーブル。これは譲れませんことよ。


 学食と言うには申し訳ないくらいきれいな建物。これをウチの、どんな掃除をしているのか、いつもこってり脂のにおいのするあの場所とは似ても似つかない。メニューも、個人的にウチにほしいくらい女の子が好きそうなものがあふれている。とにかく量があったらいいだろ! みたいな、油と炭水化物で埋め尽くされたものとは雲泥の差だ。ちょっと卑怯だと思う。


 薄め間違ったとしか思えないくらい薄い出汁に気休めネギがパラついている、それでもうどんだけは一玉半入ってワンコイン百円なら文句言うな的最安値、テーブルに置かれたしょうゆを足したのち、一味をたっぷりかけて味をごまかさないと食べられたものはない素うどんなどここには存在しない。

 今樹理ちゃんが食べてる『ミニうどん』は、量は多分半玉。でもネギと厚めのかまぼこと食べやすさを考慮したのか細切りのお揚げがお上品にのってて、お値段は三倍だった。


「なんか、私の中の学園祭とのイメージとの隔たりが……」

「夏清ちゃんのところは、どんな感じなの?」

 学食のものとは思えないそこそこおいしいパスタを食べながら私がつぶやくと、樹理ちゃんが軽く首を傾げて尋ねてくる。

「もっとガチャガチャしてるよ、至るところがやかましいと言うか。ウチのは九月だから、来てみる?」

「いいの?」

「いいよ。ココと同じで、三年はほとんど何もしなくていいし。あ、進学とか大丈夫?」


 というより、ぼちぼち時期的に三年生が何かできるわけがない。それに、樹理ちゃんを絶対つれて歩きたい。そしてキリカに自慢したい。

「付属の短大に専願するから、受験って言っても小論文書くくらいでいいの。推薦は十一月だから大丈夫。日にちとか分かったら教えてね。あ、夏清ちゃんは? 進学するんでしょう?」

「うん。私も大丈夫。地元の大学だし、結構余裕かな」


 言いながらちらりと先生を見る。私の視線に気づいて先生の視線が絡んで、無意味ににっこり笑い返すと付き合いきれないってカンジでコッソリため息吐かれちゃった。

 まあなんですか、その態度。



「それよりさ、えっと、茶道部のお茶会だっけ、それって、こんなカッコで行っていいの?」

 となりのテーブルを伺うと、そもそものお茶会が目的だったらしい、段違いに装いの違うお三人様。ウチの高校にも一応茶道部は存在するけど、学園祭では一般向けにタダでお茶席を設けたりして、だれでもウエルカムな野点って言うの? 赤い敷物敷いた長椅子を並べて、笠を立ててやるやつ。それとはなんとなく段違いっぽい雰囲気。大体、時間指定で伺うと言う時点で、限定されている気配。

「それに、ジーンズで正座ってちょっときついかも。絶対しびれる」

「……うん。私も、茶道部は行ったことがないから分からないのだけど……その、この学校でも一、二を争うくらい古いクラブで、入部テストがあって、誰でも入れるわけじゃないの」

 多分、樹理ちゃんには全然そんな気はなかったんだろうけど、その説明はちょっと引くよ。学校の一クラブに入部テストですか……

「……確かにジーンズで正座は足が痛いよね……あ、そうだ」

 うーんと考え込んだ後、樹理ちゃんが何か思いついた様子で琉伊さんにお茶会の時間を聞いている。どうも、ユリさんが無理に増員要請をしたために、一番ラストの招待客に回されたとかで、二時の予定だと答えてくれた。


「二時なら、まだ一時間以上ありますよね。じゃあ十分着替えられるなぁ」

「着替え?」

「うん。友達が……後輩なんだけど、衣装屋さんというか、貸衣装を着て写真を撮る模擬店をやってて。頼めば何か貸してもらえると思うの。行ってみる?」


「まあ面白そう!」

 樹理ちゃんの提案に、食らい付いたのはユリさん。身を乗り出して、目がキラキラ。その後ろで、琉伊さんと柾虎君がため息をついている。この二人、ちょっと不憫かも。


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