3 / 34
1 恋の始まりなど、いつだって気づかぬもので。
あちらからやってくる! 右コマンドどこですかね?
しおりを挟む「はい確かに。それじゃあ失礼します」
差し出された伝票に『街宮』のハンコを押して返すと、さわやかな笑みを浮かべた顔でそう挨拶して、佐藤君が去って行く。
ああ、背中に刺さる内藤さんの視線が痛い。
だって、仕方ないじゃない。総務宛の宅配がちょうど届いてて、当然宅配のおっちゃんがハンコを求めても、カウンタに一番近い席のアナタは立ち上がりもしないじゃないですか。今いそがしいですぅ みたいな感じで突然キーボード音立て始めるじゃないですか。
当然隣の席で、次に近い私が立つしかないじゃないですか。
宅配の受け取り伝票に押すためのハンコを持って立ち上がったのと、絶妙なタイミングで佐藤君が伝票に記入を始めて、おっちゃんが帰るのと同時に私の前には作業伝票が。
これだけ断って内藤さんに回すとか、不自然極まりないので、仕方なく押させていただきました。ハンコ。
「街宮君、ちょっと頼まれてくれんかー?」
このギスっとした空気を全く読まないのか、はたまた読んでくれたのか。
能天気な課長の声が、今ほどありがたいと思ったことはありません!!
呼ばれて課長の机まで行くと、ちょっと分厚くなった封筒を渡された。
「悪いけどそれ、第二営業所に届けてくれないか?」
「わかりました」
大抵の文書はメールでやり取りするけれど、時々メールでは送れない、紙媒体でやり取りせざるを得ない文書があるので、月に一、二度だけど、こうして『お使い』を頼まれることがある。
頼まれるのは私。第二営業所はちょっと交通の便の悪い郊外にある倉庫の一角に作られた、この本社から半分リストラされたようなさびれた部署で、オジサンしかいないからか、内藤さんは一度行ってから二度と行かなくなった。
オジサンたちはみんな気の良い人たちで、行くとめちゃくちゃ歓待してくれるので、全然いやなところではないんだけどなぁ
やっとソフトが直って仕事を片付けようと思ったけど、隣から不穏な気配を醸し出されたままいるのは精神衛生上大変よろしくないので、さっさと最低限の私物を持って総務を後にし、経理からタクシー代を仮払いしてもらって、逃げるように社を後にしたんだけれど。
駄菓子菓子。いや、無駄に脳内で漢字変換しなくてもいいか。
だがしかし。
空車のタクシーが来ない。
なぜだ。
0
あなたにおすすめの小説
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
雨降る夜道……
Masa&G
恋愛
雨の夜、同じバス停で白いレインコートの女性が毎晩、誰かを待っている。
帰ってこないと分かっていても、
それでも待つ理由がある――
想いが叶うとき――
奇跡が起きる――
妖狐の嫁入り
山田あとり
恋愛
「――おまえを祓うなどできない。あきらめて、俺と生きてくれ」
稲荷神社の娘・遥香(はるか)は、妖狐の血をひくために狐憑きとさげすまれ、ひっそり生きてきた。
ある日、村八分となっている遥香を探して来たのは怨霊や魔物を祓う軍人・彰良(あきら)。
彼は陰陽師の名門・芳川家の男だった。
帝国陸軍で共に任務にあたることになった二人だったが、実は彰良にもある秘密が――。
自己評価は低いが芯に強さを秘める女が、理解者を得て才能を開花させる!
&
苦しみを抱え屈折した男が、真っ直ぐな優しさに触れ愛を知る!
明治中期風の横浜と帝都を駆ける、あやかし異能ロマンス譚です。
可愛い妖怪・豆腐小僧も戦うよ!
※この作品は、カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
2月31日 ~少しずれている世界~
希花 紀歩
恋愛
プロポーズ予定日に彼氏と親友に裏切られた・・・はずだった
4年に一度やってくる2月29日の誕生日。
日付が変わる瞬間大好きな王子様系彼氏にプロポーズされるはずだった私。
でも彼に告げられたのは結婚の申し込みではなく、別れの言葉だった。
私の親友と結婚するという彼を泊まっていた高級ホテルに置いて自宅に帰り、お酒を浴びるように飲んだ最悪の誕生日。
翌朝。仕事に行こうと目を覚ました私の隣に寝ていたのは別れたはずの彼氏だった。
花も実も
白井はやて
恋愛
町で道場を営む武家の三男朝陽には最近、会うと心が暖かくなり癒される女性がいる。
跡取り問題で自宅に滞在したくない彼は癒しの彼女に会いたくて、彼女が家族と営む団子屋へ彼は足しげく熱心に通っているのだが、男と接客している様子を見ると謎の苛立ちを抱えていた。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
運命の番より真実の愛が欲しい
サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。
ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。
しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。
運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。
それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる