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3 気づいたところで、もうどうしようもないのです。
どさくさにまぎれる。の、どさくさってなんなんだろう。
しおりを挟む「ごめんって、ね、待って」
プイと佐藤君を置いて駅へ向かって歩き出すと、全然反省の色がない声で佐藤君が追いかけてくる。背の高い佐藤君が横に並んだのと同時にカバンの中でさっき父からの電話の後マナーモードを解除したスマホが鳴りだした。
この着うたは家からだ。
「もう、だから今、駅に向かってて……あ、なんだ、音葉ちゃんか」
『なんだって、誰だったらいいのよ。ホントにそろそろ帰ってこないとお父さんがバターになっちゃうよ』
「なにそれ」
『紫音ちゃんがなかなか帰ってこないもんだから、リビングの柱の周り、無意味にぐるぐる回ってる』
それを聞いて、昔、父が膝に抱っこして読んでくれた絵本を思い出す。
「……お父さんがバターになってもおいしくなさそうだから、ダッシュで帰る」
『お父さんがバターになったら困るから、じゃないところが紫音ちゃんらしくていいわよね。じゃあ、ホントに早く帰ってきなさいよ。今駅まで歩いてるとこ? 一人で? 誰かと一緒?』
「えっ 音葉ちゃんなんで佐藤君と一緒にいるってわかったの!?」
実は家からじゃなくて、どこかから見てるんじゃなかろうか? スマホ片手に突然キョロキョロ辺りを窺い出した私を、佐藤君が笑いながら見ている。
『いや、サトウクンと一緒なのは分からなかったけど、紫音ちゃんを夜道に一人置いとくのはすごく心配だったから誰かといたらいいなって思ったの、送ってくれてるの?』
「うん、そう駅まで」
『そ、こっちの駅に着く時間、電話かメールを頂戴。きっとお父さんがダッシュで迎えに行くから」
「別にいいよ、迎えなんて。家まで五分もかからないし」
『ダーメ。いいから言うとおりにしなさい。命令。破ったらもっと恥ずかしい服カバンにいれちゃうからね』
なんなのその罰ゲーム……別に入れられてても着なきゃいいじゃんと思いながら、適当に返事をして電話を切る。
切った後、結局役に立ってくれた服のお礼を言い忘れたことに気付いたけど、帰ってから言えばいいかと思いなおす。
「すみません、話し込んじゃって」
また立ち止まって、電話が終わるのを待ってくれていた佐藤君に謝る。
「いいよ、でも今調べたら、上りも下りもあと五分後のヤツ逃したら、次は一五分以上待たなきゃダメみたいだ」
私が電話をかけている間に、自分のスマホで調べてくれていたらしい佐藤君の左手が私の右手を掴む。
「急ごう」
佐藤君が早足に、私は若干駆け足に。手をつないだまま、夜の繁華街を駅まで急いだ。
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