やさしいキスの見つけ方

神室さち

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AFTER DAYS 終わらない日常

267 草野君香の視点 3

 
 
 
「白身、お前よくそんなことが理路整然と出てくるな」
「キミちゃんに『どうして?』って聞かれるの、慣れてますから」
「でもコイツ、多分半分も理解してないぞ」
「いいんです。ちゃんと説明したらわからなくても納得してくれるから」
 ………ほんとのことだから言い返せないわ。
「でもこれすっごい、難しいよ。ほんとにこれ、因数分解の問題? ワケわかんなくても引っかかれバカヤロウな雰囲気ビシバシ伝わってくるよ。ナニコレ、最後の問題って配点二十五点!? これ一問落としたら七十五点しか取れないの? いなりんって昔のほうがいじわるだったんだねー ひぎゃ」
 いじわる、って言ったあたりでまたでっかい手に頭が固定されて、親指と人差し指で両側からぎりぎり。
「いたいいたいいたいいたいっ!! ゴメンナサイ、もう言いませんっ まじめにやります」
 必死で謝ったら、手が外れた。人間の頭がつかめる手って、ムダにでかいと言っていいよね。
「ちなみにそのテストの最高点は九十八点で……」
「九十八!?」
 ひいぃぃぃ。きっと夏清ちゃんだ。
「最低点は十二点」
 それはきっとリカちゃんだ……
「決めたわ。十二点より上になるようにする」
「あほう。せめて倍取らないと赤点だ。それにお前ら、今は教科書もノートも見放題だろうが」
「見、見てもわからないもん……でもこの最後の問題をインスピレーションで……答えをっ! そしたら一気に二十五点よ」
 こめかみに両手を当てて脳内にいるプチキミカーズ総動員。
「キミちゃん……数学の文章題とかは、解き方のプロセスと答えが全部あって配点どおりの点数がもらえるんだよ。答えだけだと普通半得点。そういえばキミちゃんって中学の頃こういう問題、丸暗記で思い切りヤマあてて正解するか、無回答かどっちかだったよね……」
「え?」
 はん、とく、てん?
「お前、中身、草野そっくり……答えしか書いてなかったら白身のいうとおり十二点だからな、その問題。答えがあってるのに点数半額ってなんだっていちゃもんつけるなよ」
 飽きれたようないなりんの声に顔をあげると、本当にバカにした顔でため息ついてるの。ちょっとまって。点数半額でいちゃもんって……
「……じゃあ、リカちゃんはココの答えだけ合ってたんですか……」
「リカちゃんらしいわ」
 シロちゃんも妃和も私と同じ考えだったみたいで、同時にため息をついている。
「この問題、正解したのは草野だけだったからな。ムカつくことに」
 ええええっ!? 夏清ちゃん間違っちゃったんですか? でも二点しか減点されてないってことは、ものすごく惜しい不正解だったんだろうな……っていうより、ものすごく些細なミスで減点されちゃったんだろうな……やっぱりいじわるじゃん。
「解きます」
 そう言って、座りなおしたシロちゃんの目つきが変わる。
「私も、現国と世界史は終わったから、まじめにやろうかなー数学」
 終わったの!?
「見せないから」
「けちーっ」
 上履きをぱたぱたさせながら抗議していたら、前のほうの席についていた先輩がこっちを振り向いた。
「先生」
 ごめんなさい。うるさかったですか? うるさかったですね。ハイ。もう静かにします。
「なんだ?」
「イエ……電話、鳴ってますけど」
 あ、ほんとだ。私の頭掴みにきたとき、手に持ってたの教卓に置いてたもんねー。鳴ってる鳴ってる。
「いっ」
「うわっ」
「ったー」
 擬音ひとつだと、すごくしょぼくて鈍い音だったから、それをみていた人の口から、思わずでた言葉。何のことはなくて、足元見えてなかったいなりんがむこうずね打ったの。にぶーく。慌てなくてもさ、昨日の練習中にもあったじゃない『ごめん、治まっちゃったから迎えに来て』
 そんなこと思いながらこっそりあとくっついていって、こっそり近くで電話の内容チェーック。そのあたりは抜かりないです。私。
「もしもしっ!?」
 そんな大きな声出さなくても聞こえるってば。
 教壇のところは一段高くなってるから、そっちから回り込んで、なおかつ教卓の上に上って、耳の位置をいなりんと同じ高さに調整。
『………………先生?』
 電話の向こうの夏清ちゃんもいなりんの大声に吹き飛ばされたのか、返事がすごく遅かった。
『あの、ね………ごめん……』
 ああ、やっぱり。いつもと同じだ。おんなじだよーって顔してみんなのほう見たら、それでも期待してたらしくて、なんとなく緊張してた空気がため息といっしょにへにゃっとなる。
 
 
『…………もう生まれちゃった』
 
 

 ………………………………



「えええええっ!?」



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