165 / 259
AFTER DAYS 終わらない日常
267 草野君香の視点 4
『…………もう生まれちゃった』
………………………………
「えええええっ!?」
「うわっ! キミちゃんっ!!」
「君香なにやって……っ!!」
「あれ?」
えーっと。
「そんなところで立つなー!!」
視界がナナメ。
「いったー……い」
「痛いのはこっちだ早く降りろっ!!」
ちょっとびっくりしちゃってよくわかんないんだけど、とにかく私、教卓傾かせて落ちたみたい。教卓もコケてるから。で、杉本前キャプテンが下敷きになってるの。
「ナイスキャッチですキャプテン!! あの時もこのくらいカッコよくフライが取れてたらよかったですよね!!」
「君香お前……恩人の古傷えぐってるんじゃないっ! そんなことどうでもいいから早くどけ!! 人の上で座りなおすな!!」
……ゴメンナサイ。でも杉本前キャプテン、いつからここに?
「え? 音? 気にするな、なんでもないなんでもない。で? ああ、そうか。連絡? そんなもんあとから俺がしとくから休んどけ。じゃあ今から行くから」
いなりん病院行っちゃうの? じゃあ今日はこれで……
「いいとこに来たな、杉本」
電話を切ったいなりんがにっこり笑って杉本前キャプテンが起き上がるのに手を貸してる。私は? 私は放置ですか!? 女の子なのにっ!!
「ええ、まあ。自分の息抜きも兼ねて陣中見舞いに。で、何があったんですか?」
陣中見舞い? あ、ほんとだ、私の下敷きになったとき放り投げたのだと思われるお菓子やジュースが散らばってる。
「ちょっと病院行ってくるから、俺がいない間こいつら見ててくれ。一人も逃がすなよ」
「えーっ」
「やかましい。お前が一番時間がかかるだろうが。予定してる時間までに終わらなかったらお前だけおいてカギかけて帰るからな」
いぃいぃやーぁーーぁあっ!!
「あ、生まれたんですか? おめでとうございます」
あ。お祝い言うの。
忘れてた。
忘れていたのは私だけじゃなかったみたいで、いた人間がいっせいに、なんていうか体育会系イントネーションで『おめでとうございます』合唱。
「おう。じゃあな」
「マッテクダサイ!!」
「あ?」
そのままでていこうとしたいなりんの背広のすそを掴まえる。
「どっち?」
自分でいうのも変だけど、目がキラキラしてると思う、今。
「どっち? ねえ、男の子と女の子っ! どっちだったんですかー?」
「何でお前に言わなきゃなんねーんだ」
「だって! 聞かなきゃ気になってもう勉強どころじゃありません!!」
「賭けの配当が、か?」
「え?」
ナンデバレテルノ?
「お前が俺に敬語を使うときはなんか企んでるときだからな」
げ。
「や、やだなー ソンナコトシテナイヨー」
「どもりながら棒読みで、目ぇ泳がせてなに言ってやがる」
……………ダメか……しかたないな、リカちゃんが夏清ちゃんに教えてもらうまで待つか……だいたいさー今は生まれる前にわかるもんなのに、生まれてからのお楽しみとか言って、聞かないでいるんだもんこの夫婦。
「……それじゃあ僕が責任を持ってリカちゃんから集めた賭け金を没収して……現金は問題になるからダメでも出産祝いに何か買いますから、教えてもらえませんか?」
あああっ シロちゃんっ!! アナタ、なんてことをっ この賭けの元締めまでばらしたし……
でも、散らばったお菓子やジュースを拾うのを中断して、立ち上がってまじめな顔でそう言ったシロちゃんをみて、教室の前にある出入り口の戸に手をかけたいなりんが振り返ってちょっとだけ笑った。
先生が一度、目を閉じて、息を吸って。でも緩んだカオ引き締めるのに失敗してるよ。
どきどきって音が背景に大きな文字であるような、そんなひとコマ分の沈黙。賭けとかそういうのじゃなくても、やっぱりどきどき。
いなりんの唇が、やたらゆっくり動いた気がした。
「……ついてたってさ。男だよ」
あなたにおすすめの小説
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる
奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。
両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。
それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。
夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
小野寺社長のお気に入り
茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。
悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。
☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。
☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。