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12 2回目の初夜
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さて2回目の初夜だが、それはもう緊張している。
(レオンの時は全く持って緊張しなかったのになぁ)
正直あの時はどうでもよかったので、ただ淡々とコトを済ませればいいと思っていた。愛がなくてもやることはやれる。
今こうやって緊張しているのは、リーベルトがイケメンだからではない。私は彼に好意を持っているからだ。
(ああ、好きになりたくない……)
好きになると裏切られた時がキツい。魂に刷り込まれるほどの傷になる。それはもう嫌というほど知っているのだ。だからわざわざ愛のない結婚を選んでここまで来たというのに。
(こんなこと考える時点でもうダメなんだろうな)
恋のタイミングなんて自分で選べはしないのだ。
(落ち着け! 前世をカウントしたら私の方が歳上よ! 大人の余裕を見せつけなきゃ!)
リーベルトが待つはずの部屋の前で体が固まる。また別の女がこの部屋の中に居たら……。
(弱気は禁止!)
せっかく前世でやれなかったことをやり遂げたのに。いい加減引き摺るのはやめなければ。
モタモタしている気配でバレたのか、扉の方が勝手に開いた。
「お待ちしてました」
いつも通りの優しい笑顔で迎えてくれた。ああ! なんでかっこいい上に色っぽいの! こんなの無理無理!
(ウワ! ウワァァァァ!!!)
あれだけ余裕を演じようと決めていたにも関わらず、ただドギマギと挙動不審に動く新婦になってしまった。
ああダメだ。例え裏切られる不安が付き纏ったとしても、彼への想いを止められそうにない。
私の緊張が伝わったのか、リーベルトはベッドに腰掛けてそのまま話をしてくれた。
「以前、愛のない結婚がいいとおっしゃっていましたね」
「……覚えててくれたんですか?」
8年も前の話だ。よく覚えていたな。
「そりゃあ皆の憧れの10歳のお姫様が、愛はいらないなんておっしゃられたら……忘れられませんよ」
そうやって優しく髪の毛を撫でてくれた。それだけで胸の鼓動が早くなる。こんな甘い夜が来るなんて予想していなかった。
「理由をおうかがいしても?」
目を合わせて、真剣な顔でこちらを見てくれた。
「リーベルト様は、政略結婚はお嫌ですか?」
「いいえ。ですが、出来ればせっかく結婚した方とお互いに尊敬しあいたいと思っています。少しずつでも」
そうして一呼吸おいてから、
「一緒に幸せになりましょう」
そう言ってくれた。
(別に気張らなくっていいんだわ)
悲観しすぎる必要も期待しすぎる必要もない。
「愛した後で裏切られるのが怖かったのです」
そうして少しだけ『夢』の話をした。大人になった自分が愛した人に裏切られ、深く傷つく話を。
「その『夢』が現実になるのが怖くて、愛する人と結ばれることを避けたのです……」
そして実際裏切られた。愛する人じゃないけど。それはリーベルトも知っている。
「『夢』は乗り越えられましたか?」
「そうですね。それはもう」
レオンにくれてやった右ストレートを再現してみせた。リーベルトは腹を抱えて笑ってくれた。そうして涙を拭きながら、
「では、これからはその『夢』の後の話ですね」
「え?」
「ちょうど『夢』と似たようなことがあったことですし、その後のお話を一緒に作りましょう」
そういえば、仕返しした後のことはそんなに考えてなかったな。ただ、傷つかずに生きていければいいと思ってた。
「お姫様は別の優しい王子様と結婚して、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。で、終わる物語です」
そう言って再び真剣な目で見つめられ、そのまま彼の唇を受け入れた。
ベッドの中でまどろみながら、幸せな時間を過ごした。リーベルトは私の髪を気に入ってくれたようで、何度も撫でたり、手櫛をしてみたり、クルクルと指に巻いてみたりと遊んでいる。
「……実は遊学が終わった後、何度かお見掛けしていたのです」
「そうだったんですか? 声をかけてくださればよかったのに」
「年々美しくなる貴方がどんどん遠くに行くようで寂しくて……」
今度は額にキスをする。
「それにあなたは政略結婚をお望みでしたから……もし私の気持ちに気が付けば二度と近づけないと思ったのです」
そして、私がレオンと婚約を決めた時に王位継承権を放棄したのだと話してくれた。
「……結婚式、貴方が他の誰かの妻になる瞬間を見たくなくて、ワザと遅れて帰国したと言ったら怒りますか?」
「そうだったんですか!?」
そして少しだけ困ったように笑いながら、
「すみません」
と、小さく呟いた。
「今、私も貴女の気持ちがよくわかります。愛する人に裏切られる怖さが」
「リーベルト様……」
「2人で、少しずつ積み重ねていきましょう。信用と信頼と愛情を」
「……はい」
そう言ってまたキスをした。
リーベルトと結婚した後も、ふとした時にあの前世の記憶が甦らないわけではなかった。だがその度に自分の拳を前に出すと、なんだかスッキリできた。
(その時はまた、ブン殴ればいい話ね)
だから私は恐れずに、今の彼を愛することにした。私に誠実に向き合ってくれる今の彼を信じることにした。そして少しずつ少しずつ、思い出す頻度も減っていった。
そして私、アイリスと夫リーベルトはいつまでも仲良く幸せに暮らしましたとさ。
(レオンの時は全く持って緊張しなかったのになぁ)
正直あの時はどうでもよかったので、ただ淡々とコトを済ませればいいと思っていた。愛がなくてもやることはやれる。
今こうやって緊張しているのは、リーベルトがイケメンだからではない。私は彼に好意を持っているからだ。
(ああ、好きになりたくない……)
好きになると裏切られた時がキツい。魂に刷り込まれるほどの傷になる。それはもう嫌というほど知っているのだ。だからわざわざ愛のない結婚を選んでここまで来たというのに。
(こんなこと考える時点でもうダメなんだろうな)
恋のタイミングなんて自分で選べはしないのだ。
(落ち着け! 前世をカウントしたら私の方が歳上よ! 大人の余裕を見せつけなきゃ!)
リーベルトが待つはずの部屋の前で体が固まる。また別の女がこの部屋の中に居たら……。
(弱気は禁止!)
せっかく前世でやれなかったことをやり遂げたのに。いい加減引き摺るのはやめなければ。
モタモタしている気配でバレたのか、扉の方が勝手に開いた。
「お待ちしてました」
いつも通りの優しい笑顔で迎えてくれた。ああ! なんでかっこいい上に色っぽいの! こんなの無理無理!
(ウワ! ウワァァァァ!!!)
あれだけ余裕を演じようと決めていたにも関わらず、ただドギマギと挙動不審に動く新婦になってしまった。
ああダメだ。例え裏切られる不安が付き纏ったとしても、彼への想いを止められそうにない。
私の緊張が伝わったのか、リーベルトはベッドに腰掛けてそのまま話をしてくれた。
「以前、愛のない結婚がいいとおっしゃっていましたね」
「……覚えててくれたんですか?」
8年も前の話だ。よく覚えていたな。
「そりゃあ皆の憧れの10歳のお姫様が、愛はいらないなんておっしゃられたら……忘れられませんよ」
そうやって優しく髪の毛を撫でてくれた。それだけで胸の鼓動が早くなる。こんな甘い夜が来るなんて予想していなかった。
「理由をおうかがいしても?」
目を合わせて、真剣な顔でこちらを見てくれた。
「リーベルト様は、政略結婚はお嫌ですか?」
「いいえ。ですが、出来ればせっかく結婚した方とお互いに尊敬しあいたいと思っています。少しずつでも」
そうして一呼吸おいてから、
「一緒に幸せになりましょう」
そう言ってくれた。
(別に気張らなくっていいんだわ)
悲観しすぎる必要も期待しすぎる必要もない。
「愛した後で裏切られるのが怖かったのです」
そうして少しだけ『夢』の話をした。大人になった自分が愛した人に裏切られ、深く傷つく話を。
「その『夢』が現実になるのが怖くて、愛する人と結ばれることを避けたのです……」
そして実際裏切られた。愛する人じゃないけど。それはリーベルトも知っている。
「『夢』は乗り越えられましたか?」
「そうですね。それはもう」
レオンにくれてやった右ストレートを再現してみせた。リーベルトは腹を抱えて笑ってくれた。そうして涙を拭きながら、
「では、これからはその『夢』の後の話ですね」
「え?」
「ちょうど『夢』と似たようなことがあったことですし、その後のお話を一緒に作りましょう」
そういえば、仕返しした後のことはそんなに考えてなかったな。ただ、傷つかずに生きていければいいと思ってた。
「お姫様は別の優しい王子様と結婚して、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。で、終わる物語です」
そう言って再び真剣な目で見つめられ、そのまま彼の唇を受け入れた。
ベッドの中でまどろみながら、幸せな時間を過ごした。リーベルトは私の髪を気に入ってくれたようで、何度も撫でたり、手櫛をしてみたり、クルクルと指に巻いてみたりと遊んでいる。
「……実は遊学が終わった後、何度かお見掛けしていたのです」
「そうだったんですか? 声をかけてくださればよかったのに」
「年々美しくなる貴方がどんどん遠くに行くようで寂しくて……」
今度は額にキスをする。
「それにあなたは政略結婚をお望みでしたから……もし私の気持ちに気が付けば二度と近づけないと思ったのです」
そして、私がレオンと婚約を決めた時に王位継承権を放棄したのだと話してくれた。
「……結婚式、貴方が他の誰かの妻になる瞬間を見たくなくて、ワザと遅れて帰国したと言ったら怒りますか?」
「そうだったんですか!?」
そして少しだけ困ったように笑いながら、
「すみません」
と、小さく呟いた。
「今、私も貴女の気持ちがよくわかります。愛する人に裏切られる怖さが」
「リーベルト様……」
「2人で、少しずつ積み重ねていきましょう。信用と信頼と愛情を」
「……はい」
そう言ってまたキスをした。
リーベルトと結婚した後も、ふとした時にあの前世の記憶が甦らないわけではなかった。だがその度に自分の拳を前に出すと、なんだかスッキリできた。
(その時はまた、ブン殴ればいい話ね)
だから私は恐れずに、今の彼を愛することにした。私に誠実に向き合ってくれる今の彼を信じることにした。そして少しずつ少しずつ、思い出す頻度も減っていった。
そして私、アイリスと夫リーベルトはいつまでも仲良く幸せに暮らしましたとさ。
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応援いただきとっても光栄です。
あれこれ模索しながら書いておりますので、もしお口に合うものがあいましたら
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本当にありがとうございました!
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