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第1章 棲家と仕事
第5話 tell me about 異世界
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「トリエスタですか!?」
「はい。その街の知り合い……の知り合いに会いに行こうと思っていて」
カルロ・グレコ。彼に会いに行こうと思い立ってついに十日が過ぎようとしていた。アルフレドは二日目にしてよろよろと歩けるまで回復していたので、彼がこの家を去るタイミングで森を出るところまでついていってもいいか尋ねたのだ。
二日間、アルフレドは食事を除いてずっと眠っていた。それでようやく痛みは引き、体も動くようになっていた。
今は余っている寝室で寝てもらおうと、ちょうど階段をよっこいしょと上がっている。
(あー……嫌な予感……)
街の名前を聞いただけであまりにも驚く彼の表情で、この後の話が決していいものではないと蒼は気が重くなる。
「トリエスタは十日前……魔王軍の襲撃に遭っています……俺もそこにいて……」
「……は?」
十日前とは蒼がこの世界に降り立った日だ。
(リ……リルケルラァァァ!!?)
そう蒼が心の中で叫び声を上げたのは言うまでもない。再び『安全 とは』とネットで検索したい衝動に駆られる。
「ま、まだいるんですか……魔王軍……」
アルフレドの話ではトリエスタとこの謎の森はそれほど離れていない。そこはリルケルラのいう通りだったようだ。そのためここも危ないのではないかと嫌な汗が出てくる。
「いえ。トリエスタは元々魔王軍には備えている街ですし、なんとか持ち堪えました。……ただ前線で戦っていた兵の中にトリエスタ領主のご子息がいて攫われてしまったのです」
助けに向かった先に待ち受けていたのは、魔王の配下ではなかった。
「魔王に与する人間がいたのです」
信じられないと思い出して顔が青くなっている。アルフレドは騙し討ちされたのだ。なんとか救出に向かった他の仲間達と領主の息子を助け出し、彼は殿を務め敵を食い止めた。なんとか倒し切りったが意識を失い、なぜかこの森の中で倒れていたと。
「今更こんな話をすみません……」
と暗い顔で蒼に話す。
「いや……私も聞かなかったですし……」
(『ここは俺に任せて先に行け!』をやり切ったってことよね!?)
このエピソードで、蒼はアルフレドが思っていたよりずっと実力のある人物なのだと知った。
「でも何のためにそんな回りくどいことを?」
「おそらく本命は別にいたのです。執拗に狙われていた魔術師がいました……彼は祖先に魔王討伐の際、大きな功績を残した人物がいると言っていましたから、芽を摘んでおきたかったのでしょう」
翔が『勇者の末裔』ということを重要視されていたのと似たような理由かと、すぐに蒼は納得する。
領主息子救出部隊は急遽集められたとはいえ精鋭揃いだった。魔王軍にしてみれば、不意打ちで人類側の有力な戦力を多少削れるだけでも儲け物くらいの考えだったのかもしれない、ともアルフレドは語っていた。
「お知り合いの方が兵士でなければ、おそらく心配されているようなことにはなっていないとは思いますが……」
寝室の扉を開けて誘導する蒼に礼を言いながら、アルフレドは彼女が少しでも安心するように声をかけた。明らかに彼女の雰囲気が沈んでいたからだ。知り合いの安否が心配なのだろうと。だが実際は少し違う。
(ガチでやばい世界じゃん!)
とんでもないところに来てしまったと、あらためて実感する。というより、この森の中はずいぶん安全なのだと思い知った。リルケルラ様様である。
(あの一週間、森の中から出れなかったのってもしかして!?)
蒼の脳内でリルケルラが、やっべ~! と大慌てで『先輩』の指示を仰ぎ、どうにか自分を森から出さないよう対策を講じている姿が思い浮かんだ。
おやすみなさい、と声をかけ蒼も自分の寝室のベッドに寝転がる。そうしてこれからどうするか、具体的に考え始めた。というより、どう嘘をつくべきか。あのアルフレドに。
(やっぱり何にも知らなさすぎておかしいよね~)
この世界の常識も何も知らないのだ。リルケルラから教えてもらった情報はあまりにも漠然としすぎた。アルフレドは何も言わないが、おそらく何か変だくらいには思っている。
彼はいい人だ。おそらく、信用してもいい相手だ。この世界で初めに出会ったのがアルフレドだったことは幸運と言っていいだろう。しかしだからと言って、蒼は自分の現状をペラペラと話すことは躊躇ってしまう。そしておそらく、アルフレドも同じだ。彼もなにか隠している。
「話せることだけ話すか……」
何も嘘をつくことはない。言えないことは言えないでいいだろう。
(というか、嘘をつくと後々面倒なんだよな~)
嘘に嘘を重ねて、自分がどんな嘘をついたか忘れてしまう。
翌朝の朝食を済ませた後、蒼は意を決してアルフレドに教えを乞うことにした。
(そういえばこのダイニングテーブルで初めてご飯食べたな)
食後に出したのは暖かいティーバッグの紅茶だったが、アルフレドは香りを楽しんでいる。
「アルフレドさん。私、実はこの森から一度も出たことがないんです」
「……そうですか」
アルフレドは驚かなかった。
「それにアルフレドさんがそんな風に納得したような表情になるのかもわからないんです」
「……アオイ様のお生まれはこの森ですか?」
「違います。……どこかは言えません」
少し困った笑顔でアルフレドが蒼を見つめた。訳ありだとはわかっていたが、思ったより深刻そうだと。
「この世界のこと……なにも知らないんです……本当になにも……」
蒼は緊張してきた。自分がとんでもなく変なことを言いながら、漠然としたことを尋ねている。教えてくれと言いながら、自分は『言えない』を連呼している始末。失礼な態度にならないよう、丁寧に伝えてはいるが、アルフレドにドン引きされるのは少し嫌だな……とも思っている。
「……わかりました。では何からお話ししましょう。質疑応答式の方がいいでしょうか?」
なぜ? と尋ねないことに驚いた顔をした蒼を見て、アルフレドは優しく笑いかけた。
「お察しの通り私にも言えないことがありますので」
お互い様です。と。
「アオイ様にはこんなによくしていただいたのに、お返しできることが森を出ることだけというのが申し訳なかったのです。他にできることがあってよかった」
(やっぱりアルフレドさんも訳ありだったか~)
彼は肩書きのイメージの割に品がいい。異世界の教育レベルは知らないが、教養もあるようにも見えた。
「ありがとうございます」
蒼は深々と頭を下げた。
「ではまず、俺がなんでアオイ様がこの森から出たことがない、という話に納得したかですが」
ここは『リルの森』と呼ばれる神域とされている場所で、そんじょそこらの人間は中に立ち入ることすらできない。謎の力に弾かれてしまうのだと。だからそこに住んでいアオイは『特別な人間』であることは間違いない。
「俺は最初、アオイ様が御使リルだと思ったんですよ」
ハハハと照れるように笑った。だが蒼は引き攣って笑っている。
(御使リルってまさか……)
その表情を、蒼が知識がないことを恥じたのだと勘違いしたアルフレドは慌てて情報を付け加える。
「御使リルはこの世界の創造神を支える柱の一人です。人々を怪我や病から守り、健康長寿の加護を与えてくださると言われています」
最近では『守りを司る柱』と解釈を広げる人もいますよ、とも。
(わ! それ貰ったぞ私!)
同時に、やっぱりそういう存在だったかと納得する。
(じゃああの『先輩』も?)
驚きながらも興味津々という蒼をみて、アルフレドはさらに話を続けた。
「聖典によると御使リルは少し……なんというか……おっちょこちょいな面が見られるのですが、それが結果的に全ていい風に転がるのです。そういう点も含めてとても親しみやすい柱として人気もありますよ」
そうなんだ~と蒼は作り笑顔を浮かべるしかない。
(いいように転んでくれるでしょうねー!?)
祈ればあの管理官に通じるのか知りたいところだ。
「トリエスタにはリルを祀った大きな神殿があるんです。街についたらご案内しましょう」
「街まで行ってくれるんですか!?」
「アオイ様が嫌でなければ。どの道俺もトリエスタへ行こうと思ってたんです。一緒に戦った仲間がどうなったか気になりますし」
(優しい~!!! これ、私が何も知らない状態で街に行ったら困るからだよね!?)
蒼が気にしないような理由にしたのは明らかだった。
「ありがとうございます!」
その後は直近の心配事である魔王軍について尋ねたり、お金の稼ぎ方を相談したりと湯水のように聞きたいことが溢れてくる。もちろんアルフレドはどんな質問にも誠実に答えてくれた。おかげでなんとかこの異世界で普通の振る舞いができるかもしれないと、蒼は自信も湧いてくる。
だが彼は何もアオイに尋ねることはしなかった。それが彼の中でルールになっているかのように。
「あの。アルフレドさんもあんまり気にしないで聞きたいことあったら聞いてくださいね。言えないことはやっぱり言えないですけど」
「では一つだけ」
アルフレドは真面目な顔をしていた。
「アオイ様は御使リルの眷属でいらっしゃいますか?」
「違います!!!」
(眷属ってあれでしょ!? 従者みたいな関係の……)
そこで蒼はなぜアルフレドがアオイ『様』と呼び続けているのか合点が言った。
(本人じゃなくとも関係者だと思われてたのか!)
あまりにハッキリきっぱりと蒼が否定したので、アルフレドはキョトンとした顔になっていた。どうやら『実は眷属です』もしくは『言えません』という答えが返ってくると思っていたようだ。
「そうですか……」
「だからもう『様』はつけなくても大丈夫ですよ。なんだか落ち着かないですし」
それに距離も感じてしまう。現時点では彼が唯一の話し相手。もう少しフランクにいきたい。
「わかりました。では俺のことはアルフレドと」
フッと笑う彼を見て、蒼はアルフレドが同じようん考えてくれているのだとわかり嬉しくなる。彼としても楽なのだ。秘密を秘密としていられる相手が。嘘をつくことなく過ごせる相手が。
「そう言うならアオイと呼んでくださいね」
「ではそのように」
その日、蒼は異世界に降り立って初めて三時のおやつを用意した。おしゃべりは尽きない。アルフレドは甘いお菓子もしょっぱいお菓子も大喜びで食べあげた。
「はい。その街の知り合い……の知り合いに会いに行こうと思っていて」
カルロ・グレコ。彼に会いに行こうと思い立ってついに十日が過ぎようとしていた。アルフレドは二日目にしてよろよろと歩けるまで回復していたので、彼がこの家を去るタイミングで森を出るところまでついていってもいいか尋ねたのだ。
二日間、アルフレドは食事を除いてずっと眠っていた。それでようやく痛みは引き、体も動くようになっていた。
今は余っている寝室で寝てもらおうと、ちょうど階段をよっこいしょと上がっている。
(あー……嫌な予感……)
街の名前を聞いただけであまりにも驚く彼の表情で、この後の話が決していいものではないと蒼は気が重くなる。
「トリエスタは十日前……魔王軍の襲撃に遭っています……俺もそこにいて……」
「……は?」
十日前とは蒼がこの世界に降り立った日だ。
(リ……リルケルラァァァ!!?)
そう蒼が心の中で叫び声を上げたのは言うまでもない。再び『安全 とは』とネットで検索したい衝動に駆られる。
「ま、まだいるんですか……魔王軍……」
アルフレドの話ではトリエスタとこの謎の森はそれほど離れていない。そこはリルケルラのいう通りだったようだ。そのためここも危ないのではないかと嫌な汗が出てくる。
「いえ。トリエスタは元々魔王軍には備えている街ですし、なんとか持ち堪えました。……ただ前線で戦っていた兵の中にトリエスタ領主のご子息がいて攫われてしまったのです」
助けに向かった先に待ち受けていたのは、魔王の配下ではなかった。
「魔王に与する人間がいたのです」
信じられないと思い出して顔が青くなっている。アルフレドは騙し討ちされたのだ。なんとか救出に向かった他の仲間達と領主の息子を助け出し、彼は殿を務め敵を食い止めた。なんとか倒し切りったが意識を失い、なぜかこの森の中で倒れていたと。
「今更こんな話をすみません……」
と暗い顔で蒼に話す。
「いや……私も聞かなかったですし……」
(『ここは俺に任せて先に行け!』をやり切ったってことよね!?)
このエピソードで、蒼はアルフレドが思っていたよりずっと実力のある人物なのだと知った。
「でも何のためにそんな回りくどいことを?」
「おそらく本命は別にいたのです。執拗に狙われていた魔術師がいました……彼は祖先に魔王討伐の際、大きな功績を残した人物がいると言っていましたから、芽を摘んでおきたかったのでしょう」
翔が『勇者の末裔』ということを重要視されていたのと似たような理由かと、すぐに蒼は納得する。
領主息子救出部隊は急遽集められたとはいえ精鋭揃いだった。魔王軍にしてみれば、不意打ちで人類側の有力な戦力を多少削れるだけでも儲け物くらいの考えだったのかもしれない、ともアルフレドは語っていた。
「お知り合いの方が兵士でなければ、おそらく心配されているようなことにはなっていないとは思いますが……」
寝室の扉を開けて誘導する蒼に礼を言いながら、アルフレドは彼女が少しでも安心するように声をかけた。明らかに彼女の雰囲気が沈んでいたからだ。知り合いの安否が心配なのだろうと。だが実際は少し違う。
(ガチでやばい世界じゃん!)
とんでもないところに来てしまったと、あらためて実感する。というより、この森の中はずいぶん安全なのだと思い知った。リルケルラ様様である。
(あの一週間、森の中から出れなかったのってもしかして!?)
蒼の脳内でリルケルラが、やっべ~! と大慌てで『先輩』の指示を仰ぎ、どうにか自分を森から出さないよう対策を講じている姿が思い浮かんだ。
おやすみなさい、と声をかけ蒼も自分の寝室のベッドに寝転がる。そうしてこれからどうするか、具体的に考え始めた。というより、どう嘘をつくべきか。あのアルフレドに。
(やっぱり何にも知らなさすぎておかしいよね~)
この世界の常識も何も知らないのだ。リルケルラから教えてもらった情報はあまりにも漠然としすぎた。アルフレドは何も言わないが、おそらく何か変だくらいには思っている。
彼はいい人だ。おそらく、信用してもいい相手だ。この世界で初めに出会ったのがアルフレドだったことは幸運と言っていいだろう。しかしだからと言って、蒼は自分の現状をペラペラと話すことは躊躇ってしまう。そしておそらく、アルフレドも同じだ。彼もなにか隠している。
「話せることだけ話すか……」
何も嘘をつくことはない。言えないことは言えないでいいだろう。
(というか、嘘をつくと後々面倒なんだよな~)
嘘に嘘を重ねて、自分がどんな嘘をついたか忘れてしまう。
翌朝の朝食を済ませた後、蒼は意を決してアルフレドに教えを乞うことにした。
(そういえばこのダイニングテーブルで初めてご飯食べたな)
食後に出したのは暖かいティーバッグの紅茶だったが、アルフレドは香りを楽しんでいる。
「アルフレドさん。私、実はこの森から一度も出たことがないんです」
「……そうですか」
アルフレドは驚かなかった。
「それにアルフレドさんがそんな風に納得したような表情になるのかもわからないんです」
「……アオイ様のお生まれはこの森ですか?」
「違います。……どこかは言えません」
少し困った笑顔でアルフレドが蒼を見つめた。訳ありだとはわかっていたが、思ったより深刻そうだと。
「この世界のこと……なにも知らないんです……本当になにも……」
蒼は緊張してきた。自分がとんでもなく変なことを言いながら、漠然としたことを尋ねている。教えてくれと言いながら、自分は『言えない』を連呼している始末。失礼な態度にならないよう、丁寧に伝えてはいるが、アルフレドにドン引きされるのは少し嫌だな……とも思っている。
「……わかりました。では何からお話ししましょう。質疑応答式の方がいいでしょうか?」
なぜ? と尋ねないことに驚いた顔をした蒼を見て、アルフレドは優しく笑いかけた。
「お察しの通り私にも言えないことがありますので」
お互い様です。と。
「アオイ様にはこんなによくしていただいたのに、お返しできることが森を出ることだけというのが申し訳なかったのです。他にできることがあってよかった」
(やっぱりアルフレドさんも訳ありだったか~)
彼は肩書きのイメージの割に品がいい。異世界の教育レベルは知らないが、教養もあるようにも見えた。
「ありがとうございます」
蒼は深々と頭を下げた。
「ではまず、俺がなんでアオイ様がこの森から出たことがない、という話に納得したかですが」
ここは『リルの森』と呼ばれる神域とされている場所で、そんじょそこらの人間は中に立ち入ることすらできない。謎の力に弾かれてしまうのだと。だからそこに住んでいアオイは『特別な人間』であることは間違いない。
「俺は最初、アオイ様が御使リルだと思ったんですよ」
ハハハと照れるように笑った。だが蒼は引き攣って笑っている。
(御使リルってまさか……)
その表情を、蒼が知識がないことを恥じたのだと勘違いしたアルフレドは慌てて情報を付け加える。
「御使リルはこの世界の創造神を支える柱の一人です。人々を怪我や病から守り、健康長寿の加護を与えてくださると言われています」
最近では『守りを司る柱』と解釈を広げる人もいますよ、とも。
(わ! それ貰ったぞ私!)
同時に、やっぱりそういう存在だったかと納得する。
(じゃああの『先輩』も?)
驚きながらも興味津々という蒼をみて、アルフレドはさらに話を続けた。
「聖典によると御使リルは少し……なんというか……おっちょこちょいな面が見られるのですが、それが結果的に全ていい風に転がるのです。そういう点も含めてとても親しみやすい柱として人気もありますよ」
そうなんだ~と蒼は作り笑顔を浮かべるしかない。
(いいように転んでくれるでしょうねー!?)
祈ればあの管理官に通じるのか知りたいところだ。
「トリエスタにはリルを祀った大きな神殿があるんです。街についたらご案内しましょう」
「街まで行ってくれるんですか!?」
「アオイ様が嫌でなければ。どの道俺もトリエスタへ行こうと思ってたんです。一緒に戦った仲間がどうなったか気になりますし」
(優しい~!!! これ、私が何も知らない状態で街に行ったら困るからだよね!?)
蒼が気にしないような理由にしたのは明らかだった。
「ありがとうございます!」
その後は直近の心配事である魔王軍について尋ねたり、お金の稼ぎ方を相談したりと湯水のように聞きたいことが溢れてくる。もちろんアルフレドはどんな質問にも誠実に答えてくれた。おかげでなんとかこの異世界で普通の振る舞いができるかもしれないと、蒼は自信も湧いてくる。
だが彼は何もアオイに尋ねることはしなかった。それが彼の中でルールになっているかのように。
「あの。アルフレドさんもあんまり気にしないで聞きたいことあったら聞いてくださいね。言えないことはやっぱり言えないですけど」
「では一つだけ」
アルフレドは真面目な顔をしていた。
「アオイ様は御使リルの眷属でいらっしゃいますか?」
「違います!!!」
(眷属ってあれでしょ!? 従者みたいな関係の……)
そこで蒼はなぜアルフレドがアオイ『様』と呼び続けているのか合点が言った。
(本人じゃなくとも関係者だと思われてたのか!)
あまりにハッキリきっぱりと蒼が否定したので、アルフレドはキョトンとした顔になっていた。どうやら『実は眷属です』もしくは『言えません』という答えが返ってくると思っていたようだ。
「そうですか……」
「だからもう『様』はつけなくても大丈夫ですよ。なんだか落ち着かないですし」
それに距離も感じてしまう。現時点では彼が唯一の話し相手。もう少しフランクにいきたい。
「わかりました。では俺のことはアルフレドと」
フッと笑う彼を見て、蒼はアルフレドが同じようん考えてくれているのだとわかり嬉しくなる。彼としても楽なのだ。秘密を秘密としていられる相手が。嘘をつくことなく過ごせる相手が。
「そう言うならアオイと呼んでくださいね」
「ではそのように」
その日、蒼は異世界に降り立って初めて三時のおやつを用意した。おしゃべりは尽きない。アルフレドは甘いお菓子もしょっぱいお菓子も大喜びで食べあげた。
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