85 / 94
第8章 世界の始まり
第7話 魔王を作った者
しおりを挟む
海底都市アクアネオンの入り口付近——地面が抜ける魔法陣が刻まれた石板の前で、アルフレドとシノノメがライルを連れ出し念入りに確認していた。
「現時点での出入り口はここだけ?」
「そうですね。三百年前まではここ以外に三か所ありましたがすべて潰れています」
無理やり内側から出口をこじ開けようとすれば、海水が流れ込み街が崩壊してしまう。
「ここで勇者を待ってもいいですが……魔法使いの末裔がいるのならなんとかなるでしょう」
そう言ってライルは公的な資料に残っているアクアネオンの入り口付近を回り、周辺の地面にさらさらと指で文字を書く仕草をした。
「……魔力だけで魔術紋を刻んでるんだ」
何をしているのかサッパリわからないといった顔の蒼に、アルフレドがこっそりと耳打ちする。つまり魔力のない蒼には見えないが、アルフレドには見えるすごいことが起こっていた。ライルの手の動きを追うようにアルフレドの瞳が動き、感心しているのがわかる。
「アルフレドさんの魔力もいただけますか? 私の魔力痕だけでは警戒されてしまうかもしれないので」
「あ、はい」
魔法使いの末裔がいるなら知り合いの魔力くらいは見分けられるでしょうと、ライルはさも当たり前のように言っているが、アルフレドに後から聞いた話では、魔力の違いを見分けるのは簡単なことではないということだった。
「なにその筆跡鑑定みたいなやつ!」
こういう時、蒼は魔力持ちがちょっぴり羨ましい。
ライルは仕上げとばかりに指をクルクルと回していた。すると妖精の粉のような光が降り落ち、一瞬蒼にも見えるような文字が浮かび上がりまたすぐに消えた。
「特定の人物にのみ読むことができるようになりました」
「古代魔術ですか?」
「古代……というほどではないですがまあそうです。なんせ古い記憶だけはありますから」
勇者を迎え入れる準備が着々と続けられている。
「あらあんたら……移動屋台のお嬢ちゃん達じゃねぇか! 東の方へ行くって話だったが戻って来たのかい?」
また美味い飯売ってくれるかい? と、ご機嫌な声が少し離れたところから聞こえてくる。
「あれ! 串焼き屋さんだ! お久しぶりです」
センフーの街で知り合った同業の男性がたまたま通りかかった。どうやら仕入れ帰りのようで、小さな荷馬車を引いている。蒼達が浄化したことによって消え去った魔物の森は、今では多くの人が行き交っていた。
「そこになんかあるのかい? この間もじっとそこを見つめてた人がいたけど」
風化した地下鉄の入口のようなアクアネオンへの入口でゴソゴソとなにかをしている蒼達を見て、串焼き屋も不思議に思ったのだ。
「いやぁ~アクアネオンってどんなとこかな~と思って」
蒼はそう笑って誤魔化そうとするが、
「先ほど話されていた我々以外にここにいた人物。どのような人か覚えてますか?」
ライルに会話を奪われてしまう。
「ん? 女の人だったよ。あんたみたいにメガネかけててさ。一人旅だったみたいだからちょっと心配でな」
声をかけたら不敵に笑って去っていったと串焼き屋は教えてくれた。
「アクアネオンを舞台にした演目が天空都市で流行ってるらしいんですよ」
「偏屈な研究者と世間知らずな貴族のご令嬢とのラブロマンスという話ですから、女性人気も高いのでしょうねぇ」
アルフレドとシノノメがいつものポーカーフェイスでありもしない理由を作り、なるほどと串焼き屋が納得したのを確認して見送った。そうして荷馬車が見えなくなったのを確認すると、
「なになになに!?」
蒼以外の三人は揃って何かを探すように凝視し始める。
「アオイ、オルフェを呼んできてくれるかな」
「サニーさんにも来てもらいましょうか」
「フィアさんもお願いします」
切迫した様子に蒼はすぐに理由を教えてもらうのを諦め、急いで鍵を取り出し家の中へと入り、該当人物達を呼び出した。魔力を持つメンバーだ。
「魔力痕を探してください。ほんのわずかでも」
彼らにも詳細は説明せず、とにかく探せとライルは険しい表情のまま指示を出す。
オルフェはまたライルの説明のなさにブチブチと不満を漏らしながらも、グリフォンの姿になり上空から注意深く指示通り魔力の痕を探していた。
(こりゃ私の出番はなさそうね)
蒼の方は彼らの邪魔をしてはいけないと家の中へと戻り、昼食の準備を始める。
「何を探してるんでしょう?」
レーベンも蒼と同じように疑問に感じながら、手際よくピザ生地の上に具材を乗せていく。
「魔力痕を探してるらしいんだけど」
蒼はポテトを揚げていた。
「ワタシの居所が誰かに嗅ぎつけられていないか心配なのだろう」
ミュスティーは動揺もせず、全員分の皿を庭へと運んでいた。最近は人数が増えたので、外にテーブルを置いて食事をすることが多い。
「そうなの!?」
「アクアネオンは有名ですから。探してるんなら、中に入れないっていう確認くらいはするんじゃないでしょうか」
レーベンもそれほど驚いていない。魔王を探すのだからありとあらゆる可能性を辿るのは当たり前。海底都市は、滅びたとはいえネームバリューがある街なのだから、未確認とはいかないだろうと。
「その女……上級神官の誰かか、それともワタシに与する者か」
「う~ん言いたかないけど、私の方を探してる可能性は?」
蒼達は影の勇者と接触している。上級神官の一部が蒼の利用価値を高らかに叫んでいることも知っているので、隙あらば攫っちゃおうくらいには考えている可能性があった。
「それもありそうだ」
あっさりミュスティーは同意する。
「単独行動っていうのも気になりますねぇ」
レーベンはいつの間にかオーブンでピザを焼き始めている。
そうして昼食準備組はゆるゆるとした雑談の中で調理を進めていた。もはやこの世界で最も恐ろしいとされる魔王と同居しているのもあって、危機感に関しての感覚が少々鈍くなっている。
五枚目のピザが焼き上がる少し前に蒼は外の世界にいる魔力持ち組を迎えに行った。どうやら成果はなかったようだ。
「うわぁ~いい匂い!!!」
「この声を聞くと食事の時間だと実感がわくようになった」
アルフレドの食事前の明るい声にミュスティーが反応する。彼は早く食べたいと席について待っていた。彼は魔王だが、先に一人食べ始めるようなことはしない。
「結局なんだったの?」
「我々の追跡者でないかの確認です」
蒼とミュスティーの予想通りだった。結果的には何も見つからなかったが、ドシンと椅子に腰掛けたライルの眉間に皺がよっているのが気になる。サニーの表情も暗い。食事を摂る手もゆっくりだ。
「オルフェさんとミュスティーさんに後でお伺いしたいことが」
ライルの問いかけに何を今更とオルフェはいつも通り上から目線だ。
「なんだね? 私に隠すことなどないのだから今聞きたまえ」
ミュスティーもゴクンとチーズピザを飲み込んだ後でオルフェに同意するよう頷いた。
「では少々嫌な記憶を思い出していただきます」
食事後がいいかと思ったんですが、時間も惜しいので助かりますと淡々と話を続けた。
「あなた方を作った人物の情報をいただきたい」
「覚えていないっ!」
オルフェは即答した。実際彼は瀕死状態でユートレイナまで運ばれたと記録が残っている。
「でもオルフェ。ユートレイナの記憶があったよね?」
「うっ……朧げだが確かにそうだった……」
蒼に指摘されオルフェは素直に認め、腕を組んで記憶を掘り起こす。一方、ミュスティーの方はというと、
「この肉体に入れられる以前は……竜の鱗で作られたガラスの試験管に入れられた上で聖水の水槽にドボンとされていたが……そうだな。確かに普通の『与する者』達とは違う気配があった」
魔王は発生した時点では人格があるわけではなくただの現象。これが発達すると知性が生まれ、まるで人のように言葉を話し活動を始める。
「発生の直後に魔王を捕えていたのか……」
静かに驚愕しているのはアルフレドとシノノメ。この二人は立場上、魔王については詳しい。普通魔王が発生した時点ではどこにいるのかわからないので、御使からその知らせを聞いた時点で上級神官達が血眼になってその存在を探すというのが歴史上の常だった。
なんせその時点で魔王を浄化するのが一番確実に被害を最小限に浄化ができる。
「サニーさんは、覚えておいでなんですね」
穏やかな声色だが、シノノメはしっかりとサニーの方を向いて確認をとる。
「ええ。私もあまりハッキリとした記憶があるわけではないのですが……」
サニーのお腹の中に英雄の末裔の血が通った肉体を作り、そこに魔王を入れ込んだ人物を。
そこでオルフェは気が付いた。
「ん? 私を作ったのは三百年前の研究者だろう? 魔王を作った研究者とは別……ではないということか!?」
そういえば目の前の研究者のような例があることを全員が思い出す。
「そうです。ちょっと心当たりのある人物がいましてね。なのでオルフェさんの記憶の人物とサニーさん、ミュスティーさんが覚えている人物が同一か確かめたいんですよ」
「それを早く言わないか!」
全くいつもいつも言うのが遅いと、ブチブチ文句を言いながらオルフェは難しい顔をしてさらに記憶の底を探し始める。そうして唐突に叫んだ。
「女性だ! 髪は長かった。背はそれほど高くない。声は高かった。それからメガネ! 君のと似ている」
そうしてぐったりとテーブルに寄りかかる。
「すごい! よく思い出したね!」
「ふっ……もっと褒めてくれ」
おぉ~! とオルフェの方を見ている蒼とレーベン。しかしサニーの方はさらに顔色が悪くなっていた。彼女が見た人物と特徴が一致し、ライルの仮説の証明に近づいたからだ。それを見て慌てて二人はサニーに食後の温かいお茶を用意する。
「高い声か……うん。それはワタシの記憶にある感覚と一致する。だがブリベリアで暮らし始めてからは見ていない」
ミュスティーも同意したことにより、より可能性が高まった。
「……オルフェを作った人って確か記録が残ってたよね?」
「そういえば三百年前から受肉の計画があったって……」
蒼とレーベンが以前ミュスティーから聞いた話を思い出していた。
「ソフィリア・サルヴァドラン。オルフェさんをキメラ化した彼女が関わっていると思って行動しましょう」
そう言ったライル・エリクシアは、覚悟を決めたような声だった。
「現時点での出入り口はここだけ?」
「そうですね。三百年前まではここ以外に三か所ありましたがすべて潰れています」
無理やり内側から出口をこじ開けようとすれば、海水が流れ込み街が崩壊してしまう。
「ここで勇者を待ってもいいですが……魔法使いの末裔がいるのならなんとかなるでしょう」
そう言ってライルは公的な資料に残っているアクアネオンの入り口付近を回り、周辺の地面にさらさらと指で文字を書く仕草をした。
「……魔力だけで魔術紋を刻んでるんだ」
何をしているのかサッパリわからないといった顔の蒼に、アルフレドがこっそりと耳打ちする。つまり魔力のない蒼には見えないが、アルフレドには見えるすごいことが起こっていた。ライルの手の動きを追うようにアルフレドの瞳が動き、感心しているのがわかる。
「アルフレドさんの魔力もいただけますか? 私の魔力痕だけでは警戒されてしまうかもしれないので」
「あ、はい」
魔法使いの末裔がいるなら知り合いの魔力くらいは見分けられるでしょうと、ライルはさも当たり前のように言っているが、アルフレドに後から聞いた話では、魔力の違いを見分けるのは簡単なことではないということだった。
「なにその筆跡鑑定みたいなやつ!」
こういう時、蒼は魔力持ちがちょっぴり羨ましい。
ライルは仕上げとばかりに指をクルクルと回していた。すると妖精の粉のような光が降り落ち、一瞬蒼にも見えるような文字が浮かび上がりまたすぐに消えた。
「特定の人物にのみ読むことができるようになりました」
「古代魔術ですか?」
「古代……というほどではないですがまあそうです。なんせ古い記憶だけはありますから」
勇者を迎え入れる準備が着々と続けられている。
「あらあんたら……移動屋台のお嬢ちゃん達じゃねぇか! 東の方へ行くって話だったが戻って来たのかい?」
また美味い飯売ってくれるかい? と、ご機嫌な声が少し離れたところから聞こえてくる。
「あれ! 串焼き屋さんだ! お久しぶりです」
センフーの街で知り合った同業の男性がたまたま通りかかった。どうやら仕入れ帰りのようで、小さな荷馬車を引いている。蒼達が浄化したことによって消え去った魔物の森は、今では多くの人が行き交っていた。
「そこになんかあるのかい? この間もじっとそこを見つめてた人がいたけど」
風化した地下鉄の入口のようなアクアネオンへの入口でゴソゴソとなにかをしている蒼達を見て、串焼き屋も不思議に思ったのだ。
「いやぁ~アクアネオンってどんなとこかな~と思って」
蒼はそう笑って誤魔化そうとするが、
「先ほど話されていた我々以外にここにいた人物。どのような人か覚えてますか?」
ライルに会話を奪われてしまう。
「ん? 女の人だったよ。あんたみたいにメガネかけててさ。一人旅だったみたいだからちょっと心配でな」
声をかけたら不敵に笑って去っていったと串焼き屋は教えてくれた。
「アクアネオンを舞台にした演目が天空都市で流行ってるらしいんですよ」
「偏屈な研究者と世間知らずな貴族のご令嬢とのラブロマンスという話ですから、女性人気も高いのでしょうねぇ」
アルフレドとシノノメがいつものポーカーフェイスでありもしない理由を作り、なるほどと串焼き屋が納得したのを確認して見送った。そうして荷馬車が見えなくなったのを確認すると、
「なになになに!?」
蒼以外の三人は揃って何かを探すように凝視し始める。
「アオイ、オルフェを呼んできてくれるかな」
「サニーさんにも来てもらいましょうか」
「フィアさんもお願いします」
切迫した様子に蒼はすぐに理由を教えてもらうのを諦め、急いで鍵を取り出し家の中へと入り、該当人物達を呼び出した。魔力を持つメンバーだ。
「魔力痕を探してください。ほんのわずかでも」
彼らにも詳細は説明せず、とにかく探せとライルは険しい表情のまま指示を出す。
オルフェはまたライルの説明のなさにブチブチと不満を漏らしながらも、グリフォンの姿になり上空から注意深く指示通り魔力の痕を探していた。
(こりゃ私の出番はなさそうね)
蒼の方は彼らの邪魔をしてはいけないと家の中へと戻り、昼食の準備を始める。
「何を探してるんでしょう?」
レーベンも蒼と同じように疑問に感じながら、手際よくピザ生地の上に具材を乗せていく。
「魔力痕を探してるらしいんだけど」
蒼はポテトを揚げていた。
「ワタシの居所が誰かに嗅ぎつけられていないか心配なのだろう」
ミュスティーは動揺もせず、全員分の皿を庭へと運んでいた。最近は人数が増えたので、外にテーブルを置いて食事をすることが多い。
「そうなの!?」
「アクアネオンは有名ですから。探してるんなら、中に入れないっていう確認くらいはするんじゃないでしょうか」
レーベンもそれほど驚いていない。魔王を探すのだからありとあらゆる可能性を辿るのは当たり前。海底都市は、滅びたとはいえネームバリューがある街なのだから、未確認とはいかないだろうと。
「その女……上級神官の誰かか、それともワタシに与する者か」
「う~ん言いたかないけど、私の方を探してる可能性は?」
蒼達は影の勇者と接触している。上級神官の一部が蒼の利用価値を高らかに叫んでいることも知っているので、隙あらば攫っちゃおうくらいには考えている可能性があった。
「それもありそうだ」
あっさりミュスティーは同意する。
「単独行動っていうのも気になりますねぇ」
レーベンはいつの間にかオーブンでピザを焼き始めている。
そうして昼食準備組はゆるゆるとした雑談の中で調理を進めていた。もはやこの世界で最も恐ろしいとされる魔王と同居しているのもあって、危機感に関しての感覚が少々鈍くなっている。
五枚目のピザが焼き上がる少し前に蒼は外の世界にいる魔力持ち組を迎えに行った。どうやら成果はなかったようだ。
「うわぁ~いい匂い!!!」
「この声を聞くと食事の時間だと実感がわくようになった」
アルフレドの食事前の明るい声にミュスティーが反応する。彼は早く食べたいと席について待っていた。彼は魔王だが、先に一人食べ始めるようなことはしない。
「結局なんだったの?」
「我々の追跡者でないかの確認です」
蒼とミュスティーの予想通りだった。結果的には何も見つからなかったが、ドシンと椅子に腰掛けたライルの眉間に皺がよっているのが気になる。サニーの表情も暗い。食事を摂る手もゆっくりだ。
「オルフェさんとミュスティーさんに後でお伺いしたいことが」
ライルの問いかけに何を今更とオルフェはいつも通り上から目線だ。
「なんだね? 私に隠すことなどないのだから今聞きたまえ」
ミュスティーもゴクンとチーズピザを飲み込んだ後でオルフェに同意するよう頷いた。
「では少々嫌な記憶を思い出していただきます」
食事後がいいかと思ったんですが、時間も惜しいので助かりますと淡々と話を続けた。
「あなた方を作った人物の情報をいただきたい」
「覚えていないっ!」
オルフェは即答した。実際彼は瀕死状態でユートレイナまで運ばれたと記録が残っている。
「でもオルフェ。ユートレイナの記憶があったよね?」
「うっ……朧げだが確かにそうだった……」
蒼に指摘されオルフェは素直に認め、腕を組んで記憶を掘り起こす。一方、ミュスティーの方はというと、
「この肉体に入れられる以前は……竜の鱗で作られたガラスの試験管に入れられた上で聖水の水槽にドボンとされていたが……そうだな。確かに普通の『与する者』達とは違う気配があった」
魔王は発生した時点では人格があるわけではなくただの現象。これが発達すると知性が生まれ、まるで人のように言葉を話し活動を始める。
「発生の直後に魔王を捕えていたのか……」
静かに驚愕しているのはアルフレドとシノノメ。この二人は立場上、魔王については詳しい。普通魔王が発生した時点ではどこにいるのかわからないので、御使からその知らせを聞いた時点で上級神官達が血眼になってその存在を探すというのが歴史上の常だった。
なんせその時点で魔王を浄化するのが一番確実に被害を最小限に浄化ができる。
「サニーさんは、覚えておいでなんですね」
穏やかな声色だが、シノノメはしっかりとサニーの方を向いて確認をとる。
「ええ。私もあまりハッキリとした記憶があるわけではないのですが……」
サニーのお腹の中に英雄の末裔の血が通った肉体を作り、そこに魔王を入れ込んだ人物を。
そこでオルフェは気が付いた。
「ん? 私を作ったのは三百年前の研究者だろう? 魔王を作った研究者とは別……ではないということか!?」
そういえば目の前の研究者のような例があることを全員が思い出す。
「そうです。ちょっと心当たりのある人物がいましてね。なのでオルフェさんの記憶の人物とサニーさん、ミュスティーさんが覚えている人物が同一か確かめたいんですよ」
「それを早く言わないか!」
全くいつもいつも言うのが遅いと、ブチブチ文句を言いながらオルフェは難しい顔をしてさらに記憶の底を探し始める。そうして唐突に叫んだ。
「女性だ! 髪は長かった。背はそれほど高くない。声は高かった。それからメガネ! 君のと似ている」
そうしてぐったりとテーブルに寄りかかる。
「すごい! よく思い出したね!」
「ふっ……もっと褒めてくれ」
おぉ~! とオルフェの方を見ている蒼とレーベン。しかしサニーの方はさらに顔色が悪くなっていた。彼女が見た人物と特徴が一致し、ライルの仮説の証明に近づいたからだ。それを見て慌てて二人はサニーに食後の温かいお茶を用意する。
「高い声か……うん。それはワタシの記憶にある感覚と一致する。だがブリベリアで暮らし始めてからは見ていない」
ミュスティーも同意したことにより、より可能性が高まった。
「……オルフェを作った人って確か記録が残ってたよね?」
「そういえば三百年前から受肉の計画があったって……」
蒼とレーベンが以前ミュスティーから聞いた話を思い出していた。
「ソフィリア・サルヴァドラン。オルフェさんをキメラ化した彼女が関わっていると思って行動しましょう」
そう言ったライル・エリクシアは、覚悟を決めたような声だった。
131
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる