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第三部 元悪役令嬢は原作エンドを書きかえる
30 焦る
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「陛下に真実を伝えるべきです」
学院の庭園の中にある東屋でジェフリーがキッパリと言い切った。彼自身も言いたくないことを言っている自覚があるのか、表情がいつにも増して険しい。
「潮時です。陛下の力を借りましょう。言い訳は私が考えます。もちろん責任も私が」
思い詰めてもいるようだ。
ジェフリーはアイリスが襲われてからというもの、ずっとこの調子だった。ルーベル家の動きがあからさまになっている。自分達の悪事がバレてもかまわない。むしろこちらがもうすでに気付いていること前提で動いているような気さえしていた。レオハルトも、
『【王の目と耳】の調べも進んでいるだろう』
そう言っていた。なんせ未来の聖女候補(それも最有力の一人)が攫われかけたのだ。このまま放置なんてことは絶対にない。そもそもルーベル家と王家はここ一年、バチバチにやりあっている。我々ですら情報を集めているのだから、王が調べを進めていないなんてことはない。
(ライザにはあれからガン無視されてるし……)
おそらく現在ギリギリのカルヴィナ家はこの面倒ごとに関わる気がない。ライザ個人で動いているのではないか、と私達は予想した。
(ライザ単独だからルーベル家に気付かれなかったのかも)
とはいえどこまで何を知っているか聞きたいが、彼女相手ではきっと難しいのはこれまでの経験でよく理解している。となると、彼女からの情報はないものとして考えなければ。
「心配してくれてありがとジェフリー」
「あ、当たり前です……!」
宥めるようにアイリスが穏やかな笑顔を向けた。ジェフリーも自分の余裕のなさに自覚があるのか少し動揺したように声が揺らぐ。
そもそもなんでジェフリーがここまでの発言をしたかというと、私達が龍王が隠されている場所へ潜入することに決めたからだ。あちらはついに手を出してきた、これからもそれが続く可能性は高い。開き直ってそうだし。攻撃は最大の防御というやつだ。
(龍を人間に戻す薬の試作品もできたことだし)
なによりこれは少しでも早く対応できれば——シャーロット様が魔力溜まりで過ごす時間が少ないほど、龍王が完全体として復活する可能性が減る。幸いその体がある場所も二ヶ所まで絞り込めていた。完全ではないが、条件はかなり整っている。
「悪いがジェフリー、どの道君じゃあ責任を取れないよ」
「……」
わかってるだろう? とフィンリー様が困ったように微笑んでいた。我々は国を揺るがす重要な事実を黙っているのだから。なにより王が心から愛する人が関わっている。バレたら色んな意味で無傷ではいられない。たとえ次期王になるであろう息子でも。次期聖女候補の一人な上、治癒師の名家として国を支え王族を救っていたとしても。王が許すとは思えない。
「そうですね。責任を取るなら全員で」
「その通りだな」
私とレオハルトは同じ顔をしていた。最近こういう時に気が合う。ちょっとばかり複雑な気持ちにもなるが、正直、悪い気はしない。
「しかたないなぁ」
「今更感すごいんだけど~」
ルカとアイリスがそれに調子を合わせた。
「……申し訳ありません……」
「いやいや、焦るよね」
私達の彼への気持ちを汲み取ってくれたのか、ジェフリーは小さくつぶやいた。わかるわかる、と今度はアイリスと私が顔を見合わせて同調してみせる。
「ルーベル家はまだ表立っては何もしてないんだろう? 疑いが強いってだけで」
フィンリー様の問いかけにジェフリーは小さく頷いた。
「王城襲撃の件、最近ではルーベル家に疑いを持つ者も多いのですが確実な証拠が出てきていないので……」
「陛下はそのあたりきっちりされているからな」
王は個人の感情で動くことはない。決定的な証拠が揃うまでは。だからこそ家臣達からの信頼も厚い。
(とはいえもどかしいわね)
周囲もルーベル家の不穏な行動を不気味がっている。王家への強気の姿勢に感化される家系がないのは幸いだ。ルーベル家に——魔力至上主義に賛同する者もいるが、家名に関係なくあくまで個人としてだ。
王に伝えるべきなんだろう。伝えないことはきっと信頼を損ねる行為だし、なんなら背信だと言われても言い返せない。だけど……、
「ごめんねジェフリー。シャーロット様のことを考えると、陛下には知らないままでいてもらいたいの」
少なくとも今はまだ。
シャーロット様の深い愛は身に染みてよくわかっている。少なくとも私とアイリスは。なんせ自分の死を利用してまで世界を超えて夫を守ろうとしているのだから。私の未来も変えるチャンスも貰ったのでその恩に報いたいとも思う。
「シャーロット様。きっと陛下に自分が龍になった姿を見られたくないと思うだよね~そういう乙女心、あたしにもわかるっていうか~」
アイリスの加勢の仕方に少し笑ってしまいそうになるが、それは皆同じだったようだ。
「そうだな。愛しい相手にはバッチリ決まってる姿を見てもらいたいし」
「さっすが、王子様! わかってる~!」
レオハルトの返答にアイリスは満足気だ。ここにきてようやくジェフリーの表情も和らいできた。
「線引きを決めておこう。もちろん、うまくいくのが一番だが」
フィンリー様の提案に一同が賛成した。
「目当ての場所に龍王がいなかったらでいいんじゃない?」
ルカは次で決める気なのだ。何も原作通りの予定でことを進めることはない。
「いや、それ以前に民に被害が及ぶ気配があればすぐに報告しよう」
今度はレオハルトがキッパリと言い切った。実に彼らしい基準だ。それでいいだろう? と私とアイリス、そしてジェフリーに視線を向ける。
「そうですね。シャーロット様もそれは絶対望まないでしょうし」
これで決定だ。
ルーベル家に賛同する奴らと同じ。我々は個人として動く。家も立場も関係ない。
(ま~~~そうはならないだろうけど)
建前だけでもそうしておかなければ。
◇◇◇
「陛下に真実をお伝えすべきです」
「!!?」
デジャヴ? と振り返ると、自室の扉の前でエリザがいつものポーカーフェイスのまま立っていた。気配を消すのが上手い。
(あ……心配してくれてる時の目だ)
ほんの少しだけ瞳が震えている。優秀な彼女のことだ。私が、というか私達がやろうとすることに何かしら気が付いていても不思議じゃないとは思ってたけど……。
(どこまで知ってるのかしら)
全てを知っていたとしても彼女は誰にも言っていない、と言い切れるくらい信用している。
「私達がそうしないって決めたことも知ってるんでしょう?」
一瞬間があった。こりゃやっぱ知ってるな。
「……私も一緒に連れて行ってくださいませ。足手纏いにはなりません」
「まあそうだろうけど……ほら、エリザは嫁入り前だし」
「それはお嬢様も同じです!!!」
これは彼女も本気だ。だけど私は決めている。エリザを危険なことには巻き込まない。
(フィンリー様もエリザも簡単に命投げ出しちゃうタイプだからな~)
フィンリー様を止めることは難しいが、エリザは私の立場を使ってどうにかできる。
彼女の忠誠心は本当にありがたい。なにより信頼できる人がこれまでそばにいてくれただけで感謝している。だからこそ、彼女には生きて幸せになってもらいたい。
「もし……もしなにかあったら……もし私達が戻ってこれないようなことがあれば、アリアと一緒に動いて欲しいの」
この時点での『もしも』のことは考えていた。『もしも』の事態にする気はないが。
「ヴィンザー帝国にいるルイーゼにすぐに連絡を取って。それからお母様にも。詳細はアリアに」
権力者から王へ告げてもらった方が真実味も出るだろう。迷惑をかけるがルーベル家によって国がぐちゃぐちゃにされるよりはマシだ。
「いいえ!! 一緒に参ります!!! 今こそ恩を返させてください!!!」
そう感情的な声を出した後、エリザがハッとしたのだ。自分でもびっくりしている。初めて大声を出したことに驚いたのか、それともその内容か。
(……恩?)
これはいまだに未解明。アイリスが持ち帰った情報の中にもなかった。エリザのこの不思議なほどの忠誠心がどこからきているのか……そういう性格だ、と言えばそれまでだったが、彼女は今、『恩』と言った。思い当たる節はない。
(せいぜい高待遇で雇った……というくらいだけど)
もし今、私がやはり卒業式で生徒を虐殺したとしてもエリザはきっと最期まで着いてきてくれる。そんな気がする。
「……わ、私……幼い頃から何度も同じ夢を見るのです……その夢で私は黒猫で……」
エリザがこんなにも動揺している姿を初めて見た。自分の発した言葉に対して、観念したかのように理由を話し始める。
「真っ暗な川で溺れていて……とても怖くて怖くてどうにかなりようなところを……だ、誰かに助けてもらう夢で……」
「その誰かが私?」
「申し訳ありません! お、おかしなことを言っているのはわかっているのです……!」
自分でも夢を理由にこだわっているなんて……と、自覚はあるのだ。
「ですが……助けてもらうたびに心の底からホッとして……ですからどうしてもその時の感謝の気持ちを返したくて……」
「そう……」
律儀な猫だこと。
私にはその夢の黒猫に思い当たる節がある。私が死んだ遠因と言えば遠因だ。覚えてはいないのだが……。
(アイリスが言ってたやつだな……川で溺れてた猫を助けて死んだってやつ)
その時の猫がエリザなのか、それともその時の猫がエリザに夢を見せているのか。
そういえば原作でもエリザは一切アイリスに手を出すことはなかった。アイリスも黒猫を助けようとしていたという話だから、それも関係しているのかもしれない。
「その黒猫に伝えて。私は今幸せだから何も気にする必要はないってこと。それでも気にしてくれるなら、エリザが結婚するまで私が困った時に助けて欲しいってこと」
困った時にだよ? と、念を押しながらエリザの手を握る。
ポロリ、と彼女の目から涙がこぼれたのが見えた。温かな手が私の手を握り返した。
学院の庭園の中にある東屋でジェフリーがキッパリと言い切った。彼自身も言いたくないことを言っている自覚があるのか、表情がいつにも増して険しい。
「潮時です。陛下の力を借りましょう。言い訳は私が考えます。もちろん責任も私が」
思い詰めてもいるようだ。
ジェフリーはアイリスが襲われてからというもの、ずっとこの調子だった。ルーベル家の動きがあからさまになっている。自分達の悪事がバレてもかまわない。むしろこちらがもうすでに気付いていること前提で動いているような気さえしていた。レオハルトも、
『【王の目と耳】の調べも進んでいるだろう』
そう言っていた。なんせ未来の聖女候補(それも最有力の一人)が攫われかけたのだ。このまま放置なんてことは絶対にない。そもそもルーベル家と王家はここ一年、バチバチにやりあっている。我々ですら情報を集めているのだから、王が調べを進めていないなんてことはない。
(ライザにはあれからガン無視されてるし……)
おそらく現在ギリギリのカルヴィナ家はこの面倒ごとに関わる気がない。ライザ個人で動いているのではないか、と私達は予想した。
(ライザ単独だからルーベル家に気付かれなかったのかも)
とはいえどこまで何を知っているか聞きたいが、彼女相手ではきっと難しいのはこれまでの経験でよく理解している。となると、彼女からの情報はないものとして考えなければ。
「心配してくれてありがとジェフリー」
「あ、当たり前です……!」
宥めるようにアイリスが穏やかな笑顔を向けた。ジェフリーも自分の余裕のなさに自覚があるのか少し動揺したように声が揺らぐ。
そもそもなんでジェフリーがここまでの発言をしたかというと、私達が龍王が隠されている場所へ潜入することに決めたからだ。あちらはついに手を出してきた、これからもそれが続く可能性は高い。開き直ってそうだし。攻撃は最大の防御というやつだ。
(龍を人間に戻す薬の試作品もできたことだし)
なによりこれは少しでも早く対応できれば——シャーロット様が魔力溜まりで過ごす時間が少ないほど、龍王が完全体として復活する可能性が減る。幸いその体がある場所も二ヶ所まで絞り込めていた。完全ではないが、条件はかなり整っている。
「悪いがジェフリー、どの道君じゃあ責任を取れないよ」
「……」
わかってるだろう? とフィンリー様が困ったように微笑んでいた。我々は国を揺るがす重要な事実を黙っているのだから。なにより王が心から愛する人が関わっている。バレたら色んな意味で無傷ではいられない。たとえ次期王になるであろう息子でも。次期聖女候補の一人な上、治癒師の名家として国を支え王族を救っていたとしても。王が許すとは思えない。
「そうですね。責任を取るなら全員で」
「その通りだな」
私とレオハルトは同じ顔をしていた。最近こういう時に気が合う。ちょっとばかり複雑な気持ちにもなるが、正直、悪い気はしない。
「しかたないなぁ」
「今更感すごいんだけど~」
ルカとアイリスがそれに調子を合わせた。
「……申し訳ありません……」
「いやいや、焦るよね」
私達の彼への気持ちを汲み取ってくれたのか、ジェフリーは小さくつぶやいた。わかるわかる、と今度はアイリスと私が顔を見合わせて同調してみせる。
「ルーベル家はまだ表立っては何もしてないんだろう? 疑いが強いってだけで」
フィンリー様の問いかけにジェフリーは小さく頷いた。
「王城襲撃の件、最近ではルーベル家に疑いを持つ者も多いのですが確実な証拠が出てきていないので……」
「陛下はそのあたりきっちりされているからな」
王は個人の感情で動くことはない。決定的な証拠が揃うまでは。だからこそ家臣達からの信頼も厚い。
(とはいえもどかしいわね)
周囲もルーベル家の不穏な行動を不気味がっている。王家への強気の姿勢に感化される家系がないのは幸いだ。ルーベル家に——魔力至上主義に賛同する者もいるが、家名に関係なくあくまで個人としてだ。
王に伝えるべきなんだろう。伝えないことはきっと信頼を損ねる行為だし、なんなら背信だと言われても言い返せない。だけど……、
「ごめんねジェフリー。シャーロット様のことを考えると、陛下には知らないままでいてもらいたいの」
少なくとも今はまだ。
シャーロット様の深い愛は身に染みてよくわかっている。少なくとも私とアイリスは。なんせ自分の死を利用してまで世界を超えて夫を守ろうとしているのだから。私の未来も変えるチャンスも貰ったのでその恩に報いたいとも思う。
「シャーロット様。きっと陛下に自分が龍になった姿を見られたくないと思うだよね~そういう乙女心、あたしにもわかるっていうか~」
アイリスの加勢の仕方に少し笑ってしまいそうになるが、それは皆同じだったようだ。
「そうだな。愛しい相手にはバッチリ決まってる姿を見てもらいたいし」
「さっすが、王子様! わかってる~!」
レオハルトの返答にアイリスは満足気だ。ここにきてようやくジェフリーの表情も和らいできた。
「線引きを決めておこう。もちろん、うまくいくのが一番だが」
フィンリー様の提案に一同が賛成した。
「目当ての場所に龍王がいなかったらでいいんじゃない?」
ルカは次で決める気なのだ。何も原作通りの予定でことを進めることはない。
「いや、それ以前に民に被害が及ぶ気配があればすぐに報告しよう」
今度はレオハルトがキッパリと言い切った。実に彼らしい基準だ。それでいいだろう? と私とアイリス、そしてジェフリーに視線を向ける。
「そうですね。シャーロット様もそれは絶対望まないでしょうし」
これで決定だ。
ルーベル家に賛同する奴らと同じ。我々は個人として動く。家も立場も関係ない。
(ま~~~そうはならないだろうけど)
建前だけでもそうしておかなければ。
◇◇◇
「陛下に真実をお伝えすべきです」
「!!?」
デジャヴ? と振り返ると、自室の扉の前でエリザがいつものポーカーフェイスのまま立っていた。気配を消すのが上手い。
(あ……心配してくれてる時の目だ)
ほんの少しだけ瞳が震えている。優秀な彼女のことだ。私が、というか私達がやろうとすることに何かしら気が付いていても不思議じゃないとは思ってたけど……。
(どこまで知ってるのかしら)
全てを知っていたとしても彼女は誰にも言っていない、と言い切れるくらい信用している。
「私達がそうしないって決めたことも知ってるんでしょう?」
一瞬間があった。こりゃやっぱ知ってるな。
「……私も一緒に連れて行ってくださいませ。足手纏いにはなりません」
「まあそうだろうけど……ほら、エリザは嫁入り前だし」
「それはお嬢様も同じです!!!」
これは彼女も本気だ。だけど私は決めている。エリザを危険なことには巻き込まない。
(フィンリー様もエリザも簡単に命投げ出しちゃうタイプだからな~)
フィンリー様を止めることは難しいが、エリザは私の立場を使ってどうにかできる。
彼女の忠誠心は本当にありがたい。なにより信頼できる人がこれまでそばにいてくれただけで感謝している。だからこそ、彼女には生きて幸せになってもらいたい。
「もし……もしなにかあったら……もし私達が戻ってこれないようなことがあれば、アリアと一緒に動いて欲しいの」
この時点での『もしも』のことは考えていた。『もしも』の事態にする気はないが。
「ヴィンザー帝国にいるルイーゼにすぐに連絡を取って。それからお母様にも。詳細はアリアに」
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「いいえ!! 一緒に参ります!!! 今こそ恩を返させてください!!!」
そう感情的な声を出した後、エリザがハッとしたのだ。自分でもびっくりしている。初めて大声を出したことに驚いたのか、それともその内容か。
(……恩?)
これはいまだに未解明。アイリスが持ち帰った情報の中にもなかった。エリザのこの不思議なほどの忠誠心がどこからきているのか……そういう性格だ、と言えばそれまでだったが、彼女は今、『恩』と言った。思い当たる節はない。
(せいぜい高待遇で雇った……というくらいだけど)
もし今、私がやはり卒業式で生徒を虐殺したとしてもエリザはきっと最期まで着いてきてくれる。そんな気がする。
「……わ、私……幼い頃から何度も同じ夢を見るのです……その夢で私は黒猫で……」
エリザがこんなにも動揺している姿を初めて見た。自分の発した言葉に対して、観念したかのように理由を話し始める。
「真っ暗な川で溺れていて……とても怖くて怖くてどうにかなりようなところを……だ、誰かに助けてもらう夢で……」
「その誰かが私?」
「申し訳ありません! お、おかしなことを言っているのはわかっているのです……!」
自分でも夢を理由にこだわっているなんて……と、自覚はあるのだ。
「ですが……助けてもらうたびに心の底からホッとして……ですからどうしてもその時の感謝の気持ちを返したくて……」
「そう……」
律儀な猫だこと。
私にはその夢の黒猫に思い当たる節がある。私が死んだ遠因と言えば遠因だ。覚えてはいないのだが……。
(アイリスが言ってたやつだな……川で溺れてた猫を助けて死んだってやつ)
その時の猫がエリザなのか、それともその時の猫がエリザに夢を見せているのか。
そういえば原作でもエリザは一切アイリスに手を出すことはなかった。アイリスも黒猫を助けようとしていたという話だから、それも関係しているのかもしれない。
「その黒猫に伝えて。私は今幸せだから何も気にする必要はないってこと。それでも気にしてくれるなら、エリザが結婚するまで私が困った時に助けて欲しいってこと」
困った時にだよ? と、念を押しながらエリザの手を握る。
ポロリ、と彼女の目から涙がこぼれたのが見えた。温かな手が私の手を握り返した。
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