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第二部 元悪役令嬢の学園生活
50 身元確認
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王に婚約破棄の件がバレている。何をどこまで知っているかもわからない。
パニックになったその足でレオハルトの元へと向った。王城襲撃以来だ。相変わらず警備は厳しいままだったが、私は王城への出入りを許可されている。だからといって私が行けば追加の警備や護衛が必要になってしまうので、周辺の負担を考えて最近は遠慮していた。どこもかしこもまだピリピリしているのだ。
『前世的な思考~いい加減もうちょっと貴族らしくすりゃーいいのに』
私が心底レオハルトのことを心配しているにも関わらず、周辺に遠慮して登城してないことを聞いて、アイリスは呆れた声になっていた。
『わかってるけど……どうしても気になっちゃって』
『レオが寂しがるんじゃん?』
『毎日慣れない手紙書いてる……』
『なんだかんだ言って、その辺は甘やかすんだもんね~』
レオハルトからは毎日手紙が届く。それこそ開き直ったように甘い言葉が散りばめられたものが……。私もこういった甘い出来事に慣れないので遠目から手紙を読んでいる。これ後々黒歴史にならない? 大丈夫?
「レオハルト様!」
パニックがおさまらないままノックもせずに勢いよく部屋に突入した。
「うおっ! どうした!? ……そんなに俺に会いたかったのか?」
このポジティブ第一王子め! ジェフリーもギョッとしているじゃないか。
全力でスルーして、立ったまま先ほどの王とのやり取りを早口で説明した。
「はっ!? まさかここにもエリオットが!?」
「誰だそいつ」
私の話をうんうんと大人しく聞いてくれていたレオハルトが、聞き慣れない男の名前を聞いて途端に険しい顔になった。
「今そんなこと気にしないでください!」
「そんなわけにはいくか! ライバルが増えたら困るんだ!」
「大丈夫です。レオハルト様の方が百倍イケメンなので」
「ならいい!」
いいのか。やきもちは面倒だが、機嫌を取るのは簡単だ。
「えーっとその方はおそらく王の騎士団の方ですね」
「ジェフリー知っているのか!?」
「はい。彼は王の目と耳として一部では有名ですよ」
どうやらエリオットの暗躍はそれなりに有名らしい。王の代わりにありとあらゆるものをコッソリ見聞きし、報告する役割だそうだ。
(やっぱ忍者じゃん)
「でもそんな人が有名でいいの?」
「牽制の意味も込めて公表しているんだと思います」
なるほど。悪いことしててもバレるぞってことね。
「実際は他にも『王の目と耳』はいるんでしょうけど……」
「それでなんでリディはそいつを知っているんだ?」
「あーそれは後ほど……それより婚約破棄の事がバレてるんですけど!?」
エリオットはもういいから! 肝心の話をさせて!
「五年前に一度そういう噂が立ちましたからその事をおっしゃったのでは?」
「表沙汰になったのはその時だけだな。リディのお見舞いに行った時とその後の新年パーティのあたりか」
「その時のこと、今更言う~!?」
「おそらくですが……何故その話をされたか想像はできます」
「それよりリディ! 本当に王に俺との婚約破棄を願い出る気じゃないだろな!?」
ちょっとレオハルト! 話の腰を折らないでよ!
「レオハルト様、お約束通り、卒業までは決して婚約破棄はいたしません。だからちょっと黙ってて!」
レオハルトはホッとした顔になって言った通り静かになった。その姿をジェフリーがほんのりと微笑んで見ていた。わかる。ちょっと可愛いよね。
「これは今朝公表されたばかりの情報なのですが、王がしばらくの間国を離れられることになったのです」
へえ、それは珍しい。国内にはあちこち出向くことはあっても国外は滅多にない。あっても隣国だが、しばらくと言うことは少し遠い国だろうか。
「その国がヒダカ国なのでリディ様にお尋ねになったのかもしれません」
「何しに行くの!?」
父も母も何も言っていなかった。ヒダカ国は父の出身国だ。父を通して貴重な薬も手に入るようになったから、婚約破棄すると我が家との関係が悪くなって、その流通が止まるのを危惧したのだろうか。
「それは俺が知っている」
得意気な顔をしたレオハルトがこちらを見ている。
「陛下は魔封石を輸入するつもりなんだ」
魔封石というのは魔石以上に珍しいものだ。うちの国では地下牢にだけ存在するということを聞いている。だがそれがどういう仕組みの石かは公表されていない。単純に近くにあると魔法が使えなくなる、という話だ。
「ジェフリーはどんな石か知ってる?」
「いえそれほど……ヒダカ国にだけ存在するということと、魔物にも有効ということくらいで」
産地限定か。
「陛下はその石を少しずつ国内に広めるおつもりだ」
少し誇らしそうに見える。父親の判断を支持しているのだろうか。
「我が国は個人の持つ魔力量の減少が問題になっているだろう? 近年は特に魔物が多い地域での被害が増える一方だ。そういうところに魔石を設置して魔物の力を抑える方法を試してみたいと」
人間を強化するのではなく、相手を弱くするのか。ヒダカ国ではすでにその手法が取られているそうだ。
「でもその石があると私達も魔法使えなくなるんですよね?」
「そうだ。だが今ですら騎士の中では魔法を補助程度にしか考えていない者も多い。これからも増える一方だろう」
魔術部隊以外は魔法に重点を置いていない。昔とは戦い方が変わったとも聞いたことがある。
「リディのお父上のおかげて、長らく相手にもされなかったヒダカ国との話がスムーズに出来るようにたったと言っていたよ」
「それは良かった」
「その感じ……お父上の凄さがわかっていないな?」
父の凄さ? ヒダカ国の貴族の五男で、その生活を捨てて冒険者をしている時に母と会って結婚した。冒険者時代はなかなかやり手だったらしいが、ヒダカ国にいた時の話はあまり聞かない。
「ヒダカ国四大貴族のご出身で、そのお母上、リディのお祖母様は現国王の妹君ってことは知ってるよな……?」
私の表情をみて本気で知らないんじゃないかと不安になったようだ。恐る恐るこちらを伺いながら教えてくれた。まあ本当に知らないんだけど。
「へぇ~」
「……知らなかったのか」
王子の婚約者となると身元はしっかり調べられるようだ。この後家に帰って確認したらフローレス家としてもこの王家による調査によって、やっと父の言葉の真偽が判明したらしい。それまでは自称ヒダカ国の貴族の息子だったそうだ。ただ本人の口から他国の貴族ですと言われても信憑性もなく……そりゃ祖父も結婚反対くらいするか。
(そうよね~未来の国母になるかもしれないんだし、色々調べるわよね~)
国母か……やっぱり絶対に嫌だな。レオハルトには王になって欲しいが、自分が王の隣にいるイメージがどうしても湧かない。
「あ! だから陛下もレオハルト様と私の婚約を強くの望まれたのですね!」
少しでもヒダカ国と交渉する材料にするためか! うわぁ~前世からの疑問が今晴れたぞ!
作中、私とレオハルトの婚約は王と第三側妃が強く望んだものだとあったのだが、王がどうして強く望んだかはハッキリしないまま終わっていた。要はフラグの未回収だったものが、転生して回収出来たのだ。
「そうだな。俺もそれを知ったのはつい最近だが、おかげでリディと婚約できたということがわかった。お父上にも感謝だな」
甘い視線を向けてきたが、私は今原作の謎が解けてそれどころではない。
(帰ったらアイリスに教えてあげよ!)
パニックになったその足でレオハルトの元へと向った。王城襲撃以来だ。相変わらず警備は厳しいままだったが、私は王城への出入りを許可されている。だからといって私が行けば追加の警備や護衛が必要になってしまうので、周辺の負担を考えて最近は遠慮していた。どこもかしこもまだピリピリしているのだ。
『前世的な思考~いい加減もうちょっと貴族らしくすりゃーいいのに』
私が心底レオハルトのことを心配しているにも関わらず、周辺に遠慮して登城してないことを聞いて、アイリスは呆れた声になっていた。
『わかってるけど……どうしても気になっちゃって』
『レオが寂しがるんじゃん?』
『毎日慣れない手紙書いてる……』
『なんだかんだ言って、その辺は甘やかすんだもんね~』
レオハルトからは毎日手紙が届く。それこそ開き直ったように甘い言葉が散りばめられたものが……。私もこういった甘い出来事に慣れないので遠目から手紙を読んでいる。これ後々黒歴史にならない? 大丈夫?
「レオハルト様!」
パニックがおさまらないままノックもせずに勢いよく部屋に突入した。
「うおっ! どうした!? ……そんなに俺に会いたかったのか?」
このポジティブ第一王子め! ジェフリーもギョッとしているじゃないか。
全力でスルーして、立ったまま先ほどの王とのやり取りを早口で説明した。
「はっ!? まさかここにもエリオットが!?」
「誰だそいつ」
私の話をうんうんと大人しく聞いてくれていたレオハルトが、聞き慣れない男の名前を聞いて途端に険しい顔になった。
「今そんなこと気にしないでください!」
「そんなわけにはいくか! ライバルが増えたら困るんだ!」
「大丈夫です。レオハルト様の方が百倍イケメンなので」
「ならいい!」
いいのか。やきもちは面倒だが、機嫌を取るのは簡単だ。
「えーっとその方はおそらく王の騎士団の方ですね」
「ジェフリー知っているのか!?」
「はい。彼は王の目と耳として一部では有名ですよ」
どうやらエリオットの暗躍はそれなりに有名らしい。王の代わりにありとあらゆるものをコッソリ見聞きし、報告する役割だそうだ。
(やっぱ忍者じゃん)
「でもそんな人が有名でいいの?」
「牽制の意味も込めて公表しているんだと思います」
なるほど。悪いことしててもバレるぞってことね。
「実際は他にも『王の目と耳』はいるんでしょうけど……」
「それでなんでリディはそいつを知っているんだ?」
「あーそれは後ほど……それより婚約破棄の事がバレてるんですけど!?」
エリオットはもういいから! 肝心の話をさせて!
「五年前に一度そういう噂が立ちましたからその事をおっしゃったのでは?」
「表沙汰になったのはその時だけだな。リディのお見舞いに行った時とその後の新年パーティのあたりか」
「その時のこと、今更言う~!?」
「おそらくですが……何故その話をされたか想像はできます」
「それよりリディ! 本当に王に俺との婚約破棄を願い出る気じゃないだろな!?」
ちょっとレオハルト! 話の腰を折らないでよ!
「レオハルト様、お約束通り、卒業までは決して婚約破棄はいたしません。だからちょっと黙ってて!」
レオハルトはホッとした顔になって言った通り静かになった。その姿をジェフリーがほんのりと微笑んで見ていた。わかる。ちょっと可愛いよね。
「これは今朝公表されたばかりの情報なのですが、王がしばらくの間国を離れられることになったのです」
へえ、それは珍しい。国内にはあちこち出向くことはあっても国外は滅多にない。あっても隣国だが、しばらくと言うことは少し遠い国だろうか。
「その国がヒダカ国なのでリディ様にお尋ねになったのかもしれません」
「何しに行くの!?」
父も母も何も言っていなかった。ヒダカ国は父の出身国だ。父を通して貴重な薬も手に入るようになったから、婚約破棄すると我が家との関係が悪くなって、その流通が止まるのを危惧したのだろうか。
「それは俺が知っている」
得意気な顔をしたレオハルトがこちらを見ている。
「陛下は魔封石を輸入するつもりなんだ」
魔封石というのは魔石以上に珍しいものだ。うちの国では地下牢にだけ存在するということを聞いている。だがそれがどういう仕組みの石かは公表されていない。単純に近くにあると魔法が使えなくなる、という話だ。
「ジェフリーはどんな石か知ってる?」
「いえそれほど……ヒダカ国にだけ存在するということと、魔物にも有効ということくらいで」
産地限定か。
「陛下はその石を少しずつ国内に広めるおつもりだ」
少し誇らしそうに見える。父親の判断を支持しているのだろうか。
「我が国は個人の持つ魔力量の減少が問題になっているだろう? 近年は特に魔物が多い地域での被害が増える一方だ。そういうところに魔石を設置して魔物の力を抑える方法を試してみたいと」
人間を強化するのではなく、相手を弱くするのか。ヒダカ国ではすでにその手法が取られているそうだ。
「でもその石があると私達も魔法使えなくなるんですよね?」
「そうだ。だが今ですら騎士の中では魔法を補助程度にしか考えていない者も多い。これからも増える一方だろう」
魔術部隊以外は魔法に重点を置いていない。昔とは戦い方が変わったとも聞いたことがある。
「リディのお父上のおかげて、長らく相手にもされなかったヒダカ国との話がスムーズに出来るようにたったと言っていたよ」
「それは良かった」
「その感じ……お父上の凄さがわかっていないな?」
父の凄さ? ヒダカ国の貴族の五男で、その生活を捨てて冒険者をしている時に母と会って結婚した。冒険者時代はなかなかやり手だったらしいが、ヒダカ国にいた時の話はあまり聞かない。
「ヒダカ国四大貴族のご出身で、そのお母上、リディのお祖母様は現国王の妹君ってことは知ってるよな……?」
私の表情をみて本気で知らないんじゃないかと不安になったようだ。恐る恐るこちらを伺いながら教えてくれた。まあ本当に知らないんだけど。
「へぇ~」
「……知らなかったのか」
王子の婚約者となると身元はしっかり調べられるようだ。この後家に帰って確認したらフローレス家としてもこの王家による調査によって、やっと父の言葉の真偽が判明したらしい。それまでは自称ヒダカ国の貴族の息子だったそうだ。ただ本人の口から他国の貴族ですと言われても信憑性もなく……そりゃ祖父も結婚反対くらいするか。
(そうよね~未来の国母になるかもしれないんだし、色々調べるわよね~)
国母か……やっぱり絶対に嫌だな。レオハルトには王になって欲しいが、自分が王の隣にいるイメージがどうしても湧かない。
「あ! だから陛下もレオハルト様と私の婚約を強くの望まれたのですね!」
少しでもヒダカ国と交渉する材料にするためか! うわぁ~前世からの疑問が今晴れたぞ!
作中、私とレオハルトの婚約は王と第三側妃が強く望んだものだとあったのだが、王がどうして強く望んだかはハッキリしないまま終わっていた。要はフラグの未回収だったものが、転生して回収出来たのだ。
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