【完結】予定通り婚約破棄され追放です!~せっかく最強賢者に弟子入りしたのに復讐する前に自滅しないで!?~

桃月とと

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36 領地巡り

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 魔道具の設置はどこの領も順調だった。干からびた湖、川などの水量が少しずつ回復し始め、その地にいる人々の安堵の表情を見てレミリア達もほっと息をついたのだった。
 帝国の魔術師達は思った以上に王国での生活を楽しんでいた。

「いやぁ最初は警戒されちゃってどうなることかと思いましたが、今はもう皆さん良くしてくれて……俺、帰る日泣いちゃいますよ……」

 そう言って目を潤ませる者までいた。

「王国の魔術師からは絶対に出ない言葉ね……」

 マリロイド王国の魔術師達は貴族の子弟が多く、皆プライドが高い。実力はお墨付きだが少々傲慢でもあるのだ。

「今回こちらに派遣された魔術師は平民出身の者が多かったので故郷を思い出したのかもしれません」

 レミリアはフロイドと一緒に飛竜に乗って領地を周っていた。いつも穏やかなフロイドが初めてジェットコースターに乗った子供のようにはしゃいでいたので、レミリアはそれがとても面白く愛おしい気持ちになったのだった。

「さあ、次は……グレンのとこね」

 元王太子従者グレンがいるのは辺境伯の領地と隣り合った小さな領だった。ここも魔物の森に接しているのでジリ貧状態に陥っており、魔道具の講習には領主の側近が参加していた。

 レミリアは少し気が重いと感じつつも、戦闘態勢に入り気合いを入れ直す。どんな嫌味を言ってやろうかと脳内で何度もシミュレーションをするのだった。

(大好きな王都から追い出されて可哀想でちゅね~? いや、シンプルに都落ちざまぁみろ?)

 一番最初にレミリアを出迎えたのは、グレンの一番上の兄だった。

「レミリア様! この度は愚弟があのようなことをしでかしてしまい……なんとお詫びしてよいかわかりません!!!」

 頭を地面に叩きつけての謝罪にレミリアは面食らってしまった。その後ろにいる家臣たちも同様に頭を地面につけ始めたのでレミリアは慌てて頭を上げるように言った。

「こ、今回はその話ではなく魔道具の確認をしにきただけですので……」

 しかしグレンの兄は決して頭を上げようとはしなかった。

「弟があのようになってしまったのには我々にも責任があるのです。……優秀な弟をもてはやし、王太子の従者にまでなった時はそれはもう領主よりも立派な存在として扱ってきました……いつの間にか横柄な態度を取るようになっても我々はそれを許していたのです……」

(あの国王とはどえらい違いね……)

 レミリアは実際その家族までは恨んでいなかった。あくまで個人的に気に食わない相手が復讐の対象だと考えていた。アルベルト、ユリア、グレン、ロニー、カイルだ。レミリアの父親と国王は腹立たしい存在ではあるど、こちらに敵意を向けない限り何をするつもりもない。

「……その件については今はお話ししたくないのです。いい思い出ではありませんので。ですが彼が憎いからといってこの領地や領民を無下に扱うつもりはありませんのでご安心を」
「うっ……うぅ……申し訳ございません……申し訳ございません……お慈悲に感謝いたします」

(この兄、なかなか激情型だな……)

 だがここまでこの兄が必死になる理由がすぐに分かった。

「は? 誰も来てないんですか!?」

 この領地には王国の魔術師も帝国の魔術師も入っていなかった。どちらも王国側の采配で派遣される。騎士団だけは一度やってきて大きな魔物を退治してくれたらしいが、またすぐに別の領へと討伐に向かったらしい。

「レミリア様の怒りに触れたせいだとばかり思っておりまして……」
「そもそも初めの頃は国外追放のままだったからそれは無理ですよ」
「そうですね……」

 王国内はすでに割れているのだ。王太子が次の王に相応しくないと考える一団がいるのだろう。王太子の側近であるグレンについてもその対象になっていたに違いない。
 幸いなことにこの領地は湧水が枯れなかったので水に関する問題はそこまで酷くならなかったが、魔物に関してはかなり苦労しているようで、グレンは今結界周辺でずっと待機しているらしい。

「ですので、グレンと顔を合わせることは決してありませんので! どうかご安心を!」
「……わかったわ」

 王国側から大賢者の弟子の要望に関して届いといたようだ。

 グレンは今、領地でも針の筵だった。

 レミリアは結局この領地で魔道具の確認よりも先に、傷ついた領民達へ回復魔法をかけることに注力することになった。領民総出で戦っているようで、子供達が怯えている姿に心が痛んだ。

「まだ帝国の魔術師が引き上げるまでしばらくあります。すぐに連絡してこちらに加勢に来させましょう」

 フロイドはそう言ってすぐに書面を用意した。
 
「……そういえば領主様は?」

 いつまで経っても挨拶に出てこない領主を思い出したレミリアは少し気分を悪くしていた。兄とは違い、父親は息子は悪くない! というタイプの身内かもしれないと身構えた。パーティで会ったグレンの父親はそれはもう息子を自慢していた。一族の誇りだと。

「父は先日、魔物に捕食されてしまいまして……遺体もないのです……」
「……え?」
「まだ領民には伏せておりまして。士気に関わりますので」
 
 申し訳ございませんと呟き、目を伏せて、仕方がないことだと諦めた様子のグレンの兄をみて、レミリアは何と声をかけていいかわからなかった。

「お父様は貴方のような立派な跡継ぎがおられて安心してらっしゃると思いますよ」

 肩に手を置き、そうフロイドがそう伝えているのをただ見つめていた。
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