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38 王の代理
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レミリア達がベルーガ帝国へ戻ってしばらくが経った頃、暗い顔をしたフロイドが訪ねてきた。
「マリロイド王国のギルバート王がお倒れになったそうです」
「……ついに」
レミリアには残念ながらそう遠い話ではないとわかっていた。王国で再会した時のあの姿を見れば誰だってそう思うだろう。
「原因は強い疲労のようですが、このまま復帰出来るかはわからないそうです」
「老化と心労だけは魔法じゃなかなかどうにもならないからねぇ」
ジークボルトが言うとなんの説得力もないと思った一同だった。
「じゃあ……」
「……しばらくは王太子が代理で政務を行うようです」
(ヤバい! マジで復讐を遂げる前に王国が終わる!)
マリロイド王国は少し前に倒れた高齢の聖女も復帰出来ないままだった。それにより、ユリアを正式な聖女とする儀式を執り行うと帝国に知らせが入ったそうだ。要はその儀式に参加してほしいということだが、案の定大賢者にも是非来て欲しいという要望があったらしい。
「聖女様直々の願いだそうでして」
フロイドが何が言うか、大賢者の一家は全員予想がついていた。
「期待を裏切らないわねぇ」
「一貫性があってわかりやすいよ」
「懲りねえなぁ」
あれほど手酷く扱っても、全く懲りずにアレンに執着するユリアの行動が不思議で仕方なかった。
(マジでアレンをどうこう出来ると思ってんのかしら)
ゲームヒロインであるユリアがどうこう出来るのは、所詮ゲーム内で心の内を知っている攻略キャラくらいだった。実際学園でも彼等以外からの人気は皆無だ。しかしユリアはそんな事全く気にしていなかった。彼女の基準は顔と肩書きだ。それ以外の人間に興味などない。
「どうすんだ師匠」
まあ行くの俺だけど。と言いながらジークボルトの返事を待った。
「行かないよ~なんでわざわざ……だいたいこの間みたいになかなか帰ってこなくなったら嫌だし!」
ジークボルトは前回の王国訪問の際、思いの外アレン達のやることが増え、帰国日が何度も延期になってしまったのが気に入らなかったようだ。
「この屋敷に1人って寂しいんだも~ん!」
彼は部屋に篭ることが多いが、人の気配を全く感じない日々がとても孤独なものに思えた。アレンが来る前はそれこそずっと1人だったのに……。
大賢者の窓口に当たるフロイドは明らかに安堵の表情を浮かべていた。彼は大賢者とその弟子達という帝国の大きな財産を守る任務も課せられているからだった。レミリアに里心がついてはたまらないと前回の訪問では胃がキリキリと痛む日々だった。正直あの国に近づいて欲しくないというのが彼の本音だ。
「聖女の儀式か~……つーかあいつらなんでまだ結婚しないんだ?」
「そうなのよねぇ」
乙女ゲーム『ラブマリ』のエンディングはいつも結婚式のスチルで終わる。幸せそうな笑顔いっぱいの映像でエンドロールを迎えるのだ。だがあの2人にはまだそれが訪れていない。
マリロイド王国の執務室では王の代理として書類に目を通すアルベルトが頭を抱えていた。
「……こんな予算でユリアが納得するはずがないだろう!」
「ですが聖女の儀式はいつも質素なものです。先の災害で今後しばらく税収が見込めません。それでも予算を増やせとおっしゃるなら、お2人の結婚式の予算を少しでも減額してください」
アルベルトの怒りを予想していたからか、淀みなく、そして冷たく返答したのは、ギルバート王に忠実に勤めていた王国の宰相だった。
宰相は結局、ギルバート王に仕えていた時と変わらずにいた。まだアルベルトが正式に王になっていないというのもあるが、すでに宰相の座を約束していたディーヴァ公爵もその息子も今はその役職への意欲を失っている。
(陛下がお戻りになるまで出来るだけ被害を抑えなければ)
宰相はすでにアルベルトを見限っていた。王が倒れたのは、今後のことについて具体的に話を詰め始めてすぐのことだった。
彼らはもう、アルベルトを王にするつもりはない。
王弟の息子、アルベルトの従兄弟を新たに王太子として立てるつもりだったのだ。
この国始まって以来初めての廃太子として名を残す予定だったアルベルトは今、ついにこの国の頂点に立っていた。
「俺達の結婚式はこの国始まって以来の素晴らしいものになるんだ! 増やすことはあっても減らすことなど許さん!」
現実を見ることがない者が統べる国がどうなっていくか、火を見るより明らかだった。
「マリロイド王国のギルバート王がお倒れになったそうです」
「……ついに」
レミリアには残念ながらそう遠い話ではないとわかっていた。王国で再会した時のあの姿を見れば誰だってそう思うだろう。
「原因は強い疲労のようですが、このまま復帰出来るかはわからないそうです」
「老化と心労だけは魔法じゃなかなかどうにもならないからねぇ」
ジークボルトが言うとなんの説得力もないと思った一同だった。
「じゃあ……」
「……しばらくは王太子が代理で政務を行うようです」
(ヤバい! マジで復讐を遂げる前に王国が終わる!)
マリロイド王国は少し前に倒れた高齢の聖女も復帰出来ないままだった。それにより、ユリアを正式な聖女とする儀式を執り行うと帝国に知らせが入ったそうだ。要はその儀式に参加してほしいということだが、案の定大賢者にも是非来て欲しいという要望があったらしい。
「聖女様直々の願いだそうでして」
フロイドが何が言うか、大賢者の一家は全員予想がついていた。
「期待を裏切らないわねぇ」
「一貫性があってわかりやすいよ」
「懲りねえなぁ」
あれほど手酷く扱っても、全く懲りずにアレンに執着するユリアの行動が不思議で仕方なかった。
(マジでアレンをどうこう出来ると思ってんのかしら)
ゲームヒロインであるユリアがどうこう出来るのは、所詮ゲーム内で心の内を知っている攻略キャラくらいだった。実際学園でも彼等以外からの人気は皆無だ。しかしユリアはそんな事全く気にしていなかった。彼女の基準は顔と肩書きだ。それ以外の人間に興味などない。
「どうすんだ師匠」
まあ行くの俺だけど。と言いながらジークボルトの返事を待った。
「行かないよ~なんでわざわざ……だいたいこの間みたいになかなか帰ってこなくなったら嫌だし!」
ジークボルトは前回の王国訪問の際、思いの外アレン達のやることが増え、帰国日が何度も延期になってしまったのが気に入らなかったようだ。
「この屋敷に1人って寂しいんだも~ん!」
彼は部屋に篭ることが多いが、人の気配を全く感じない日々がとても孤独なものに思えた。アレンが来る前はそれこそずっと1人だったのに……。
大賢者の窓口に当たるフロイドは明らかに安堵の表情を浮かべていた。彼は大賢者とその弟子達という帝国の大きな財産を守る任務も課せられているからだった。レミリアに里心がついてはたまらないと前回の訪問では胃がキリキリと痛む日々だった。正直あの国に近づいて欲しくないというのが彼の本音だ。
「聖女の儀式か~……つーかあいつらなんでまだ結婚しないんだ?」
「そうなのよねぇ」
乙女ゲーム『ラブマリ』のエンディングはいつも結婚式のスチルで終わる。幸せそうな笑顔いっぱいの映像でエンドロールを迎えるのだ。だがあの2人にはまだそれが訪れていない。
マリロイド王国の執務室では王の代理として書類に目を通すアルベルトが頭を抱えていた。
「……こんな予算でユリアが納得するはずがないだろう!」
「ですが聖女の儀式はいつも質素なものです。先の災害で今後しばらく税収が見込めません。それでも予算を増やせとおっしゃるなら、お2人の結婚式の予算を少しでも減額してください」
アルベルトの怒りを予想していたからか、淀みなく、そして冷たく返答したのは、ギルバート王に忠実に勤めていた王国の宰相だった。
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彼らはもう、アルベルトを王にするつもりはない。
王弟の息子、アルベルトの従兄弟を新たに王太子として立てるつもりだったのだ。
この国始まって以来初めての廃太子として名を残す予定だったアルベルトは今、ついにこの国の頂点に立っていた。
「俺達の結婚式はこの国始まって以来の素晴らしいものになるんだ! 増やすことはあっても減らすことなど許さん!」
現実を見ることがない者が統べる国がどうなっていくか、火を見るより明らかだった。
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