【完結】予定通り婚約破棄され追放です!~せっかく最強賢者に弟子入りしたのに復讐する前に自滅しないで!?~

桃月とと

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43 結婚式

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 マリロイド王国の国民は恐怖で震え上がっていた。結界には次々と大穴が開きはじめた。魔物がどんどん王都へ近づいてきているので、すでに国外へ逃げることすら出来ないでいた国民達は毎日教会の門を叩いた。

「聖女はちゃんと祈っているのか!!?」

 もちろん祈ってなどいない。久しぶりにアルベルトの前に現れたユリアは開口一番こう告げた。

「急いで大賢者様を呼ばなきゃ! 彼ならきっと助けに来てくれるわ!」

 アルベルトは疲れた顔で答える。

「帝国にも大賢者にも、もう依頼は出した」

 なぜ婚約者がこんなにウキウキとしているのか理解できなかった。

「きっと彼、すぐに来てくれるわね!」
「ねぇ! この間は出来なかった歓迎のパーティを開きましょうよ!」
「ああ! 新しいドレスは間に合うかしら?」
「大賢者様ってどんな格好がお好みなのかしら? 帝国のパーティの感じだと清楚なのが好きなのかなぁ」

 アルベルトの言葉を待たずに次々と夢を膨らませるこのユリアは恋する乙女の姿だった。その姿を婚約者である男を前に惜しげもなくひけらかしていた。

「……パーティは難しいよ。俺達の結婚式すらどうなるか」
「……ふーん」

 2人の間に重い空気が流れていた。アルベルトはユリアが結婚に乗り気ではないことにいい加減気付いていた。だがその事を責め立てたりはしない。彼にはもう聖女しかいないのだから。だが彼らの結婚式の予算だけは死守し続けていた。それがアルベルトの唯一の心の拠り所になっているのだ。
 ユリアもそれはわかっている。だから何も言わない。彼女にとっても王太子の婚約者という立場はあって困るものではないからだ。

 この翌日、帝国からの返事にこの国は揺れた。

「帝国から支援を断られただと!?」

 アルベルト達は大賢者はともかく、帝国からの支援を断られるとは思っていなかった。

「……前回の……帝国の魔術師を派遣した際の支払いが滞っているからだと」
「そんなはずはない! しっかり返済は済んでいるはずだ!」

 宰相は悔しそうに拳を握り締め震えていた。

「その金を横領していた者がいたのです……」

 それは宰相の補佐官の1人だった。

「なんだと!? 捕えたのか!?」
「はい」
「それで金は!?」

 宰相は言うのを躊躇っているようだった。彼にも信じられない、考えたくないという表情のまま呟くようにはきだした。

「……聖女に貢ぐ為に使ったと。彼女からの愛を得るために」
「……は?」

 彼等には思い当たる節があった。最近ユリアがあれこれ欲しがらなくなっていたのだ。普通は教会に寄付をし、それが聖女の生活費になるのだが、その男は宝石やドレスに変えてユリアに直接献上していた。

「知らないわよ! あの人が勝手に色々くれたんだもん!」

 実際、彼女は貢いでくる男の金の出所等気になどしていない。それが大賢者を呼ぶ妨げになるとわかっていたらうけとらなかっただろう。
 聖女を問い詰める宰相の横でアルベルトは不気味な笑顔を浮かべていた。

「先々代の聖女様を知っている世代には聖女信仰が強い者がまだいるからな!」

 アルベルトは自分に言い聞かせようと必死だった。愛する女性が自分以外の男、それも高齢男性で満足するはずがない。その男が一方的に聖女に行き過ぎた愛を向けただけだと。

 その男からはもう聞き出せなくなっていた。捕らえられていた牢の中で殺されているのが見つかったのだ。

「大丈夫だユリア! 君の祈りと俺の王としての資質でこの苦境を乗り越えよう!」

 怖いほどの気迫でユリアの手を握った。

「俺達の真実の愛で国を救うんだ!」

 だが、そのユリアは少しも笑っていなかった。不愉快そうにアルベルトの手を払いのけ、

「いいから早く大賢者様呼びなさいよ」

 そう言い放った。

「それがアルの仕事でしょ?」
 
 宰相が止める声も無視して下手から立ち去った。

(ダサい男。あんなのと結婚しそうになってたなんてね。危ない危ない)

 彼女の腕には先ほど死んだばかりの男からの貢ぎ物が光っていた。

(大賢者様……早く会いたい。もう少し結界が崩れないかな……最近全然祈ってないのに)

 魔物は道中の人間を捕食しながらゆっくりと王都へ侵攻していた。

「殿下、いかがいたしましょう」

 宰相はアルベルトを気の毒には思わなかった。だから今回の件でこの王太子がまともな判断が出来ないようなら、すぐにでも王へ報告し、廃嫡するよう進言するつもりでいた。

「……結婚式のためにとっておいたものを全て帝国へ回せ。足りない分は王家の私財を使ってかまわない。俺から陛下へ報告しておく」
「承知しました」

 宰相が家臣たちに指示を出している姿を見るアルベルトの目に、光はなかった。
 
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