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そんな気持ちが多少なりともあった事は嘘ではないが、ラミウムに脅され、ノルマに協力させられたのが真実である。
しかし可愛い女子の前で、今更ながらも、少しでも「格好よく見せたい」と思うは男子の性であり、本当の事が言えず笑ってお茶を濁していると、
(死んだ方が良かったかも知れないですわねぇ「愚かな政争」に巻き込まれるより……)
平和ボケした貴族社会を生きて来た彼女の実感であったが、理由を誤魔化すのに必死であった「元イケてない少年」は仄暗い呟きに気付かず、
「ん? どぅかしたのぉ?」
呑気顔で首を傾げ、その「苦労知らずの呑気」が妙に癇に障ったドロプウォートは、
(顔は良いですのにぃ)
不機嫌にプイッと横を向き、
「何でもありませんわ!」
素っ気なく言い放ち、
(少々脅して差し上げますわぁ)
一計を案じてイケメン少年勇者に向き直り、
「ラミウム様から「何も」伺っていないようですので、私がご説明申し上げますわ」
勇者召喚儀式が既に形骸化している部分はあえて語らず、
「「勇者百人召喚の儀」とは、天世と中世に敵対する『地世の魔王とその軍勢』を討伐する為に行われる儀式の事ですわ」
「へぇ~まおう・・・」
(マオウ?! きっ、聞き間違いだよねぇ……?)
ヘラヘラしていた笑顔は一瞬にして固まり、
「あのぉ……」
「何ですの」
「マオウって……」
引きつり笑顔での、
「まさか、あの「魔王」ぉお?」
お伺いに、ドロプウォートは「今更何を」と言わんばかりの表情で、
「当然ですわぁ。他に「どの魔王」が居ると言いますのぉ」
言い放ち、
(マジですかぁぁあぁっぁぁっぁぁあぁ!)
全身の血の気が一気に引くイケメン少年勇者は、
(そぅ言えばぁ、さっき誰かぁもぉ言ってたぁよぉおぉぉぉおぉぉおぉおおぉ!)
心の中でムンクの叫び。
おもむろに、うつむき加減でラミウムの両肩をガシリと掴んだ途端に、
「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理だよラミウムぅっぅうぅ!」
大泣きしながら激しく揺さぶり、
「ノルマに協力するダケって言ってたじゃないかぁあ! そんなの無理に決まって、」
「無理無理ウッサイんだよォ!」
ゴォン!
勇者の頭頂部をグウで殴りつけ、
「痛ったぁ~~~」
頭を抱える、元イケてない少年に、
「魔王と戦わない勇者が何処に居るのさぁね!」
説明を怠った、自身の責任は棚に上げ、
「アンタは何しに(この世界に)呼ばれたと思ってんだぁい!」
向かっ腹たてて、頭ごなしに怒鳴りつけた。
すると頭にタンコブ作ったイケメン少年勇者がスッと立ち上がり、
「…………」
「な、何だぁい?」
「………………」
「言いたい事があるならハッキリお言いでないかぁい!」
不機嫌に仏頂面したラミウムに、キリッとした凛々しい顔を見せつけ、
「ヘタレで何のチカラも無いこの僕にぃ『偉大な魔王様』が倒せる筈が無いでしょ!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「?!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
唖然とする闘技場内の人々。
ラミウムも絶句し、
(勇者が「偉大な魔王様」ってアンタ……)
呆れと、彼を選んだ事に若干の後悔を今更ながら滲ませていると、
『それならば大丈夫ですわ!』
満面の笑顔を以ってドロプウォートが話に割って入り、
「勇者様は召喚の折り、天世様から特殊なチカラを授かっている筈ですわ! その御チカラが貴方にもあれば!」
元イケてない少年も、的外れな凛々しい表情から一転、笑顔満面、
「そう言えばラミウムが「そんな事は」言ってた!」
聞きようによっては、それ以外は何も聞かされていない皮肉ともとれる物言いではあったが、目の前に広がる自らの可能性に喜び、
「それって「こんな僕」でも魔王軍と戦える、ラノベ主人公みたいなチートなチカラがあるって事だよねぇ♪」
「そう言う事ですわぁ! 仰っている言葉の意味は全く分かりませんけどぉ♪」
細かい言い回しなど気にする以上に膨らむ期待に、笑い合う二人はキラキラした眼差しでラミウムを見つめたが、
「…………」
何故か無言で視線をスッと逸らされ、
「「え?」」
漂う不穏な空気。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「………………」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
闘技場内の人々も不穏な空気に当てられ固唾を呑む中、ラミウムは答えを待つ「無数の視線」に耐え兼ね、ポツリと、
「こ……」
「「こ?」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「こ?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
耳をそばだてる元イケてない少年とドロプウォート、そして闘技場内の人々。
しかし可愛い女子の前で、今更ながらも、少しでも「格好よく見せたい」と思うは男子の性であり、本当の事が言えず笑ってお茶を濁していると、
(死んだ方が良かったかも知れないですわねぇ「愚かな政争」に巻き込まれるより……)
平和ボケした貴族社会を生きて来た彼女の実感であったが、理由を誤魔化すのに必死であった「元イケてない少年」は仄暗い呟きに気付かず、
「ん? どぅかしたのぉ?」
呑気顔で首を傾げ、その「苦労知らずの呑気」が妙に癇に障ったドロプウォートは、
(顔は良いですのにぃ)
不機嫌にプイッと横を向き、
「何でもありませんわ!」
素っ気なく言い放ち、
(少々脅して差し上げますわぁ)
一計を案じてイケメン少年勇者に向き直り、
「ラミウム様から「何も」伺っていないようですので、私がご説明申し上げますわ」
勇者召喚儀式が既に形骸化している部分はあえて語らず、
「「勇者百人召喚の儀」とは、天世と中世に敵対する『地世の魔王とその軍勢』を討伐する為に行われる儀式の事ですわ」
「へぇ~まおう・・・」
(マオウ?! きっ、聞き間違いだよねぇ……?)
ヘラヘラしていた笑顔は一瞬にして固まり、
「あのぉ……」
「何ですの」
「マオウって……」
引きつり笑顔での、
「まさか、あの「魔王」ぉお?」
お伺いに、ドロプウォートは「今更何を」と言わんばかりの表情で、
「当然ですわぁ。他に「どの魔王」が居ると言いますのぉ」
言い放ち、
(マジですかぁぁあぁっぁぁっぁぁあぁ!)
全身の血の気が一気に引くイケメン少年勇者は、
(そぅ言えばぁ、さっき誰かぁもぉ言ってたぁよぉおぉぉぉおぉぉおぉおおぉ!)
心の中でムンクの叫び。
おもむろに、うつむき加減でラミウムの両肩をガシリと掴んだ途端に、
「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理だよラミウムぅっぅうぅ!」
大泣きしながら激しく揺さぶり、
「ノルマに協力するダケって言ってたじゃないかぁあ! そんなの無理に決まって、」
「無理無理ウッサイんだよォ!」
ゴォン!
勇者の頭頂部をグウで殴りつけ、
「痛ったぁ~~~」
頭を抱える、元イケてない少年に、
「魔王と戦わない勇者が何処に居るのさぁね!」
説明を怠った、自身の責任は棚に上げ、
「アンタは何しに(この世界に)呼ばれたと思ってんだぁい!」
向かっ腹たてて、頭ごなしに怒鳴りつけた。
すると頭にタンコブ作ったイケメン少年勇者がスッと立ち上がり、
「…………」
「な、何だぁい?」
「………………」
「言いたい事があるならハッキリお言いでないかぁい!」
不機嫌に仏頂面したラミウムに、キリッとした凛々しい顔を見せつけ、
「ヘタレで何のチカラも無いこの僕にぃ『偉大な魔王様』が倒せる筈が無いでしょ!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「?!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
唖然とする闘技場内の人々。
ラミウムも絶句し、
(勇者が「偉大な魔王様」ってアンタ……)
呆れと、彼を選んだ事に若干の後悔を今更ながら滲ませていると、
『それならば大丈夫ですわ!』
満面の笑顔を以ってドロプウォートが話に割って入り、
「勇者様は召喚の折り、天世様から特殊なチカラを授かっている筈ですわ! その御チカラが貴方にもあれば!」
元イケてない少年も、的外れな凛々しい表情から一転、笑顔満面、
「そう言えばラミウムが「そんな事は」言ってた!」
聞きようによっては、それ以外は何も聞かされていない皮肉ともとれる物言いではあったが、目の前に広がる自らの可能性に喜び、
「それって「こんな僕」でも魔王軍と戦える、ラノベ主人公みたいなチートなチカラがあるって事だよねぇ♪」
「そう言う事ですわぁ! 仰っている言葉の意味は全く分かりませんけどぉ♪」
細かい言い回しなど気にする以上に膨らむ期待に、笑い合う二人はキラキラした眼差しでラミウムを見つめたが、
「…………」
何故か無言で視線をスッと逸らされ、
「「え?」」
漂う不穏な空気。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「………………」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
闘技場内の人々も不穏な空気に当てられ固唾を呑む中、ラミウムは答えを待つ「無数の視線」に耐え兼ね、ポツリと、
「こ……」
「「こ?」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「こ?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
耳をそばだてる元イケてない少年とドロプウォート、そして闘技場内の人々。
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