ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
28 / 895

1-28

しおりを挟む
 勇ましく「漢らしい勇者」になってもらいたいと思うラミウムと、ラディッシュと出逢い日々を共にする中で「彼の様な『心優しき勇者』が居ても良いのでは」と、考えるようになったドロプウォート。

 彼女が心変わりした要因の一つは、同じ目線で接してくれるラディッシュが異性として気になり始めていたからに他ならなかったが、超箱入り娘にその事実を受け入れる覚悟はまだ無い。と言うより恋心に自覚無し。
 するとラミウムが辟易顔して、

「ヘタレ勇者が何の役に立つんだぁい?」

 同じ議論を、これまで何度交わして来た事か。
 ドロプウォートも負けじと、

「何度でも言いますが、ラディは「ヘタレ」ではありませんわ! (確かに少々腰抜けな所はありますが……)優し過ぎるだけですわ!」
「ほほぅ~因みに「優し過ぎる」の前に、小声で何て言ったんだぁい?」
「なっ、何でもありませんわ! そ、それに個人の人格を尊重しない考えの押し付けは、単なる強要、強制でしかありませんわ!」

 熱弁を振るう姿に、ラミウムは悪い企み顔してニヤリ。
「な……何ですの……その気色の悪い含み笑みは……」
「アンタさぁ」
「?」
「最近、随分とラディにご執心じゃないかぁい?」
「えっ!?」
 条件反射的にギクリとするドロプウォート。

(わ、ワタクシ、何故に動揺していますのぉ?!)

 心の揺れの意味が理解出来ずに戸惑うさ中、女子二人の板挟み状況にあった困惑顔のラディッシュと期せずして目が合い、
「!」
 ボッと顔を赤に染め、

「てっ、適材適所があると言っているだけですわぁ!」

 照れではなく怒りであると誤魔化し、強調する様に、
「他意などありませんわぁ! そ、それに勇者は他に九九人も居ますのよぉ! 一人くらい「使えない勇者」が居ても何の問題もありませんでぇすわぁ!」
(使えない勇者ぁあぁ?!?)
 ここ最近で一番のショックを受けるラディッシュ。

 しかし照れを誤魔化すのに必死で気付かぬドロプウォートの暴走発言は止まらず、
「く、国を護る四大貴族が一子である「このワタクシ」が、な、何故にこの様な『最弱勇者』に何を思うと言うのでぇすぅ!」
 不愉快を演じてプイッと横を向いたが、逸らした先で、

(またぁやってしまいましたわぁーーーッ!!!)

 心の中で頭を抱えて言い過ぎを激しく猛省。
 とは言え彼女の「悲しき悔悟」など知る由も無いラディッシュは、言われた言葉の全てが思い当たり、その身に突き刺さり、
(そうだよ……そうだよな……僕なんか…………)
 内心では酷く落ち込みつつも、場の空気が今以上に悪くならないよう精一杯の作り笑顔でお茶を濁す様に、

「あっははははぁ。なんかぁ不甲斐無い勇者でゴメンねぇ、二人ともぉ♪」

 笑いを交えて背を向け、黙々と調理を再開し始めた。
「…………」
 小さくなった背中に漂う、もの寂しげな哀愁。
 笑い声からも明らかな「無理」が感じ取れ、
「…………」
「「…………」」
 何とも気マズイ空気。

 流石のラミウムも良心が痛み、
(い、言い過ぎたかねぇ……)
(わ、私も言い過ぎてしまいましたわ……)
 アイコンタクトで反省し合う女子二人。

 何とも言えない沈黙の中に「トントン」とこだまする、無言のラディッシュが黙々と奏でる野草を刻む音に、原因を作った女子二人の居た堪れなさは最大値を迎え、
「あ、アタシぁ疲れたからもぅ寝るよぉ!」
「なっ!?」
 ラミウムがドロプウォートを置き去りにベッド代わりの倒木にゴロ寝。明らかな狸寝入りで現実からの逃避行。

(ちょ! ヒキョウですわぁ、ラミッ!)

 期せずして、落ち込むラディッシュへの対応を丸投げされてしまったドロプウォート。
「…………」
 黙々と作業を続ける背中をチラ見。
 しかし見たからと言って、傷つけた張本人であり、「ボッチ」で名を馳せていた「超箱入り娘」の彼女に、傷心のラディッシュを癒す、気の利いた言葉など浮かぶ筈もなく、

(パパぁ~ママぁ~この様な時ぃ、私はぁ何とぉ声を掛けましたら良いのですのぉ~)

 心の中で天を仰ぎ、嘆いてみても、答えは何も降っては来ない。
 失言に対する謝罪をすれば済む話とも思えるが、それも「四大貴族が一子」としての誇りが、努力の末に首席誓約者候補まで上り詰めた自負心が、両輪で邪魔をして頭を下げる事を拒み出来ない。
 良心とプライドの板挟み。
 良心の呵責に耐えられなくなったドロプウォートは悩んだ挙句、

「しょ、食材が足りないようですからワタクシ、採って参りますですわぁ♪」

 誤魔化しの愛想笑いで、逃避行を選択。
 何の解決にもなっていないが、一先ず現場から逃れようとした。
 すると向けられたままのラディッシュの背中から、
「ありがとうございます……ドロプさん……お願いします……」
 今にも消えてしまいそうな、申し訳なさげな声が。

(ううっ……)

 罪悪感に後ろ髪を引かれて足を止め、
「…………」
(や、やはりココは何か一つ気の利いた発言で以って場を和ませませぇんと……)
 悩んだ末に口から出たのは、

「まっ、まったくですわぁ! ワタクシは貴方の従者ではありませんのよぉ!」

 どう考えても傷口に塩の発言に、ギョッとする絶賛狸寝入り中のラミウム。
 しかし一番驚いていたのは言い放った本人で、慣れた言い回しを使って「ラミウムお得意の皮肉」を真似たつもりがド直球。

(ワタクシは、何て事を口走っていますのぉおぉおっぉぉおっぉおぉ!)

 内心ではムンクの叫びの様な顔して青ざめていたが、口から出てしまった言葉は今さら引っ込めようもなく、不機嫌で、憤慨している事を、ことさら強調する様に、
「本当に仕方ありませんですわぁ! まったくぅ! 本当にぃ!」
 森の奥へとズンズン足を踏み鳴らし分け入り、消えて行った。
 次第に遠ざかる足音に、調理の手を一旦止め、

「…………」

 無言で見送るラディッシュ。
(呆れられても仕方が無い、よな……)
 ため息を吐きつつ、不意に感じた「森の静けさ」から漠然とした不安感に苛まれ、
(二人に見捨てられたら、僕どうなっちゃうんだろぅ……)
 女子二人に見限られ、森の中に一人だけ取り残された光景を想像して思わず身震い。

(と、とにかく今は料理を頑張ろう! マズイって言われたら、僕の存在価値が本当に無くなっちゃう!)

 決意を新たに、調理を再開した。
 一方のドロプウォートは森の奥で、
(何故にぃ、私はぁ、こぅも)
 心の中で大泣きしながら巨木の幹に何度も頭突きをし、

(素直でありませんのよぉ~~~)

 猛省中。
 深まる後悔と反省から、
「私ののぉおぉ……」
 次第に激しく打ち震え、悔恨の情が頂点に達した彼女は頭上に向かって、

『おバカァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!』

 大きく咆哮、嘆き声は青空に「カァカァ」とこだました。
 その頃、コダマを耳にした調理中のラディッシュは、
「んん?」
 手を止め、
「カラスぅ?」
 空を見上げ、
(夕方には、まだ早いよねぇ? って言うか、カラスって何だっけ?)
 不思議そうに周囲を見回した。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

処理中です...