ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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 その卑屈過ぎる態度に、
(…………)
 ドロプウォートは次第に怒りを覚えた。
 そしてついに、

『いい加減になさァい!』

 パストリスの両肩をガシリと掴んで「エンドレスお辞儀」を強制終了させ、睨むように彼女の両目を真っ直ぐ見据え、
「自らを蔑むようなお真似は、お止めなさいですわァ!」
「?!」
「卑屈に「自身を悪者」と決めつけ、無意に頭を下げるモノではありませんわァ! このワタクシが「ドロプと呼んで構わない」と、そう申しておりますのよ!」
 その強い怒りは、数々の理不尽と戦って来た彼女だからこそ重みを以て言えた言葉であり、事あるごとに頭を下げ辛酸を飲み込んで来たパストリスは、

「本当に……?」

 両の瞳に涙を浮かべ、
「本当にイイんでぇすか……ボク……妖人なのに……」
 上目遣いに問うその表情は、言葉で表現出来ない程に愛らしく、
(はぁうわぁあぁぁ~~~)
 ドロプウォートの保護欲は否応なし、度し難いほどに刺激され、かつて興味本位で手に取った「GL小説」を思い出し、

 ※          ※          ※
「あぁ、ドロプお姉様ぁ」
「何ですのぉ、マイ・スウィーティ(※パストリスの意)」
 手を取り、見つめ合う二人。
 ※          ※          ※

 妄想世界からハッと現実世界に戻ると、パストリスの顔を直視する事も出来なくなり、何事が起きているのか分からず戸惑うパストリスが首を傾げると、

(かぁ、可愛すぎですのわぁあぁっぁぁぁ!)

 両手で自身の顔を覆い隠し、未だかつて経験した事の無い「新しい世界への扉」を開きかけたが、
「だっ、大丈夫でぇすか? ド……ドロプさぁん?」
 不安げなパストリスの、勇気を振り絞った「愛称呼び」に、
「!」
 脳裏に纏わる「邪な妄想」を振り払い、毅然と身構え、

「だっ、ダイジョウブなのですわぁ!」

 言ってのけはした。
 しかし、
(で、ですがぁ……)
「?」
 泣き止んだばかりの潤んだ瞳で首を傾げる彼女をチラリと見るなり、思わず口元を緩め、
「良いモノはぁ、良いのですわぁ~~~♪」
「え? えぇ?? 何が「良い」のでぇすか???」
 思いがけず口から出てしまった言葉に、

「なっ、何でもありませんですわぁあぁ!」

 慌てて取り繕うように毅然と言い放った。
 すると空から小雨が降り始め、
「あっ、雨でででぇすわぁ!」
 ここぞとばかりに話をすり替え、

「こっ、このままだと皆、濡れてしまいますですわぁ!」

 話の矛先をラディッシュに誘導する様に、
「ラディ、雨除けになる「屋根」が必要ですわぁ♪」
 そのあからさまな誤魔化しに、
「え? あ、うん、そっ、そぅだねぇ」
 思わず苦笑うラディッシュではあったが、調子の悪いラミウムを濡らさない為にもドロプウォートの言う通り「屋根作り」は急務で、リュックの中を探りながら、
「ドロプさぁ~ん、屋根作りに使えそうな物が、周りに何か落ちていませんかぁ~?」
 しかし返事が返らず、

「ドロプさん?」

 顔を上げると、ドロプウォートがキラキラした笑顔でパストリスの手を握り、
「ワタクシも「パストさん」と呼んで良いですの? 何でしたらワタクシの事は「御姉様」と呼んでいただいても構いませんですわよ♪」
「え、えとぉ……はいぃ。大丈夫でぇす、ドロプさぁん」
 引き気味笑顔で応えるパストリスは、
(ど、どうしよう……打ち解けてくれたのは嬉しいでぇすけど……正直絡み辛い)
 救いの視線をラディッシュに送り、キャッチしたラディッシュは、

(アハハハ……ドロプさんって、どうして、あぁ~極端なんだろぅ?)

 困惑笑いを浮かべながら、
「ドロプさぁん、早く屋根を作らないと「パストさんも」雨に当たっちゃうよぉ?」
 まさに妙案の一言。
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