ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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 しばし後――

 素肌に布切れ一枚羽織った状態で「ずぶ濡れの服」を干して乾かす四人は、竈の火に当たり暖を取っていた。
 雨の心配はドロプウォートのお陰(?)で無くなり、竈はラディッシュが新たに作り直し、火はラディッシュの道具が使い物にならなくなってしまった為、パストリスが所持していた「携行用の火打石」で火を点けた。

「…………」
「「「…………」」」

 不穏な沈黙の中、騒動の張本人でありながら水害の中心地に居た為に、ラミウムと共に熱の良く当たる一等地に座らせてもらったドロプウォート。
 肩身が狭そうに身を縮め、
「もぉ、申し訳ありませんでしたわぁ……」
 平身低頭、謝罪すると、ラミウムの隣に座るパストリスに、
「あのぉ、パストさん」
「?」
「ワタクシの隣(火の近く)に来ませんこと?」
 二人の間の地面をトントン叩いて見せ、

「ッ!」

 怯え切った表情で首をフルフル横に振り、ラミウムの陰に身を隠すパストリス。
「?!」
 拒絶されショックを受けるドロプウォート、ではあったが、
(お……怯えた表情もぉ可愛いですわぁ~~~)
 緩み切った表情が、その心中を晒していた。

 小さく呆れ笑うラミウム。
「ドロプ……アンタ、全然反省してないだろぅさぁね?」
 よもや心情の半分(デレ)が「顔に出ている」などとは思いもせず、

「そ、その様なこと、ありませんでぇすわぁ!」

 即座に否定するも、
「顔に出ちまってるさぁねぇ」
「!」
 指摘に慌てて誤魔化すかと思いきや、

「可愛いモノを「可愛い」と愛でて何が悪いんですのぉ!」

 清々しいほどのドコ吹く風。
(((開き直ったぁ?!)))
 ヤレヤレ顔したラミウムはため息交じり、
「パスト、アンタは、こんなのと一緒で(精神衛生的に)大丈夫なのかぁい?」
「こ、「こんなの」とは、どう言う意味ですのぉ!?」
 心外そうにムクれるドロプウォートであったが、パストリスはうつむき加減で恥ずかしそうに顔を赤らめ、
「だ、大丈夫でぇす……皆さん(ラミウムとラディッシュ)が、居てくれるのでぇ……」
 微笑んだ。

 すると「皆さん」の中に自身も含まれていると、信じて疑わないドロプウォートは満面の笑顔で、
『任せて下さいませぇですわ! 道中、城下、城内でも、私が全身全霊を以てお護り致しますですわ!』
 言い放ち、

(((貴方が元凶なんですがぁ?)))

 苦笑するラミウムたち。
「アタシぁ、むしろ「アンタの方」が心配さぁねぇ」
「私が?」
「いつか衛兵に「捕まるんじゃないか」と思ってねぇ」
「何故に、ですの??」
 そこへラディッシュも、少し気恥ずかしそうに、
「れ、恋愛対象は自由だと思うけど、あまりに一方的で、過剰なのはどうかと……」
「へ???」
 言われている意味が理解出来ず、フリーズするドロプウォート。

(恋愛対象?)

 パストリスを見て、目をぱちくり。
 ラミウムの陰にサッと身を隠して怯えた表情で様子を窺う少女の姿に、やっと意味を理解し、

『ご、ごご、ごごごぉ誤解でぇすぅわぁあぁぁっぁああぁぁぁ!』

 真っ赤な顔して大慌て、訝し気な顔して見つめるラミウムに、
「わ、ワタクシが好きなのは殿方ですしぃ! って、何を言わせますのぉ!」
 懐疑的な顔するラディッシュも、
「だって、どう見たって……ねぇパストさん」
 お伺いを立てると、やはり彼女も同意に感じていたらしく何度もコクコク頷き、

「!?」
(皆からぁその様に見られておりましたのぉおぉぉ!)

 ドロプウォートは恥ずかしさから両手で顔を覆い隠し、
 
『ワタクシィ歳の近しい「同性のお友達」が居りませんでしたのでぇ! どぅ接すれば良いかぁ分からなかったのですのよぉおぉおぉぉ!』
「「「えぇ!?」」」

 大いなる思い違いに気付くラディッシュ達。
 勝手な思い込みに、思わず「プッ」と噴き出し笑う三人であったが、
「わっ、笑わないで下さいですわ! ワタクシにとっては真剣な悩みなのですわぁ!」
 羞恥の憤慨顔に、
「すまんすまん」
 ラミウムたちは苦笑しながら、
「アタシぁてっきり、「パストの操の用心を」とまで思ったんだがねぇ~」
「誤解ですわぁあぁ~」
 耳まで真っ赤に嘆くドロプウォートに、ラディッシュも「あはは」と軽やかに笑い、
「僕が言うのも何だけどぉ、ドロプさんは少し考え過ぎなんじゃないかなぁ」
「ほぇ?」
「ラディの言う通りさぁね。仲良くしたいと思うならぁ、ヘンに身構えたり、小奇麗にまとめようとしないで、アタシ等と接するのと同じに、素の気楽で、それで良いのさぁね」
「…………」
 急に黙り込むドロプウォート。

 謎の沈黙に、
「おん? どぅしたいドロプぅ?? 急に黙り込んでぇ???」
 ラミウムが首を傾げると、

「ラディに……」
「ラディに?」
「僕に?」
「友達付き合いについて助言されたのが、何だか「とっても悔しい」ですわぁ」
「えぇ?! ドロプさん、ソレ酷くなぁい?!!」

 心外そうな顔すると、途端に笑いが起こった。
 そんな中、笑顔のパストリスが意を決したように、ドロプウォートに右手を差し出し、
「でぇもボク、ドロプさんの真意が聞けて良かったでぇす!」
「え?!」
 その手を易々と握って良いモノか、躊躇うドロプウォート。

 散々迷惑をかけていた事に気付かされたが故に。
 するとラディッシュとラミウムが背中を押す様に、
「ドロプさぁん」
「ドロプ」
 その笑顔に、
(ほ、本当に良いのでしょうか……)
 恐る恐る右手を伸ばしたが、逆に待っていたパストリスがその手を握り、
「改めてぇよろしくお願いしますでぇす、ドロプさん♪」
 天使の様な笑顔に、
(!)
 思わず顔を綻ばせ、

『こっ、此方こそ、よろしくですわ♪』

 憂いの無い笑顔を返すドロプウォートであった。
 が、その笑顔の下で、
(やはりぃ可愛すぎですわぁあぁぁぁああぁ~)
 握った手をいつまでも離さず、
「あ、あのぉ……ドロプさぁん……そろそろ手をぉ……」
 困惑笑いに、

「おかまいないくぅ~~~♪」

 有頂天な笑顔を返し、
「「「…………」」」
 一抹の不安を残すパストリス達であった。

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